ここまではスタンドアロン機能を紹介してきたが、PCと接続したときに重宝する機能としては、スキャナでPDFファイルを作成できる点が挙げられる。PM-A970のスキャナドライバは「EPSON Scan」で、単独で起動して原稿やフィルムのスキャンとファイル保存が可能だ。保存形式に「PDF」を指定すると、デフォルトで日本語OCRを実行する設定になっている。EPSON Scanには、全自動モード、ホームモード、プロフェッショナルモードという3つの設定モードがあるが、すべてのモードでPDF保存が可能だ。各モードの違いは、設定項目の種類と数だと思えばよい。
原稿のスキャンが終わるとダイアログが表示され、追加スキャン、スキャンしたページの編集、ファイル保存を選ぶ。追加スキャンを実行すると、複数の異なる原稿を1つのPDFファイルにまとめて保存できる。スキャンしたページの編集は、複数の原稿を読み取ってPDFに出力する前に、ページの順序入れ替え、ページの向き変更、保存ページの取捨選択などを行う機能だ。
こうして作成したPDFファイルは、Adobe ReaderやAdobe Acrobatシリーズなどで、キーワードの全文検索が行える。PDFファイルの表示ページ自体はスキャンした画像だが、文字部分にはOCR結果の透明テキストが付加されているため、全文検索が可能なのだ。例えば、紙の資料を検索可能なPDFファイルでデジタルスクラップしておくと、目的の記事をすぐに見つけられる。家庭だけではなく、ビジネス用途でも活躍してくれるだろう。
マルチフォトカラリオには、PM-A970と並ぶフラッグシップモデルとして「PM-T990」が用意されている。主な機能とスペックはPM-A970と同じだが、さらに100BASE-TX/10BASE-Tの有線LAN、IEEE802.11g/bの無線LAN、「テレプリパ」と名付けられたTV連携印刷機能を標準搭載しているのが特徴だ。ここでは、家庭におけるプリントシーンの将来を先取りするテレプリパにフォーカスしてみよう。
テレプリパは、TVで受信した地上デジタルのデータ放送、インターネット、メモリカード画像といったコンテンツを、TV側の操作からPM-T990でダイレクト印刷できる機能だ。TVとPM-T990は、ネットワーク経由で接続する。現時点では、対応しているTVはパナソニックの「VIERA」シリーズ(一部を除く)のみだが、将来的には多くのTVでこの印刷機能が利用できるようになると思われる。
テレプリパの普及に向けた1つのポイントとなるのが、2007年2月1日からサービスインする「アクトビラ」だ。アクトビラによって、各メーカーが自社のブロードバンド対応TV向けに提供してきたコンテンツが統合される。具体的には、パナソニックの「Tナビ」、So-netの「TVホーム」などがアクトビラに統合され、各社の対応TVから共通してアクセスできるようになる。アクトビラでは、TVからの印刷仕様が策定されているため、PM-T990からのダイレクト印刷にも対応するというわけだ。アクトビラを利用できるTVは今後登場してくる模様だが、松下電器産業のVIERAシリーズはすでに対応している。
今回は、パナソニックのVIERAシリーズ「TH-32LX600」(以下、TH-32LX600)を使って、テレプリパを試してみた。TH-32LX600とPM-T990の接続は、両者が家庭内ネットワークにつながっていれば簡単だ。TH-32LX600の設定メニューでネットワーク内のプリンタを検索すると、PM-T990を自動的に見つけてくれる。しかもTH-32LX600からの操作で、PM-T990のヘッドクリーニングやネットワーク設定も可能だ。
テレプリパで印刷できるかどうかは、コンテンツによって異なる。パナソニックのTV向けポータル「Tナビ」(2007年2月1日以降はアクトビラに移行)のコンテンツは、ほぼ制限なしで印刷可能だ。ニュース、ショッピング、天気予報、占い、地図、路線情報などを、TVで調べてその場で印刷できる。実際にやってみると実に手軽だ。PCを使わなくても情報コンテンツの閲覧と印刷が行えるため、これまでプリンタを使っていなかった層にも普及する可能性を秘めている。
一方、地上デジタルのデータ放送は、印刷可能なコンテンツがまだ少ない状況だ。データ放送の画面に「印刷」アイコンが用意されていれば、テレプリパによる印刷が行える。テレプリパ対応のデータ放送は、エプソンのWebサイトで確認してほしい。データ放送のテレプリパ対応は、権利関係とはじめとして放送局側に依存するところが大きいので、今後の積極的なサポートを期待したいところだ。
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