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オフィスで“程よい”堅牢ノート──デル「Latitude ATG D620」(2/2 ページ)

» 2007年02月08日 04時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]
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オフィスで求められるタフネスノートとは?

 とはいえ、振動性能と耐湿度(ph条件と湿気の高い環境における耐久性能をテストするもので、水をかける「防滴」「防水」のテストではない)、そして高度(およそ4500メートルまでの高度における動作の保障)に関しては筐体にスリットが開いていようと光学ドライブを搭載していようと影響を受けない。また、MILとは関係なく「75センチからの落下試験」にも耐えられることがデルの内部検証で示されているという。

 日本製のタフネスPCとして知られている「TOUGHBOOK」とか「ShieldPRO」のイメージとして定着している「泥まみれ水まみれでも大丈夫」というタフネスさはないものの、「机から落としてしまった」「PCを入れたカバンを落としてしまった」「飲んでいたコーヒー(ただしブラックに限る)をキーボードにかけてしまった」などなどの、「オフィスで起こりそうな“ダイハード”な状況」には十分耐えうるだけの堅牢性を持っているのだ。

 デルによると、ATGシリーズを企画したそもそものきっかけというのが、Latitudeの既存ユーザーにたいするヒヤリングにおいて、ノートPCのユーザーが増加して一般化するにしたがって、その扱いが精密機械というものから道具的に、別な言い方をすれば扱いが“雑に”なっていく傾向がある中で、そういう使い方にも耐えられるノートPCの需要が増えてきたことであったという。

 ATGシリーズは、このように、オフィス需要から生まれた堅牢ノートPCであって、その経緯とコンセプトを考えれば、今回登場したATG D620は、タフワージネスであることを求められる野外作業の現場ではなく、外回りの営業職や少々使い方が雑なオフィスユーザーの扱いでも壊れなければいいのだから、そういうユーザーの要求には十分応えていると評価していいだろう。

サイズ14.1インチ、最大解像度1280×800ドットの液晶ディスプレイの輝度はLatitude D620の2倍となる500カンデラ/平方メートルを実現した

 なお、晴天の屋外で利用することを想定して、ATG D620の液晶ディスプレイの輝度はLatitude D620の2倍となる500ミル(ほぼ500カンデラ/平方メートルに相当)という高輝度を実現している。今回のレビュー作業では天候の条件が折り合わず、晴天下における視認性の検証が行えなかったので断言はできないが、同じ輝度をもつTOUGHBOOK CF-29を夏の晴天下で使ったときに画面の表示がほとんど見えなかったことを参考までに紹介しておきたい。

夜間利用のために赤色LEDを用意してキーボード面を照らすようにしている。赤色を選択したあたりはフィールドワークのPCユーザーに高く評価されるのではないだろうか

 画面周りの仕様では、野外の夜間利用を想定して液晶ディスプレイの上側に赤色LEDを2灯搭載している。夜間でも目に刺激のすくない赤色灯にしたのは評価したいが、やや照度が暗めでキーボードトップが見えにくかったので、輝度を上げると使いやすくなるだろう(ただし、LEDの輝度はユーザーで設定できない)。それから、照射しているポイントがパームレストの部分に寄っているので、これももう少し奥を照射しているとキーボード面が見やすくなったように思える。

 繰り返し述べているように、ATG D620はLatitude D620がベースになっていて、PCとしてのスペックもほぼ同じになっている。Latitude D640と同じようにATG D620も構成をユーザーが選べる。ただし、ATG D620で用意されているCPUはCore2 Duoだけであったり(Latitude D620はCore Duoも選べる)、14.1インチのワイド液晶ディスプレイは最大解像度が1280×800ドットしか選べなかったり(Latitude D620は1440×900ドットが選べる)、バッテリーに軽量の4セルパックがなかったりと、用意されている選択肢は一部異なる。また、筐体サイズも337(幅)×238.2(奥行き)×43.79(厚さ)ミリと、幅と奥行きはベースモデルと同じだが、厚さは約12ミリほど増えている。重さもCD-ROMドライブと6セルバッテリー搭載時で2.8キロと、こちらも約530グラム増加した。

 タフネスノートPCではパフォーマンスは二の次、というのが筆者の考えてあるが(パフォーマンスよりは防塵と防水のためにファンレスで密閉性の高い筐体を望む)、ATG D620に限っていえば「オフィス利用を重視したライトタフネスなノートPC」であるので、パフォーマンスも重要になってくる。ATG D620はCore2 DuoとIntel 945GMの組み合わせを採用して、メモリもDDR2-667MHzに対応するなど最新のハイエンドノートPCに匹敵するスペックを盛り込んでいる。

 今回評価した機材はCPUにCore2 Duo T7400(動作クロック2.16GHz)、メモリがDDR2-667MHzを1GHz、HDDが東芝のMK8009GAH(容量80Gバイト)という構成であったが、ベンチマークテストの結果を同じデルのXPS 1210の最新レビュー記事で測定した結果と比較してみると、PCMark05において、統合チップセットを使うグラフィックスと1.8インチドライブを使うHDDの結果は劣るものの、CPUとメモリのパフォーマンスは上回る。

PCMark05PCMark3167
CPU5514.0
Memory4093.0
Graphics1087.0
HDD2316.0
HDD - XP Startup4.7
Video Encoding381.4
Image Decompression30.5
WMV Video Playback48.8
3DMark05 3DMark Score532
3DMark03 3DMark Score1414
GT149.0
GT46.8
FF XI Official Benchmark 3 Low4299
High2412

 ATG D620は「ATG」というブランドが想像させる「過酷な環境の野外でも使えるタフなノートPC」が求める防水防塵性能は有していないが、しかし、企画段階で想定していた「ビジネス利用における物理的なアクシデントに耐えられるタフなノートPC」としては十分な性能を持っている。堅牢性と価格とサイズというバランスを見るとき、TOUGHBOOKやShieldProとは違う、新しいオフィス向け堅牢ノートPCの市場を生み出したことが、ATG D620の最も大きな特徴といえるのかもしれない。

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