ThinkPadは“黒いBento Box”である(前編)――ThinkPadのデザイン思想:青山祐介のデザインなしでは語れない(1/2 ページ)

» 2007年03月27日 09時30分 公開
[青山祐介,ITmedia]

 レノボ・ジャパンのThinkPadシリーズは、ある程度PCを知っているユーザーであれば、誰でもすぐに“黒い四角い箱”を連想することができるほどのアイデンティティを持つ。日本IBMの時代から頑なに守られるデザインポリシーの中にも、新しいものへの挑戦が込められている。

大和事業所のデザイナーはThinkPad一筋のプロフェッショナル集団

 2004年12月、IBMはThinkPadを含むPC部門をレノボグループに売却し、レノボの日本法人であるレノボ・ジャパンが誕生した。レノボPCは、IBM時代からモバイルPCの開発を行っていた大和事業所と、レノボPC事業の拠点である米ノースカロライナ州にあるラーレイ、そして中国の北京にあるデザインチームがデザインワークを行っている。このうち大和とラーレイのグループは、IBMからスタッフなど組織をそっくり引き継ぎ、ここにレノボ側の北京のグループを加える形で、これら3カ所のグループが共同してデザインを行うという組織だ。

 1992年にスタートしたThinkPadシリーズに関しては、前身の「PS/55note」の時代から大和のデザイングループがそのほとんどを担当し、現在では完全に大和のグループがデザインしている。また、最近では「Lenovo 3000」に代表されるレノボブランドのノートPCのデザインも行っている。そんな日本におけるThinkPadとレノボ・ノートPCのデザインワークをまとめる、レノボ・ジャパン 研究・開発 デザイン部長の高橋知之氏に、IBM時代から脈々と受け継がれるThinkPadデザインのコンセプトについて伺った。

いわずとしれたThinkPadシリーズ(写真=左/ThinkPad T60)とLenovo 3000シリーズ(写真=右/Lenovo 3000 V100 Notebook)。どちらのモデルもデザインは大和事業所で行われている

リチャード・サッパー氏とのコラボレーションによって生み出された“黒い四角い箱”

レノボ・ジャパン 研究・開発 デザインの高橋知之部長。最初に手がけたThinkPadはPS/55 T22sxとのこと

高橋 ThinkPadのデザインは、黒くてスクエアでビジネスツールというものを前面に打ち出しています。形を見ればすぐにThinkPadとわかるようなデザインになっていると思います。基本的な考えかたとしては“シンプルな形”という部分が大きいのですが、もっと基本的なところでは“形とファンクションをいかに正しく表現するか”ということに重きを置き、合理的にデザインされているものであればずっと美しく、長く使っていただける、という考えかたでデザインを行っています。

 ThinkPadシリーズのデザインを語るうえで忘れてはならないのが、リチャード・サッパー(Richard Sapper)氏の存在だろう。サッパー氏はイタリア・アレッシ社のホイッスルケトル「BOLLITORE」や、イタリア・アルテミデ社のデスクスタンド「TIZIO」などを手がけた著名な工業デザイナーだ。1980年にIBMのデザインコンサルタントとなり、現在ではレノボのデザインコンサルタントでもある。特に1992年に初めてThinkPadとして登場した「ThinkPad 700C」(日本国内ではPS/55note C52 486SLC)は、IBM側のデザイングループとサッパー氏のコラボレートによるものだ。

 サッパー氏は全世界の事業を統括するIBMのデザインコンサルタントなので、デザイングループが藤沢事業所にいた時代から、サッパー氏自ら来日してデザインのレビューを定期的に行ってきている。また、ノートPCの企画を始めるときに、日本のデザイングループと一緒にデザインを決めていったという。その後、一貫してThinkPadのデザインワークは大和のデザイングループが行っているが、今もサッパー氏に定期的にデザインを見せてサジェスチョンを受けているという。

高橋 インターネットがないころは、海外に文章を送る方法はあったのですが、やはりデザイナーとのやり取りは文章だけではなかなかうまく行きません。当時は画像を送るいい方法があまりなくて、ソニーの静止画転送システムでやり取りしましたね。デザインモデルの写真を見せると手書きでコメントが追加された写真が戻ってきて、そこには“OK”とか“ここはダメだ”というようなことが書いてあり、それに一喜一憂していました。

 「TIZIO」に代表されるリチャード・サッパー氏の生み出すデザインは、無駄がなく合理的で黒を基調にしたものが多い。このアイデンティティは、しっかりThinkPadのデザインにも注がれていることがわかる。徹底的にムダを排した結果、“黒い四角い箱”というアイデンティティをThinkPadに持たせることになったのだ。

高橋 とにかく“閉じたら四角くする”というのは、リチャードからの影響が大きいかもしれません。いずれにしろ彼の発言は基本的に正しいと考えておりますので、彼の意見は尊重しています。我々はサッパーを尊敬していますし、彼のように優れたデザイナーと一緒にデザインワークをできるのは大変ありがたいことだと考えています。

リチャード・サッパー氏(写真=左)とTIZIOランプ(写真=右)
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