連載
» 2006年12月19日 08時00分 公開

青山祐介のデザインなしでは語れない:「これでいい」より、「これがいい」――NECデザインの意気込み (1/2)

語られるようでいて実は語られていない、PC・周辺機器のデザインにフォーカスした本連載。PCメーカー編の第3回はNECの「LaVie C/Lシリーズ」だ。

[青山祐介,ITmedia]

 前回は、NECデザインの概要と液晶一体型PCの「VALUESTAR Sシリーズ」のデザインを見てきたが、今回は、秋モデルでボディを一新したノートPC「LaVie Cシリーズ」と、「LaVie L アドバンストタイプシリーズ」をデザインしたNECデザインの辻圭介氏と、エキスパートデザイナーの山口修司氏に話をうかがった。

 このLaVieには、NECデザインがかかげる「Neutral(ニュートラル)」「Essential(エッセンシャル)」「Creative(クリエイティブ)」というデザインポリシーがどのように反映されているのであろうか。

フラッグシップ機とバリューモデルでデザインを共通化

NECデザイン プロダクトデザイン 1 デザイナー 辻圭介氏

 NECの秋冬モデルのトピックは、久しぶりにフラッグシップモデル「LaVie Cシリーズ」が約1年半ぶりに復活したことだ。CPUに最新のCore 2 Duoを採用し、HDDもRAID 0構成で出荷されるなど、最上位機らしいスペックで固めているのも見どころである。

 もっとも、ご存じのかたが多いように、この新LaVie Cシリーズと、ノートPCでボリュームゾーンを担うLaVie Lシリーズの上位モデル「アドバンストタイプ」はボディデザインが共通化されている。このデザインのコンセプトについてデザインを担当した辻氏は、「“進化”ということで、今までと違った感じを強調したかった」と語る。

 というのも、今回のモデルはすでに開発時点から、上位機種であるCシリーズも同じデザインでカバーするというのが前提であった。そのため、これまでのようなオーソドックスなデザインではCシリーズまでをカバーしきれない、ということが辻氏の頭にあったという。逆に言うと、下位モデルとなるLaVie L ベーシックタイプとの距離を意識して、これまでと違うイメージを出す必要があったのだ。それが、今回のようなフォルムであったり、ユーザーに正対して見えるLEDランプの配置であったり、パームレストに“革シボ”の表現を使ってみたりと、辻氏いわく「ダイナミックにユーザーが一目で見てわかる新しさ」を表現したという。

 「店頭でNECのパソコンが同じように見えるのではなくて、NECの売り場の中でも、きちんと明確にバリエーションとして成り立って見えることを意識してデザインしました」(辻氏)。

NECのノートPCで中核を占めるLaVie L アドバンストタイプ(写真=左)と、ついに復活を果たしたフラッグシップモデルLaVie C(写真=右)

紫は周りの色を引き立てる“ポイズンカラー”だった

直販のNEC Directで販売されているLaVie C(LaVie G タイプC)。全5色のカラーが用意されている

 新モデルのLaVie L アドバンストタイプには、店頭販売向けのシャインシルバーのほかに、同社の直販サイトNEC Direct専用モデルとしてベルベットパープル、スカイブルー、ビターブラウンという4色のカラーバリエーションが用意される。一方のLaVie Cシリーズも、店頭向けのパールホワイトのほか、ベルベットパープル、スカイブルー、ビターブラウン、シャインシルバーと計5色がラインアップされている。

 PCのカラーバリエーションはそれほど目新しいものではないが、NECがここまで多色展開をするのは珍しく、それだけこのモデルに対する力の入れ具合が分かろうというものだ。

 「開発当初はオレンジといったかなりどぎつい色を使っていて、まったく女性を意識していないかのようなデザインをしていました。なぜかというと、カラーバリエーションをそろえるのが前提だったため、“変化”という点はある程度形で見せておいて、ユーザー層を幅広くとるところは“色の差”、色の見せ方でカバーしようと考えていました。

 そのため、最初の段階ではこちらでやりたいことが最も伝わりやすい形として、かなりビビットな色で提案したのです。ちょっと攻撃的といいますか、ピンクやベージュ、シャンパンゴールド、オレンジなんかもありました。このような色のサンプルを山のように検討して、最終的に5色を用意しました」(辻氏)。

 今回の5色の中でニュートラルなのは、店頭販売用のシャインシルバー(LaVie L アドバンストタイプ)と、女性向けや高級感を持たせたところでつやありのパールホワイト(LaVie C)だ。もう少し落ち着いた色が欲しいというユーザー向けにはブラウン系を用意してある。従来だと、このダーク系は黒になることが多いのだが、辻氏はアースカラー的な要素としてブラウンを提案したという。これらに対して明るい有彩色でスカイブルーを用意して、幅広いユーザーに向けたバリエーションを展開している。

 さらに今回の5色でまさに“異色”なのが紫(ベルベットパープル)だ。直販のWebサイトではなかなか本物の色を見せることができないので、微妙な彩度や明度の違いを見せるよりも、これまで見たことないような色を加えることで逆にそのほかの色が映えるという効果があり、いちばん最初に注目される色にこの紫を選んだという。

 「クルマのカラーバリエーションには、そのような色が使われることが多いようです。10色くらいのカラーバリエーションにどぎつい色が1色か2色入っていて、そこでイメージや変化といった強く打ち出したいものを見せておいて、後は無難な洗練された色を周りに配置する。“イメージカラー”“ポイズンカラー”という毒っぽい色のような、今までと違う色を入れているのが、最近のカラーデザインの流れになっています。今回のLaVieはそういうやり方に習っています」(辻氏)。

開発途中のイメージスケッチ(写真=左)。右の写真は製品版に採用された5色

カラーリングの決定には多くの時間を割いた

――最初のデザインではビビットなオレンジを取り入れていますが、最終的に無難な色に落ち着くのはデザイナーとして納得していますか?

開発途中のイラスト。オレンジの色彩が目を引く

 いろいろな点を踏まえて考えていくと、無難な色であってもこちらのほうがいいということは理解しています。ただ、最初に社内で自分の思っていることを伝えたいときに、今回のようなオレンジという強い色を使うことがあるのです。形もそうなんですが、色としても勢いのあるものを出したいんだ、という意図をより明確に伝えたいときに、このような強い色や形で提案しますね。

山口 カラーバリエーションがあるということは、デザイナーには機会が与えられたということです。メインになるようなカラーをイメージしながら、ほかのイメージリーダー的なカラーを考えられるのはチャンスだと思いますね。ただ、実機に採用できる色というのにはものすごく制約があって、実際に山のように出していったカラーサンプルを実機に反映するまでの苦労のほうがむしろ多いと思いますよ。

 今回のモデルは、一見すると曲線を多く用いた造形に苦労したような印象を受けそうだが、実際にいちばん時間をとられたのは色だったという。同じボディで上下に幅広くモデルを配置すると、どうしても限られた予算でやるしかないため、実際に製品にできる色の中でベストな色を探す作業が大変だという。膨大なカラーサンプルの中からいい色を探し出せたと思って、現場に持っていって塗ってみると不具合が出てくることがほとんど。そこからどう改良していくか、という作業を繰り返し、それだけのために出張に行くことが多かった、と辻氏は語る。

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