「いかにも中国! 」なIT教育事情山谷剛史のアジアン・アイティー(1/2 ページ)

» 2007年05月30日 11時45分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

 中国におけるIT教育事情は日本とだいぶ異なる。中国でも大都市ならIT系専門学校が必ず何校か存在するが、大連などの「IT開発最前線」で働く人材を養成するだけではない。IT系の教育機関にはいかにも中国らしい事情から設立される学校も存在するのだ。

中国の若者は高給取りのプログラマーを目指す

 中国で発行されているIT系新聞(紙媒体)でソフトウェア関連の記事が掲載されているページや、ソフトウェア系雑誌を見ると、プログラマー養成や資格取得を目的としたIT系各種学校の広告がびっしりと並ぶ。広告では「その学校で何が学べるか」「どんな資格取得コースがあるか」がリストアップされていたり、「これだけの資格を取得すれば月収と年収はいくらになる」と説明されていたり、外資系IT企業で働く“成功者”の月収を紹介していたりする。ある広告では、成功者の一例として月収10万円以上の仕事に就いた学生を紹介している。月収10万円といえば北京や上海の大都市圏でみても所得平均の2倍以上、地方都市なら平均の5倍に達する高給取りだ。筆者自身がまわりの中国人に聞いたところによると、PC好きにとってそれは憧れの職業なのだそうだ。

IT系メディアに掲載されている入学生募集の広告。卒業した“成功者”たちの月収が紹介されている
IT系学校となると日本でもすぐ思いつくのが「電脳培訓」のIT専門学校や「遊戯培訓」のクリエイター養成学校だろう

 憧れの職業へと導くJavaやC++を扱うプログラマーや、Oracleなどのデータベース、Unix、Linuxといったシステムのエンジニア養成コースを擁す専門学校は、その職業を目指す学生のあこがれである外資系企業の中国支社が集中する北京や上海、大連などに数多く存在する。そういった学校では、マイクロソフトやアドビ製品に関連する資格取得のためのコースも用意していることが多い。

 このような「国際都市」以外の大都市では地元の中国系IT企業に就職するための専門学校が存在する(もちろん、前述の国際都市にも存在するが)。そこではPhotoshopをはじめとしたアドビ製品や動画編集ソフトの講座、それにWebデザイナー、Flashデザイナーの養成コースが中心となっている。以前から企業によるWebページ開設が増加する傾向にあったが、2007年4月から“cn”ドメインを初年度1元で使用できるキャンペーンをCNNIC(China Internet Network Information Center)主導で行っていることもあって、今後しばらくは中小企業によるWebページ立ち上げのブームが続くものと見込まれている。コンテンツデザイナーの給料はさほど高くないとはいえ、手に職が得られるためかコンスタントに学生が入学するため、そういったIT系専門学校が廃業したという話は聞かない。

 ゲームクリエイターを養成する専門学校も少ないながらも存在する。オリジナルのオンラインゲームが国内で人気を集めているゲーム産業が拡大しつつある状況にあってゲームクリエイターの数はまだまだ少ない。しかし、ゲームベンダーが中国全土にあるわけではないので、ゲームクリエイター養成の専門学校も限られているのが現状だ。

 ゲームクリエイター養成学校について、百度で「遊戯 培訓」(日本語入力でOK)をキーワードに検索すると、いくつかのゲームクリエイター養成学校がリストアップされる。そこで各学校のWebページを見てみると、「学生作品」などと書かれたページで、学生が製作したゲーム向けのイラストや3DCGなどが公開されている。中国におけるゲーム開発スキルの一端を知ることができるだろう。ちなみに、「電脳 培訓」をキーワードに検索すれば、さまざまなIT系専門学校のページへのリンクが表示される。

 ところでマイクロソフトやアドビの製品に限らず、動画編集ソフトや3Dモデリングソフトなどなど、専門学校では価格が高くて個人では入手が不可能に近いソフトを実際に使って学べるが、この連載の常として、これら専門学校がソフトを正規に購入しているか考察しなければならない。中国系ニュースWebサイトや中国人ブログでは、有名な学校で海賊版が使われていると報告されているし、筆者自身の経験でも校内や職員室などに海賊版パッケージがさりげなく置かれているのを確認している。もちろん、これをもってして「すべてがそうである」とはいえない。WTO(世界貿易機関)では米国が中心となって海賊版問題を提起しようとしているが、この動きを受けて中国が本格的に海賊版を粛清するならば、海賊版を利用している専門学校もその対象となるだろう。

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