米シーゲイトCEO記者会見──「ユーザーはSSDよりHDDを“絶対”選ぶ」

» 2007年06月29日 15時14分 公開
[長浜和也,ITmedia]
ビル・ワトキンス米シーゲイトCEO

 ワトキンス氏は、「今まではストレージビジネスの黄金期であった」とHDD業界の動向を表現。 その原動力がコンシューマー向け製品と家電製品の台頭であったと述べた。これまでの10年間がオフィスのデジタル化の時代であったのに対してこれからの10年間は家庭におけるデジタル化の時代になると語るワトキンス氏は、 コンテンツを家庭の中だけでなく、ハンドヘルドデバイスや車、インターネットで自由に利用したいと思うユーザーの需要が「家庭におけるデジタル化」を推進すると説明し、こうした動きが今後10年間においてストレージ業界に大きなチャンスを生み出すだろうと予測している。

 「ビデオや音楽のデータをダウンロードして利用するという形態において、配信する企業側はコンテンツデータの保存とバックアップのために2系統のストレージデバイスが必要となり、配信を受けるユーザー側もダウンロードするPCや、それを共有して利用するそれぞれのデバイスごと、そしてインターネットを介して共有するユーザーのそれぞれに保存するためのストレージデバイスが必要になる。1つのコンテンツデータのために、多数のストレージが使われることになる」(ワトキンス氏)

 ワトキンス氏は、ストレージ業界全体でこれから3年間のあいだに出荷台数ベースで対前年比10%の成長率を確保できるだろうという見通しを述べ、このような成長率を維持できるのはストレージ業界以外にないと、この業界がこれからも堅調に成長すると自信を示した(ただし、価格ベースの成長については“製品単価の推移がどのようになるか私にも予想がつかない”と明言を避けている)。

 ノートPCで採用が始まっているSSDについてワトキンス氏は、SSDのアドバンテージとして語られている「耐衝撃性」「起動時間が短い」「省電力」は「SSDが壊れなくてもノートPCが壊れてしまう。起動時間を速くできるのはフラッシュメモリを組み込んだHDDでも同じ効果が期待できる。現在のWinodws VistaではハイブリッドHDDのメリットは有効とならないが、次のバージョンでは使えるようになるだろう。SSDに移行することでバッテリー駆動時間は18分程度伸びるかもしれないが、そのために価格は1600ドルも高くなってしまう」と理由を上げて「現実的な意味を持たない」と評価。

 加えて「フラッシュメモリにデータを繰り返し書き込むと10万回程度で使えなくなってしまう」とSSDのデメリットも指摘。「搭載するフラッシュメモリへの書き込みを平坦化すると処理速度が遅くなる。コスト削減のためプロセスルールを微細化すると書き込み回数が減ってしまう」といった現在のSSDが抱えている問題点を挙げている。

 ワトキンス氏は、SSDが書き込み回数の問題を解決したという条件を満たした上で、2010年にはHDDとSSDは容量あたりの価格が最も重要な比較になるとみているが、それでも「50ドルで250GバイトのHDDを選ぶユーザーが同じ50ドルで50GバイトのSSDを選ぶだろうか」とコメントしている一方で、HDDにフラッシュメモリを組み込んだハイブリットタイプのHDDについて「HDDメーカーはソリッドステートストレージをもっと(HDDに) 取り組ん でいくべきだ。それが、HDDを成功させるカギになる」という見解を示した。

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