Analyst DayでチェックするAMDの最新ロードマップ元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)

» 2007年08月07日 15時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]
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GriffinとPumaが立ち上がるノートPCプラットフォーム

 ノートPC向けのプラットフォームロードマップで、大きい変化となるのが2008年の「Puma」(開発コード名)だ。PumaはAMDが初めてゼロから組み上げるモバイル向けプラットフォームで、CPUもデスクトップ向けとは別の「Griffin」(開発コード名)が用意される。Griffinの製造プロセスについては明らかにされていないが、2008年の登場で“45ナノ”と書かれていないことから考えて、65ナノプロセスである可能性がある。同じデュアルコアCPUでも、デスクトップPC向けのPhenom X2と異なり共有キャッシュを持たない。

 プラットフォームとして見たPumaの特徴は、「PowerXPress」と「HyperFlash」の採用になる。PowerXPressは、バッテリー駆動とAC駆動でチップセット内蔵グラフィックスコアと外付けグラフィックスチップを切り替える仕組みだ。同様のアイデアはNVIDIAのGPUを実装したソニーのVAIO type Sで採用されたことがある。HyperFlashは、NANDフラッシュメモリをプラットフォームに統合し、キャッシュとして利用するもので、これもIntel Turbo Memory(Robson Technology)と同じのものだ。

 2009年に登場する「Egale」(開発コード名)プラットフォームは、CPUに「Falcon」(開発コード名)を採用する。Falconは、CPUにGPUを統合するFusionファミリーのCPUだ。デュアルコアとクアッドコアがあるとされていることから考えて、Falcon以外の開発コード名も用意されている可能性がある。CPUコアはBulldozerとされており、45ナノプロセスによる第2世代のコアを採用するものと見られる。Radeon HD 2000シリーズのグラフィックスコアを内蔵してPCI Expressポートも内蔵する。これもPowerXPressに対応すると思われる。

 また、AMDはインテルの「vPro」に相当する企業クライアント向けのプラットフォームも用意する。これが、管理、運用、セキュリティ技術の総称である「Hardcastle」を付与したプラットフォームで、デスクトップPC向けとして「Perseus」という開発コード名が与えられている。ノートPCは、Pumaのままであることから考えると、こちらでは、デスクトップPCで用意される機能の1部が省略されるのかもしれない。

ノートPCプラットフォームのロードマップ
Fusionの第1弾として登場するのは2009年の「Egale」プラットフォームに採用される「Falcon」になる予定だ
AMDの企業向けプラットフォームのロードマップ。本格的な機能を実装したものは2007年末から2008年にかけて登場する「Hardcastle」採用からになる

High-K/メタルゲートの導入に慎重なAMD

インテルが45ナノプロセスコアで導入するHigh-k絶縁膜/メタルゲートをAMDは第2世代45ナノ、もしくは32ナノプロセスコアで導入するとしている

 以上が、AMDが発表したプラットフォームロードマップの概要だが、このほか製造技術に関しても新しい情報が公開された。AMDは現在、45ナノプロセスのパイロットラインをFab 36内に建設し、テスト生産を始めているという。ただし、Intelが45ナノプロセスの初期段階から特性の優れたHigh-k絶縁膜/メタルゲートに移行するのに対し、AMDは45ナノプロセスの途中(第2世代)、あるいはより確実を期すために32ナノプロセスから採用するようだ。45ナノプロセスの発表時にIntelが示した自信は、しっかりとした根拠があったということになる。

 第1世代の45ナノプロセスでは液浸露光技術が採用されるものの、トランジスタ構成は基本的に65ナノプロセスを継承したSOIプロセスが採用される。どうやらAMDもHigh-k/メタルゲートを導入した時点で、高性能だがコストが高いSOIプロセスから、安価なバルクプロセスへ戻すらしい。そしてこれ以降、現在TSMCのバルクプロセスで量産されているチップセットやGPU製品の、少なくとも1部を自社生産に切り替えることを検討しているとも聞いている。

 この2年後、2010年にAMDも32ナノプロセスへの移行を予定しており、ここではHigh-k/メタルゲートと液浸露光といった製造技術を導入するほか、IBMが開発した絶縁膜として真空を利用する「Vacuum Air-Gap」技術も採用するとしている。Intelも2010年に32ナノプロセスへの移行を予定しているほか、トランジスタ構造の3次元化(Tri-Gateトランジスタ)も検討している。

 2年単位で製造プロセスを更新していくには、膨大な開発資金を必要とする。ひとつ間違えば、会社が吹っ飛びかねない額だ。それでも製造プロセスを2年ごとに更新するというのは、競争に打ち勝つためには必要なのだろうが、まるで一種のチキンレースを見ているようだ。

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