良い技術は、かならず普及する――ムーリー・エデン副社長に聞く:元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2006年10月23日 05時30分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

 WPC TOKYO 2006の基調講演にあわせて、インテルのムーリー・エデン(Mooly Eden)副社長が来日した。Mobility Groupのモバイル・プラットフォーム事業部長という肩書きを持つエデン副社長は、Pentium Mでなじみ深いBanias(開発コード名)の開発責任者をつとめたという経歴を持つ。

CPUの開発と製造プロセスの更新は“チックタック”で

“Tick-Tock Model”

――右の図は、最近エデン副社長が用いられているCPUの開発モデルを示したものです。まず、これが意味するところを教えてください。

エデン副社長 これはマイクロプロセッサの開発と製造プロセスの更新を互い違いに進めていくことを意味しています。こなれた既存の製造プロセスで新しいマイクロアーキテクチャを採用したら、次は新しい製造プロセスに既存のマイクロアーキテクチャを落とし込んでいき、その次はマイクロアーキテクチャの更新、という具合に、交互に新しくしていくモデルを、メトロノームの針が左右に振れる様子にならって、「チックタック」と呼んでいるわけです。

 両方を同時に更新しないことで、リスクを避ける意味があります。新しい45ナノメートルプロセスの最初のCPUとなるPenryn(開発コード名)は、現行のCore 2 Duoの縮小版で、マイクロアーキテクチャの変更点は多くありません。45ナノメートルプロセスの第2世代となるNehalem(開発コード名)で、新しいマイクロアーキテクチャを採用するつもりです。

――Penrynというのは、そもそも何を指しているのでしょう。これは具体的な製品の開発コード名、たとえばモバイル向けの次世代CPUのコード名といった具合に理解してよいのでしょうか。

エデン副社長 従来からインテルは開発コード名には地名を使っています。これには、誰かが登録してしまった商標を避ける意味があります。Penrynが何を指すのか、ということですが、45ナノメートルプロセスで登場する次世代CPUの総称を指すコード名だと思っていてください。

――32ナノメートルプロセスによる最初のCPUであるWestmere(開発コード名)は、以前はNehalem-Cと呼ばれていたと記憶しています。これはどういうことなのでしょうか。

エデン副社長 技術者というのは、あまり名前にはこだわりません。Nehalem-Cというのは、Nehalem Compaction(Nehalem 縮小版)の略でした。それは間違いではありませんが、名前として適切ではないので、Westmereになった、というわけです。

UMPC向けのCPUはあくまで非ノートPC用だ

インテル副社長兼モバイル・プラットフォーム事業部長のムーリー・エデン氏

――Intel Coreマイクロアーキテクチャは、デスクトップ向けとサーバ向け、それぞれの分野に大幅な消費電力の削減をもたらしました。しかし、肝心なモバイル向けのCPUとしては、MeromのTDPはYonahより上昇しています。仮にCPU以外の部分で省電力を実現し、バッテリー駆動時間を維持できたとしても、大型のヒートシンクやファンによりノートPCが大型化していくのではないかと心配されるのですが。

エデン副社長 その心配はありません。なぜなら、私もそれを懸念していますから(笑)。

 それはともかくとして、私は常にエンジニアに対し、ノートPCを今より大きくしないこと、厚くしないことを繰り返し言っています。近年のモバイルPC向けCPUで最もTDPが低かったのはDothanですが、DothanとMeromのTDPをそのまま比べるのはフェアではありません。トランジスタの数、性能が全く違うからです。重要なのは、性能と消費電力のバランスに常に気をつけることです。メディアのみなさんは、省電力性の高いCPUをリリースした時は性能を懸念され、性能の高いCPUをリリースすると省電力性に対する懸念を表明されることが多いように思います(笑)。

――とはいえ、現時点でMeromは大型のノートPCにしか採用されていないのではないでしょうか。

エデン副社長 サブノートPC向けには、低電圧版、あるいは超低電圧版のCPUが用いられるわけですが、通常、これらは通常電圧版のCPUから遅れて登場します。現時点でいつとは言えませんが、サブノートPCに適したCPUもリリースされる見込みです。

――超低電圧版のCPUがある一方で、インテルはUltra-Mobile PC(UMPC)向けにPC向けCPUの1/10程度の消費電力のCPUをリリースする意向を示しています。サブノートPCにはこちらを使ってほしい、というメッセージではないのですね。

エデン副社長 UMPC向けの低消費電力CPUとPC向けのCPUでは、求められる性能が違います。UMPC向けのCPUは、UMPCのほかハイエンドのスマートフォンなど、もっとコンシューマー寄りの市場をターゲットにした製品です。

次世代CentrinoでRobsonテクノロジやWiMAXはオプション

――インテルは2007年に次のプラットフォームとなるSanta Rosaをリリースする計画を明らかにしています。このSanta Rosaは、Digital Home事業部もコンシューマー向けデスクトップPCのプラットフォームとして採用することを表明ずみです。このようにデスクトップに使われることも、CPUやプラットフォームが省電力より高性能に引っ張られていくのではないかと懸念される一因になっているのですが。

エデン副社長 Digital Homeのプラットフォームに対して、TDPが65ワットのConroeは最適な性能と消費電力のバランスを提供します。2007年のプラットフォームについても、同等のTDPを前提にした新しいもの(筆者注:Salt Creekプラットフォーム)が提供されるでしょう。これは素晴らしいものになるはずです。デスクトップPC向けのSanta Rosaは、OEMやユーザーがもっと薄い、あるいはもっと小型のPCを求めた場合のオプションとして最適なものになるでしょう。したがって、Santa RosaやモバイルPC向けのCPUの消費電力が上がっては、Digital Home事業部としても、メインストリームプラットフォームを補完するという目的が果たせなくなってしまいます。

――次世代CentrinoとなるこのSanta Rosaですが、NANDフラッシュを採用したキャッシュ技術であるRobsonテクノロジ、あるいはWiMAXなど、従来のCentrinoとは異なる要素が入ってくる見込みです。次世代Centrinoでは、これらが必須となるのでしょうか。

エデン副社長 将来的には分かりませんが、Santa RosaにおいてはRobsonやWiMAXはあくまでもオプションという位置づけになります。Centrinoのロゴに必須なのは、CPU(Merom)、チップセット(Crestline/965GM)、無線LANモジュール(Kedron)の3つです。

次世代プラットフォームのSanta Rosa
Santra Rosaを構成するCrestlineチップセット
HDDキャッシュのRobsonテクノロジ
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