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» 2007年08月27日 11時11分 公開

「目指すは世界!」──“中国の巨人”Lenovoの歩みとこれから

中国市場で圧倒的なトップシェアを誇るPCメーカー「Lenovo」。意外と知られていないその歴史と、世界市場進出へ向けての取り組みを紹介する。

[富永ジュン,ITmedia]

設立母体は国家研究機関

 前回はLenovo本社の模様をお伝えしたが、今回はLenovoの歴史と現状をリポートする。

 中国を代表するIT企業ながら、Lenovoの歴史は意外と浅く、そのルーツは23年前の1984年にさかのぼる。この年にLenovoの前身となるNew Technology Developer Inc.(Legend Groupの前身)が中国科学院計算機研究所から派遣された11名のコンピューター・サイエンス専門家と20万人民元(約2万5000米ドル)の資本金により設立された。

 New Technology Developer Inc.は、中国国内でIBM製品・ASTリサーチ製品の販売を手がけるかたわら独自製品の開発を行い、1987年にDOS上で中国語を扱うための拡張カード「Legend Chinese-character card」を発売する。このLegend Chinese-character cardは大ヒット商品となり、1988年に香港においてLegend Hong Kongが設立され、さらにその翌年には北京にBeijing Legend Computer Group Co.が設立される運びとなった。なお、この時点での社員数は100名に満たなかったという。

 Lenovoの成長はめざましく、「Legend 1+1」と呼ばれる独自ブランドのコンシューマー向けデスクトップPCを市場に投入した1992年から4年後の1996年には、中国のマーケットシェア第1位を獲得。1998年には総生産台数100万台を突破して中国国内でのマーケットシェアを14%以上にまで伸ばし、2007年第一四半期には33.6%と第2位のFounderの16.9%を大きく引き離して不動のマーケットシェア1位の座を維持している。

2007年第2四半期のワールドワイドでのPC出荷台数統計(米IDC調べ)。Lenovoは第3位に位置する(写真=左)。一方、中国国内では圧倒的なシェアを獲得している(写真=右)

世界市場でLenovoブランドの浸透を図る

Lenovo会長の楊元慶(Yang Yuanquing)氏

 中国においては、PCメーカーとして短期間のうちに盤石の地位を築き上げたLenovoだが、次はいったいどこに向かおうとしているのだろうか。2004年3月に社名の英語表記を「Legend」から「Lenovo」(Legendの「Le」と、ラテン語で「新しい」を意味する「novo」を組み合わせた造語)に変更し、同年に国際オリンピック委員会のワールドワイド・パートナーとなった。また、2005年のIBM PC部門買収と本社の米ノースキャロライナ州移転に引き続き、つい先日も欧州の中堅PCメーカーであるPackard Bellの買収を表明するなど、そのターゲットを本格的に全世界に広げたことがうかがえる。

 Lenovo会長の楊元慶(Yang Yuanquing)氏は、「2007年第一四半期の売上高は前年同期比で13%増の39億ドルに達するなどIBM PC部門の統合フェーズは成功のうちに完了し、これからは、いち中国企業からグローバル企業への発展を目標に積極的に世界市場へ攻勢をかける」としている。オリンピックのパートナー・プログラムへの参加もその一環で、世界市場におけるLenovoブランドの知名度向上とブランド力の強化が目的だ。また、IBMのPC部門から引き継いだ法人市場のみならず、コンシューマー市場でのシェア獲得を目指したいという意向が繰り返し強調された。

 楊氏によると、グローバル化への取り組みとしてIBMから引き継いだ先進的、かつ技術力に優れるというThinkPadブランドのイメージを、世界市場におけるLenovoブランドのブランド力形成に利用するほか、中国市場で培ったマネージメントのノウハウを生かして全世界でのシェア拡大を狙うとしている。

 グローバル化を掲げる現在ですら、すでに同社は全ビジネスの6割を中国国外のマーケットで展開しているが、やはり海外マーケットではLenovoブランドの知名度は低いという。今後3〜5年間は欧米や日本といった巨大マーケットに加え、BRICs(ブラジル/ロシア/インド/中国の頭文字をとった造語)のような今後成長が見込まれるマーケットに注力していくとしている。

 また、単純に製品を多くの国に流通させる名ばかりの「グローバル化」ではなく、名実ともにグローバル企業として成長するには、内部的にも変わることを自らに課している。その大きな一歩としてIBM PC部門の買収にあたってはプライベート・エクイティ・ファームを利用したほか、CEOにはアメリカ人である米DELL上級副社長のウイリアム・J・アメリオ(William J. Amelio)氏をヘッドハンティングし、さらには役員会に外国人を多数迎え入れた。現在の上位10役員は世界10カ国から招聘(しょうへい)し、さまざまな視点からLenovoの経営を進めていけるよう経営陣の国際化も図られている。

まずは社内のグローバル化を血肉化する

企業文化の統合と多様化を担当するLenovo副社長のヨランダ・コニヤース(Yolanda Conyers)氏

 IBMのPC部門を統合したことにより、Lenovoの従業員も大幅に多様化したという。出身国の違いによる文化や考え方の違いに加え、IBM PC部門やほかの企業からLenovoに参加してきた人材に見られる企業文化の違いが企業に及ぼすインパクトは大きい。また、中国のような国土が広い国においては、同じ中国人といっても北京、上海、シンセンなどから来た人それぞれに考え方が異なるため、意志の疎通や人間関係が円滑にいかなくなることも少なくない。Lenovoでは、各従業員の才能やスキルを最大限に引き出して効率のよい職場環境を整えるべく、企業文化の統合と多様化を担当する副社長として米DELLからヨランダ・コニヤース(Yolanda Conyers)氏を2007年2月に迎え入れた。

 コニヤース氏の就任から現在までの約半年間は、コンサルタントとしてマッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)を招き、Lenovoの企業文化の利点と改善の余地がある点の洗い出しが行われた。その結果、Lenovoのグローバル化にあたって「グローバルな視点を持ち、人種を越えたチームワークを形成できる人材の育成と同社のさらなる成長を信じて前向きに業務にあたれる雰囲気作り、さらには率直な意見の交換には欠かせないオープンマインドな企業風土を作ることが欠かせない」という調査結果が浮かび上がってきた。

 今後数カ月間は、経営陣をはじめとする上層部がこのコンセプトを実践し、次いでマネージャーがチーム全体とこのコンセプトを話し合うことで、最終的にはすべての従業員にまで現在のLenovoには何が必要とされているかを行き渡らせる予定だ。

 次の段階では、個人レベルでこの考えを受け入れて、その価値を認めるための具体的な行動を起こすとしている。コニヤース氏は、「この段階で役立つのがオリンピックのパートナー・プログラムへの参加だ」という。「オリンピックは全世界の人々がスポーツを通じて1つのことを成し遂げるという意味で現在のLenovoの方向性と似ており、グローバル・パートナーとしてオリンピックに参加することが、そのまま新しい企業文化の育成につながる」というのだ。

 このほか、日常レベルでの異文化間のコミュニケーションの促進にも細やかな気配りが行われている。例を挙げると、英語による会議ではなるべくゆっくりと話して相手に分かりやすく伝える努力をすることや、会議終了後に議事録を作成して参加者全員が同じ理解レベルで会議の内容を了解していることを確認するよう決められている。

 改めて指摘されてみればごくごく当然のことなのだが、これらのことをしっかりと念頭に置いた場合と、置かなかった場合でのコミュニケーションの密度の差は長い期間では大きなものとなってくるに違いない。

 さらに、他文化への興味を高めるプログラムも来年から順次開始されることも明らかにされた。世界各国の慣用句や常識とされる事柄を集めた「Cross Culture Toolkit」を使ったプログラムでは、慣用句、または常識とされる事柄がどの国のものかをグループになって推測し、推測しても分からない場合はほかの従業員に聞くことで正解を見つける。正解を見つける中でほかの従業員がどのような国から来たかを知り、その文化背景を話し合うことで他文化への興味と理解を深めることを目的としたプログラムだ。

 また、西洋人と東洋人の考え方の差違を埋める「East meets West」というプログラムも提供される。このプログラムでは、まずインタビューによる自己内省を行い、次のステップで文化が異なる人々とどのようにすれば効率的に業務を行えるかを数回のセッションを通じて考える機会が持てるという。


 「中国の企業」という枕ことば付きで語られることが多かったLenovoは現在、多種多様な人種と文化を取り込みながら真のグローバル企業へと成長すべく大きく変わろうとしている。企業全体が一丸となった新体制の元、今後のLenovoブランドがどのように変わっていくのか目が離せないところだろう。

 次回は、“Lenovoブランド”の普及に向けての具体的な取り組みを見ていく予定だ。

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