最適なドライブ構成とデータ移行の手順を考える一歩進んだHDD活用術(前編)(1/2 ページ)

» 2007年09月07日 11時30分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

 技術革新によって性能が向上し、普及ともに低価格化が進む――最新テクノロジーが利用されているPCパーツほどその傾向は顕著だ。中でもHDDは数年前に比べて何倍という単純な比較がしやすいパーツと言える。

 メモリがOSやプログラムによって半ば強制的に要求値を上げ続けているのに対し、HDDは比較的ユーザーの利用方法に依存する傾向にある。言い換えれば、次々に増設を繰り返すヘビーユーザーがいる一方で、現在の容量を持て余しているユーザも相当数いる。今回は「足りなくなったから増設」以外のHDDの活用方法の一例を紹介していこう。

安全性の向上――システムとデータの分離

 BTOや自作PCを除き、ほとんどのPCはHDDを1台のみ搭載しており、パーティションも1つだけというケースが多いのではないだろうか。リカバリー用の特殊なパーティションを含む場合もあるが、Windowsから見えるドライブとしては1つであることがほとんどだ。その場合、「HDDが飛んだ」というトラブルは「すべてを失った」ということに等しい。

システムとデータにはさまざまな違いがある。同じように扱うこと自体に無理がある

 HDD上の記録情報は大きく2つに分類される。ひとつはシステム。OS自身やプログラムなどがこれに含まれる。システムが破損するとOSが起動しなくなる、プログラムが動作しなくなるといった動作障害が発生する。サルベージができない場合は、OSやプログラムの再インストールで対応することができる。復旧が完了するまでPCはいっさい利用できず、手間と時間がかかるものの、インストールディスクさえあれば完全に元の状態に戻すことが可能だ。システムのリフレッシュによって利用していないプログラム、レジストリエントリが一掃され、パフォーマンスの改善が期待できるので、障害が起こらなくても定期的にOSの再インストールを行うユーザーもいるくらいだ。

 そしてもう1つの記録情報がデータだ。もちろん、プログラムも広義のデータではあるが、ここでは主にユーザー自身が作成したデータのことを指す。データにはデジカメなどの撮影データ、メール、お気に入りのリンク集、WordやExcelのドキュメント、家計簿データなどが含まれる。これらはOSやプログラムの動作には影響ない場合がほとんどだが、復旧に関しては再作成するしかなく、メールや撮影データなど、失ったらもう終わり、というものも少なくない。

 システムとデータはほかにも特徴的な違いがある。一般にシステムは環境に依存する。そのため、あるPCのシステムドライブをそのまま別のPCに付け替えても、構成が異なれば動かない場合が多い。一方、データに関しては読み出すことができればシステムを問わない。対応アプリケーションさえあれば、Windows XPのデータをWindows Vistaで読めるし、それどころかMacintoshでも利用可能だ。

 不意のHDD障害に対する安全策は、バックアップをとることに尽きるのだが、目的および方法も記録情報の違いによって異なる。システムの場合は手間をかければ元に戻せるため、その目的は「復旧作業時間の短縮」という意味合いが大きい。また、ディスク上のシステムファイルの配置も重要であるため、基本的には単なるファイルコピーによるバックアップでは復旧できないボリューム全体のイメージバックアップを行う。こちらは比較的バックアップ頻度は低くても構わない。

 データの場合はシステム同様のイメージバックアップももちろん可能だが、ファイルコピーのバックアップでも十分対応できる。むしろ、選択的に復旧させたい場合などは簡単に処理できるファイルコピーのほうが望ましい。バックアップの対象もボリューム全体ではなく、フォルダ単位、ファイル単位であることが多い。データのバックアップの目的は「作成不可能なデータの複製をとっておく」ことだ。データは日々作成、更新されていくものであるため、バックアップ頻度は高いほうがよい。

 現在主流のバックアップソフトはこの両者ともに利用できるよう、改善が加えられている。システムバックアップでは対象ファイルが使用中だったり、高頻度で書き変えられているケースが多い。そのため、以前のバックアップソフトではいったんシステムを終了させ、独自OSで起動してからバックアップをとる方法が普通だった。しかし現在はほぼ例外なく現在稼働中のシステムを止めることなくバックアップできる「ホットバックアップ」をサポートしている。また、データバックアップではバックアップ対象をボリューム単位ではなく、フォルダやファイル単位で指定できるものは多い。バックアップファイル自体は1つないし複数に分割されたイメージファイルになるが、これを仮想的なドライブとしてマウントする機能を持つものもある。その場合、選択的にファイルを書き戻すことが可能だ。

 とはいうものの、パーティションが1つしかなければシステムとデータの区別はない。システムはパーティションまるごとバックアップが基本。となると、同じパーティションにデータが含まれる以上、データ自身もまるごとバックアップされる。結局、丸ごとすべてを高頻度でバックアップしなくてはならないことになる。もちろん、パーティション全体は低頻度で、データフォルダのみを高頻度で重複してバックアップする、という方法もないわけではないが、パーティション全体の書き戻しは2重の手間がかかる。

 そこでお勧めなのが、システムとデータでドライブを分けてしまうことだ。1台のドライブをパーティションを分けて利用するのもよいが、スペースが許せば物理的に2台のドライブを使うのがよいだろう。このこと自体は中級以上のユーザーにはなかば常識とも言えるよく知られた方法だが、ここではすでに1台1パーティションでPCを長らく利用しているユーザーが複数のドライブ(もしくは複数パーティション)環境に移行する場合の具体的な例を考えてみよう。

ステップ1:パーティション・ドライブの構成を考える

DriveAnalyzerはフォルダごとの利用状況をグラフで表示することができるフリーソフト

 まずは現在の利用状況をチェックすることから始めよう。利用状況の確認にはドライブ全体の利用状況をチェックするほか、フォルダ単位のチェックも必要だ。エクスプローラでフォルダを選択し、プロパティを見れば分かるが、グラフィカルに全フォルダを表示することができるフリーソフトもいろいろある。

 チェックすべきところは「マイドキュメント」をはじめとする、ユーザーが作成したデータのフォルダサイズだ。Windows XPでは「C:\Documents and Settings\<ユーザ名>」以下、Windows Vistaだと「C:\Users\<ユーザ名>」以下がこれにあたる。これらを分割したときの利用サイズを考えてどのような構成にするかを考えよう。それによってドライブ自体はいまのまま流用するか、それとも買い換えるか、あるいは追加するか、いくつかのパターンが考えられる。

  • A)ドライブを追加し、データのみを移す2ドライブ2パーティション構成
  • B)ドライブを交換し、データとシステムを分ける1ドライブ2パーティション構成
  • C)いまのドライブを流用してデータとシステムを分ける1ドライブ2パーティション構成

 どのケースを選ぶのがよいかは下のチャートを参考にしてもらいたい。

現在の利用状況と、搭載可能な形態、予算などから自分に適したプランを立てる

ドライブ追加プラン。データ用の新しいドライブを追加する2ドライブ2パーティション構成での移行手順例(画面=左)。ドライブ交換プラン(1)。ドライブを交換し、データとシステムを分ける1ドライブ2パーティション構成での移行手順例(画面=右)

ドライブ交換プラン(2)。ドライブの容量に余裕がない場合は多少手間がかかる(画面=左)。既存のドライブを使いまわすプラン。ある程度空き容量がないと難しい。もちろん、外部に利用可能な大容量メディアがあればその限りではない(画面=右)

 現在、バイト単価のもっとも安いHDDは3.5インチ型では500Gバイトのものだ。Western DigitalのWD5000AAKSを見ると、実売価格は1万2000円程度からとなっており、明確に「8000円まで」というような予算の上限がなければこのクラスにしておけば間違いない。

 プランBのケースのように交換の場合だと、一回り大きい容量のほうが多少高価であるとはいえ安心感がある。750GバイトのWD7500AAKSは2万6000円程度と簡単に飛びつける価格ではないものの、現在の利用状況によっては十分検討する余地はある。

 一方、ノートPCの場合はHDDを追加するのは不可能である場合がほとんどであるため、苦渋の選択を迫られることになる。2.5インチ型のバイト単価最安値は120Gバイトだが、元の容量が100Gバイトなどだと交換する意義を見出だしにくい。せっかく交換するのなら大容量ドライブにしたいところだ。ちなみにWestern Digital製2.5インチ/250GバイトHDDのWD2500BEVSは2万2000円程度となっている。

WD5000AAKS(写真=左)。WD7500AAKS(写真=中央)。WD2500BEVS(写真=右)


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