Leopardに見るAppleとMicrosoftの共通点と相違点元麻布春男のWatchTower(1/2 ページ)

» 2007年10月26日 15時50分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

2年半ぶりのリリースとなるMac OS X Leopard

Leopardのパッケージ

 10月26日、かねてより開発が進められてきたMac OS X Leopard(Mac OS X v10.5)がリリースされた。前バージョンのTiger(Mac OS 10.4)のリリースが2005年4月だから、2年半ぶりのアップデートとなる。当初予定されていた今年春のリリースから半年ほど遅れたが、この時の発表通り無事に発売となった。

 正確にはLeopardの発売は10月26日の夕方6時。Webサイトのカウントダウンクロックも、6時に向けて時を刻んでいるのだが、Appleストアで予約したユーザーには、今朝からMac OS Xが届いているはず。事実上の解禁は日本時間で26日の朝ということになる。ちなみに、米国での発売予定も10月26日の午後6時だから、日本のユーザーは一足早く入手できたことになる。このあたり、ボジョレー・ヌーボーにも似ている。というわけで、ようやく入手できたLeopard、まだ半日も使っていないわけで、断定的なことを言うことはできないが、第一印象としては、従来からのMac OS Xの正常進化形という感じだ。

 もちろんLeopardは、有償バージョンアップとなるメジャーアップデートである。Apple自身、「300を越える新機能」をうたっており、すべて自社のWebサイトで列挙されている。これらを1つ1つ、すべてを検証したわけではないし、まだそんな時間もないわけだが、おそらくこのうたい文句にウソはないだろう。そんなすぐにばれるウソをつく理由がないからだ(ただユーザーが期待したように動くのかどうかは検証する必要があるだろう)。

LeopardとTiger、VistaとXPの横たわる溝

 画面1は、Leopardのデスクトップだ。Leopardではインストールデフォルトの背景がAuroraと呼ばれるものになっているため、結構印象が違って見えるかもしれないが、これを前バージョンのTigerと同じAqua Blueに変えると、画面2となる。これをTigerのデスクトップである画面3と比べると、それほど大きなイメージの差はない。よく見るといろいろと細かな部分が違っており、そこに多くの新機能が隠されているわけだが、何というかこれみよがしの違いではない。

画面1 Mac OS Xの新バージョン「Leopard」のデスクトップ。新しい壁紙(Aurora)のせいもあって、違った印象をうけるが……
画面2 Leopardの壁紙を従来と同じAqua Blueにそろえると、Tigerからの一貫性を強く感じる
画面3 こちらは前バージョン「Tiger」のデスクトップ

 TigerとLeopardの類似性は、Windows XPとWindows Vistaの違いと比べればより明らかだ。Windows XPで採用されたユーザーインタフェースであるLunaは、それまでのクラッシクインタフェースとかなり異なるイメージであった。それがWindows VistaのAeroでまた大きく変わった。AeroにもLunaを継承した部分、たとえばバルーンヒントなどはあるが、AeroがLunaの延長線上にあるかと言われれば“ノー”だと思う。

 これに対してLeopardのルック&フィールは、Tigerから変わった部分もあるにせよ、基本的に同じデザインコンセプトであり、Tigerの延長線上にあると思う。少なくともTigerを知っているユーザーがとまどうことはない。たとえば画面下部のドックに並ぶアイコン、デスクトップ上にあるHDDのアイコン、画面上端のメニューバーなど、統一されたイメージだ。

 注意深く見ていけば、ドックの背景が3Dっぽくなっていること、ウィンドウの左右の枠が1ドット幅になっていること、メニューバーが半透明になった影響で、背景の色になっていることなど、さまざまな違いがある。また、Finder(Mac OSでWindowsのエクスプローラに相当する)のウィンドウの上にならぶツールボタンも新しいものが加わっていることが分かる。が、いずれも従来のデザインを継承しており、違和感を感じさせないものだ。このような一貫性は、Mac OS Xの最初のリリースとなったCheetah(10.0)から受け継がれてきたものだ。

 上で述べたLunaとAeroの違いにも現れているように、Windowsで気になることの1つは、バージョンごとのブレが結構あることだ。ユーザーインタフェースという極めて大きな部分はもちろん、細かな部分でも気になる部分は少なくない。たとえばコントロールパネルのアプレットで、「アプリケーションの追加と削除」と呼ばれてきたものが、Vistaでは突然「プログラムと機能」になっては、とまどってしまう。名前でソートしてある場合、フォルダ表示におけるアイコンの位置まで変わってしまうから、えーと、あれはどこいった、ということになる。

AppleとMicrosoftの共通点と相違点

 Appleがうまいのは、ユーザーインタフェースを変更する場合も、既存のユーザーであれば、これまでの経験で類推できるような形に変更をインプリメントすることだ。Leopardにおける大きな変更の1つは、Finderにおけるフォルダやファイルの表示に、iTunesでおなじみのCover Flowを取り入れた点にある。Cover Flowを最初にサポートしたiTunesは、2006年9月にリリースされたiTunes 7であり、iPodを使っている多くのユーザーは、1年近くCover Flowの予習をしてきたことになる。

 iTunesを使ったことのあるユーザーであれば、これが何を意味するのか、分からない人はいない。Finderの中のフォルダやファイルは、アイコン表示、リスト表示、カラム表示、そしてCover Flowと切り替えることができるが、そのボタンのデザインもiTunesとそろえられており、ユーザーがとまどうことがないよう配慮されている。

アイコン表示のFinder(画面=左)と、Cover Flow表示に切り替えた画面(画面=右)。スクロールホイールで高速に画面をスクロールできるほか、アイコンをダブルクリックすることでプログラムを起動可能で、スペースバーを押せばアプリケーションを起動せずにファイルを閲覧できる

 ソフトウェア会社であるMicrosoftは、Windows OSというソフト自体を売らなければならない。そうである以上、新しいバージョンは旧バージョンと違っていなければ、誰も買ってはくれないし、違いを示す一番大きなポイントが見ためだから、一貫性より目新しさをとることもやむを得ない面がある。

 これに対してAppleは、Mac OS Xそのものを売る必要はない。もちろんAppleも、Mac OS Xを販売するわけだが、すべて既存のMacユーザーか、新たにMacを購入するユーザーが対象であり、Macの存在を抜きにしてOS単体を買うユーザーは想定されていない。Mac OS XあるいはMacそのものが強い一貫性を持つことを、Appleのカリスマ経営者であるスティーブ・ジョブズ氏の個性と切り離して考えることはできないだろうが、MicrosoftとAppleそれぞれに立ち位置の違いというものも反映されているはずだ。

 逆に、ユーザー(非Macユーザー)にとってMac OS Xの最大の障害は、手持ちのPCでは動作しないため、Macというハードウェアごと購入しなければならない、ということだ。OSを単体で売らなくてよいという自由は、ハードウェアごと売らなければならない、という制約でもある。

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