その水冷PCは「ほぼ無音」の領域に突入――「VALUESTAR G タイプW」をうならす水冷PCの帰還(1/3 ページ)

» 2007年11月15日 11時00分 公開
[兼子忍,ITmedia]

水冷モデルが液晶一体型デスクトップPCとして生まれ変わった

水冷PCとして登場した「VALUESTAR G タイプW」

 NECが運営する直販サイト「NEC Direct」では、店頭販売モデルより高性能な1台が欲しい、こんな機能を追加して購入したいといった、ちょっとぜいたくな望みに応えてくれるBTO対応モデルを購入できる。

 今回紹介する「VALUESTAR G タイプW」は、デスクトップPCと地上デジタル放送に対応した液晶TVの一台二役をこなしてくれる液晶一体型PC「VALUESTAR W」シリーズのBTO対応モデルだ。この秋冬モデルで新たにラインアップされた新モデルで、次世代DVD規格の1つであるBlu-ray Discの読み書き/HD DVD再生に対応したハイブリッドドライブを搭載可能なほか、液晶一体型デスクトップPC初の水冷システムを採用し、抜群の静音性を実現するなど、注目の製品に仕上がっている。

 過去を振り返れば、NECは2003年に大手PCベンダーとしては初めて水冷デスクトップPCを投入し、2004年2月にスタートしたNEC Direct(直販事業自体は2000年7月から開始)では水冷モデル「VALUESTAR G タイプTX」が大ヒットした。これは当時CPUの発熱が増加する一方で、冷却システムの発する騒音が増える中、独自の水冷システムを導入して高い性能を確保しつつ優れた静音性を両立したことで、特にPCリテラシーの高いユーザーを中心に熱い支持を集めたからだ。

 その後、一時期水冷PCの系譜が途絶えた時期もあったが、実績のある水冷システムの安心感に磨きをかけ、よりPCの初心者にも取っつきやすい液晶一体型デスクトップPCとして、生まれ変わったのがVALUESTAR G タイプWVALUESTAR Wシリーズというわけだ。

 今回の評価機は、CPUにCore 2 Duo E4400(2.0GHz)を搭載し、1Gバイトのメモリと500GバイトのHDD、光学ドライブにHD DVDの再生が可能なBlu-ray Discドライブ、1680×1050ドット表示の22インチワイド液晶ディスプレイ、OSにWindows Vista Home Premiumを採用するなど、店頭販売向けの最上位モデルである「VALUESTAR W VW790/KG」とほぼ共通する基本スペック備えていた。

 実際にNEC DirectからVALUESTAR G タイプWを購入する場合は、CPUやメモリ、HDD、光学ドライブといった基本的なパーツはもちろんのこと、液晶ディスプレイのパネルサイズおよび解像度、外付け型FeliCaポートやFDDの有無、Windows Vistaのエディションといった、細かい部分までを変更して、使い方や予算にぴったりとマッチするPCを構成できる。

ボディサイズは534(幅)×253(奥行き)×476(高さ)ミリ、重量は約21キロある。コネクタは左側面に集中しており(写真=左)、右側面には電源端子だけが用意されている(写真=右)。液晶ディスプレイは22インチワイド(1680×1050ドット表示)と19インチワイド(1440×900ドット表示)から選べる(写真=中央)

CPUだけでなくHDDも熱から守る! 静音性と安心を兼ね備えた水冷システム

第4世代の水冷ユニット「ウォーターサイレンス」

 本機の最大の見どころといえば、やはり液晶一体型デスクトップPCとしては初の採用となる水冷システムだろう。本機の水冷システムは、熱源であるCPUだけでなく、熱による故障が懸念されるHDDの冷却にも対応する点がポイントとなる。

 詳細はこちらの記事に譲るが、新開発の第4世代水冷システム「ウォーターサイレンス」では冷却液がまずHDDを包む水冷ジャケットに送られ、続いてCPUに取り付けられたジャケットを通って、HDDとCPUの熱を吸収する。その後、本体背面のラジエータを通る際に、1000rpmの低速回転/大口径(12センチ角)のファンでケース外部に熱を放出する構造だ。ファンの数をラジエータファンの1基に削減することで、PCが発する騒音の中で最も耳障りなファンノイズの低減を実現している。また、HDD全体を吸音材と防振材で包み込む「HDD遮音Box」の導入や、冷却液を循環させるポンプに低駆動音タイプのマイクロポンプを採用するなど、細部にわたって騒音を削減するための工夫が盛り込まれた結果、動作時でも平均約25デシベルという、極めて高い静音性を達成した。

 今回はベンチマークテスト以外にも、ハイビジョン番組のHDD録画や3Dゲームの実行など、思いつく限りの高負荷状態を作り出して騒音の具合をチェックしてみたが、耳障りに感じるノイズがまったく発生しないどころか、本体から1.5メートルほど離れれば、動作音自体が聞こえなくなるほどの静音性を確認できた(厳しくチェックすれば、光学ドライブからはメディアの風切り音が聞こえるものの、こちらも微々たるものだった)。さらに極端な話をすれば、本機がフル稼働時に発する動作音よりも、筆者の作業場近くにある冷蔵庫のコンプレッサーやエアコンの動作音のほうが耳障りだったほどで、これなら秋の夜長を映像鑑賞で過ごす場合でも、PC特有のノイズにじゃまされる心配は皆無といえる。

水冷システムの主要部分は液晶ディスプレイの背面に実装されている(写真=左)。中央の写真はHDDを包み込んでノイズ低減と冷却を行う「HDD遮音Box」だ。システムに組み込まれたHDD遮音Box(写真=右)

背面のカバーを取り外したところ(写真=左)。背面はフラットなので壁に近づけて設置することも可能だ(写真=右)

HD DVD対応Blu-ray Discドライブや地上デジタルTV放送など充実のAV機能を選べる

 こういった静音性の高さは、ハイビジョン映像やDVD-Video、音楽などを鑑賞する際に威力を発揮してくれる。せっかくの高品質な映像や音楽も、PCの発するノイズが気になっては台なしとなるからだ。

 VALUESTAR G タイプWのBTOメニューには、前述のように地上デジタルTVチューナーやHD DVDの再生に対応したBlu-ray Discドライブを選ぶことが可能だ。もちろんBTOでこれらのパーツを選択しないこともできるのだが、“本格的なAV機能を静かな環境で満喫する”のがVALUESTAR G タイプWの基本コンセプトの1つであり、そのポテンシャルをフルに発揮する意味でも、地上デジタルTVチューナーやBlu-ray Discドライブはぜひとも内蔵したいところだ。

 ちなみに、本機のTVチューナーは地上デジタル/地上アナログを各1波ずつ受信可能で、TV機能はタイムシフト再生や録画中の番組を冒頭から再生する追っかけ再生といった、一般的な特殊再生機能を利用できる。さらに、タイムシフト再生を有効にしておけば、過去の番組をタイムシフトバッファから切り出して録画ファイルを作成する「さかのぼり録画」も利用可能だ。もちろん、キーワードによる「おまかせ録画」や地デジ録画番組のネットワーク配信にも対応する。

 ただ、録画中は裏番組の視聴を行えないほか、地上デジタル/地上アナログ放送の同時録画にも非対応だ。また、地上デジタル放送のチャンネル切り替え時間は、タイムシフトを無効にした状態でも実測で約6〜7秒と、ボタン操作が実際の動作に反映されるまでに待たされるのが気になった。

BTOメニューではHD DVDの再生に対応したBlu-ray Discドライブを選択可能だ(写真=左)。Blu-rayやHD DVDタイトルの再生にはWinDVD BD/HD for NECを利用する(写真=中央)。ハイビジョン動画の編集にはDVD MovieWriter for NEC Ver.5を使う(写真=右)

NEC独自のTV視聴/録画/管理ソフトウェア「SmartVision」はWindows VistaになってMedia Centerに統合された(写真=左と中央)。従来の2フィートUIも用意されている(写真=右)

 次のページでは、BTOメニューの詳細を見ていこう。

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