こちらの記事にあるように、日本電気と日立製作所はPC搭載用の水冷クーラーユニットを共同で開発した。発表日の7月30日には共同記者会見を行い、NEC側から水冷クーラーユニットを搭載したPCの静音性能について、日立製作所側から新しく開発された“第4世代”水冷クーラーユニットについてそれぞれ説明が行われた。
水冷クーラーユニットのキーコンポーネント(クーラーポンプ、チューブ、ジャケットなど)の開発は日立製作所が行い、PC内部へ組み込むために必要なクーラーユニットの全体設計と評価はNECが担当している。NECパーソナルプロダクツの小野寺忠司氏(PC事業本部開発生産事業部統括マネージャ)によると、従来、水冷クーラーユニットはNECのタワー型ディスクトップ「VALUESTAR VX」「同 VZ」などの“リビングに設置されるホームサーバ”に採用されていたが、ユーザーからはサーバでなく“水冷を搭載した高性能PC”として認識されるなど、NECの想定とは違う方向性に受け入れられたと述べるとともに、TVやDVD-Videoの視聴のために長時間使われるといったPCの利用状況の変化に合わせて、新しい水冷クーラーユニットの必要性が出てきたと説明している。
その要求に合わせて登場した第4世代の水冷クーラーユニット(第3世代はHPのマルチCPU搭載ワークステーションに採用された)では、これまでのCPUに加えてHDDも冷却できる「マルチヒートソース冷却」を実現した(複数箇所を冷却するユニットは第3世代のマルチCPU冷却で対応している)。日立製作所の源馬英明氏(コンシューマ事業グループソリューションビジネス事業部サーマルソリューション事業センタ長)は、第4世代水冷クーラーユニットの性能について熱の伝えやすさ(もしくは、熱の伝わりにくさ)を表す指標となる熱抵抗(値が低いほど熱を伝えやすくなり、熱交換の効率が向上する)を用いて「第3世代の摂氏0.12〜0.14度/ワットから摂氏0.07〜0.09度/ワットに改善された」と説明するとともに、CPU用ジャケットに第3世代から採用された微細なフィン「マイクロチャネル」のすき間(Gap)も0.15ミリから0.09ミリと狭くなって熱交換の効率が向上したこともアピールした。
クーラントを循環させるウォーターポンプは第2世代からそれまでの遠心ポンプに代わって吐出性能と耐久性に優れた(経年変化による気泡発生を抑えた)ピストンポンプが採用されているが、第3世代で改良された高性能版ポンプに弁用の部材を変更するなどの改良を加えた「低騒音版」が新たに組み込まれている。そのほか、第3世代で取り入れられた「経年変化に強い高級素材を用いたクーラントチューブ」も使用するなど、水冷クーラーユニットに使われている部材の耐久性や品質などは「第3世代と同じものが使われている」と源馬氏は述べている。
第4世代で新しく採用されたHDD水冷ジャケットは厚さ4ミリ、冷却性能は15〜30ワットとされ、1つのジャケットで最大2台のHDDまで対応できる。ジャケットにはインナーフィンが設けられ、クーラントに対する熱交換を効率よく行える工夫が施された。
HDDに水冷クーラーユニットを採用した理由について、NECの小野寺氏は「PCがTVやDVD-Videoの視聴に長時間使われるようになって、システム全体としてAV機器並みの静音性能が求められるようになった。音を発するHDDを静かにするには金属製のフレームと吸音材で構成される遮音Boxで全体を覆わなければならないが、そうすると熱がこもってしまう。そのため、水冷クーラーユニットを導入して密閉した内部でも冷却できるようにした」と説明している。
NECは第4世代の水冷クーラーユニットを採用する新しいPCにおいて駆動音の目標を市販されているDVDレコーダ相当の25dBに設定したが、第4世代の水冷クーラーユニットを液晶一体型PCに組み込んだ状態でNECが計測した結果によると、「CPUフル動作、HDDアクセス時」における駆動音は22.4〜24.0dBであったとされている(同じ条件で従来の水冷クーラーユニットの駆動音は32〜35dBになるとNECは説明している)。
NECは、第4世代を組み込んだデスクトップPCを2007年の年末商戦に向けた秋冬モデルとして登場させる予定であることも明らかにしている。製品に関する具体的な説明はなかったものの、記者会見の会場には、覆いをかけて全貌が分からないようにされた液晶一体型PCと、従来の大画面液晶一体型PC「VALUESTAR W」を並べて、駆動音の違いを比較するデモが行われていた。
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