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» 2007年11月20日 12時30分 公開

山谷剛史の「アジアン・アイティー」:中国復帰10年めの香港電脳事情 (1/3)

返還後に「100万ドルの夜景」もだいぶ変わったと聞く香港。10年でどれだけ中国に染まったのか。電脳街からのリポート。キーワードは「水貨」だ。

[山谷剛史,ITmedia]

 2007年11月に、「中国におけるセレブ層の最低月収ライン」なる中国社会科学院の調査結果が紹介された。「セレブ」の「最低月収ライン」を調べる行為そのものが「な、なんで?」なのだが、そもそも、中国のセレブ層が「マイホームや家を所有し、“財布の中身を気にすることなく”(はい、ここ大事なポイント)買いたいものが買える人たち」と定義されているのも面白い。

 さて、中国社会科学院が調べた結果によると、「セレブと認められるための最低月収ライン」のハードルが最も高いのが香港で、その額は1万8500元。これは日本円にして約27万8000円になる。第2位はマカオ。しかし、その額はだいぶ下がって8900元(約13万3000円)、中国大陸のトップとしては、上海、深セン、北京などが5000元(約7万5000円)強でマカオに続く。ちなみに、筆者が滞在する地方都市の「セレブ層ボーダーライン」は2000元(約3万円)台ということで、なんと、筆者のようなITライターでもこの土地では「セレブ」に認定していただけるのだ。

 このように、セレブといっても中国の地方によってだいぶ差があるようだが、セレブとして認められるための条件が最も厳しい香港は、中国でも物価が飛びぬけて高い都市でもある。この国際都市のIT事情は、返還から10年を経てどれだけ中国に染まってしまったのだろうか? 中国本土とのつながり(人的にも物的にも)はどうなっているのだろうか? そんな疑問を抱きつつ、香港の街を放浪してみた。

「セレブでございまぁ〜す」の香港だが、こういう雑然とした雰囲気もまだまだ残している
香港で販売されているPC雑誌

PCとインターネット普及率は日本とそう変わらない

 香港のPC普及率は、2005年末の時点で全世帯の70.1%に及ぶ。また全世帯の64.6%ではPCがインターネットに接続している(香港政府の発表)。2006年初めに発表されたCNNIC(China Internet Network Information Center)の調査でも、香港全世帯の78%にあたる178万世帯がPCでインターネットに接続しており、そのうちの168万世帯がブロードバンドを利用している。同じ調査では、全人口の6割強にあたるおよそ400万人がインターネット利用者であり、そのうちの95%が家庭内でインターネットを利用するとも報告している。インターネットにかける費用は1カ月あたり200香港ドル(約3000円)以内の人がほとんどだ。

 物価の安い中国の地方都市に滞在する筆者のADSL代が1カ月100元(約1500円)程度である。筆者が滞在している地域では、多くの人の月収が2〜3万円程度であるので、香港の人たちと比べるとネットワークにかけるコストの割合はだいぶ高いことになる。

 世代別でみたPCの利用率は、25〜34歳で84.1%、15〜24歳で97.2%、10〜14歳では98.8%にも達する。一方で、中高年層を見ると、55〜64歳で20.5%、65歳以上では3.2%にすぎない。しかし、香港には、中国本土で見かけない高齢者向けのサービスを用意したWebサイトや高齢者が集うコミュニティサイトが存在している。一方、若い世代ではネットへの依存がますます強まっており、学生では、調べ物はオンラインを利用するのが当たり前、恋人探しも4人に1人がオンラインに頼っているといったデータがある。

 中国本土ではネットカフェでインターネットを利用するのが一般的だが、香港でネットカフェを利用しているのはすべてのネットユーザーのわずか12%に過ぎない。筆者は香港で最も知られた電脳街「深水歩」にあるいくつかのネットカフェに入店してPC端末をいじりつつ、訪れる客を眺めていたが、「さすが香港、中国本土とは違うねぇ」というオチが期待できるネタは見つからなかった。閉じた暗い店内にPC端末がびっしりと並び、客のプライバシーはなく、利用者は一様に黙々と、でも、叫ぶとまでは言わないものの大声で話す友人連れの利用者がたまにいるなど、その雰囲気は中国本土のこぎれいなネットカフェと変わりない(中国のネットカフェについてはこちらを参照されたし)。

香港ネットカフェのPC
中国本土のネットカフェと、そう違いはない

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