“これはもう立派なオーディオ機器だ”――オンキヨー「APX-2」を鳴らすデジタルアンプ内蔵PCの実力は?(2/3 ページ)

» 2008年03月31日 16時50分 公開
[八木慎伍,ITmedia]

10フィートUI+独自技術採用の再生ソフト「PureSpace」を搭載

付属のリモコンは基本的にPureSpace専用だが、十字キーはカーソルキー、決定ボタンはEnterキーのコードを利用しているので、CarryOn Music 10やWindows Media PlayerやWindows Media Centerなどのソフトも簡易的に操作できる

 従来機種のプリインストールOSは、Windows Vista Home Basicだったが、APX-2はVista Home Premiumになった。しかし、APX-2の場合、違いがあるのはWindows Aeroぐらいのもので、音楽再生は独自ソフトを用いるため、Windows Media Centerの出番は少ない。そもそも付属のリモコンでWindows Media Centerの簡易的な操作こそ行えるが、起動用ボタンがないのだ(余談だが、Vista Home Premium搭載PCで、付属のリモコンにWindows Media Center起動用のボタンがないのはAPX-2だけではないだろうか)。

 APX-2のリモコンで操るソフトとして用意されているのが、独自の音楽再生ソフト「PureSpace」だ。これは、オンキヨー独自のジュークボックスソフト「CarryOn Music 10」とライブラリを共有する音楽再生専用ソフトとして新たに開発されたもので、リモコンで操作しやすいように10フィートUIを採用している。

 従来機種ではリモコンこそあれど、10フィートUIの音楽再生ソフトが用意されていなかった。曲目リストを双方向リモコンに転送してリモコン搭載の液晶モニタで確認できるという凝った作りではあったが、リモコン側の液晶モニタが小さくて一覧性が低いなど、残念ながらあまり使いやすくはなかった。

付属のキーボードとマウスはUSBで接続する。リビングでの使用を想定してか、コンパクトなものを採用しているのはよいが、APX-2の用途を考えれば、ワイヤレスタイプにしてほしかった

 APX-2ではリモコンが双方向タイプではなく、一般的な赤外線タイプに変更されたが、新ソフトのPureSpaceがあるおかげで、操作性は改善されている。PureSpaceはリモコンのボタン1つで起動。画面はシンプルで分かりやすく、リモコンの反応速度が速いこともあって使いやすい。ただし、せっかくのWindowsアプリケーションなのに、背景を含めてスキンをまったく変更できず、アルバム選択時や再生中にジャケット写真を出すなどのグラフィカルな要素がないのは少々寂しい。

 しかし、PureSapceの本領は再生品質に有利なソフトであることだ。通常、Windows上のアプリケーションはDirectSoundなどのAPIを使うことで、ほかのアプリケーションやOS自身の警告音などもミキシングされて同時に再生される。しかし、これではWindowsが持つオーディオミキサーを介すことになり、音質的には不利になる。PureSpaceはWindowsのオーディオミキサーを通さず、再生中の音楽のみを直接DACに転送することで、原音に忠実な再生を追求している。

リモコンで操作する音楽再生ソフトは、全画面表示の10フィートUIを持った「PureSpace」だ。PureSpaceの起動時は、ほかのアプリケーションの画面を一切表示できない。メインメニューから再生する音楽の選択や設定メニューへのアクセスを行う(写真=左)。ライブラリはCarryOn Music 10と共有化されている(写真=中央、右)

PureSpaceの設定メニューにはタイマー設定に加えて、Windows起動時にPureSpaceを自動起動する設定も用意されている。APX-2を音楽再生専用機として使う場合に利用するとよいだろう

 実際、ジュークボックスソフトのCarryOn Music 10やWindows Media Playerで再生中に、PureSapceを起動するとほかの音は止まり、PureSpaceの再生音のみとなる。同じ音楽ファイルをCarryOn Music 10で再生させるのと、PureSpaceで再生させるのとでは、確かにPureSpaceで再生させた方が、音のS/N感がよく、透明感が一段上がる印象だ。オンキヨーはこれを「PDAP」(Pure Direct Audio Path)テクノロジーと呼んでいる。

 ただし、PureSpaceはあくまでも音楽再生のみを行うソフトだ。全画面モードしか用意されず、PureSpace起動時はほかのアプリケーションの音を遮断するだけでなく、ほかのアプリケーションの画面を出すことすらできないため、Webを見ながらBGMを楽しむなどといった使い方はできない。

 PCでほかの作業をしながら音楽を聴く場合には、ジュークボックスソフトのCarryOn Music 10を利用することになるが、こちらはPDAPに対応しておらず、再生品質の面で不利になるというジレンマがある。音楽を聴いているときに、ほかのソフトの音や、Windowsの警告音を聞きたい人はいないだろう。できるものなら、CarryOn Music 10にも、PDAPを使ってWindowsのオーディオミキサーをバイパスするボタンなどを導入して欲しかった。

ジュークボックスソフトの「CarryOn Music 10」は健在

 ジュークボックスソフトの「CarryOn Music 10」は、対応する音楽フォーマットの種類(WAV/WMA/MP3/AAC/Ogg Vorbis)を含めて従来から変更はない。著作権保護技術(DRM)に対応しているのはWMAのみだ。CarryOn Music 10上のライブラリをPureSpaceが共有する仕組みのため、CarryOn Music 10が読み込めない音声ファイルはPureSpaceでも再生できない点は注意してほしい。例えば、ATRACやiTune Storeで購入して著作権保護された音楽はPureSpaceでそのまま再生できない点は知っておくべきだ。

 もちろん、従来同様に録音機能は充実している。無音部分を検出しての曲の自動分割、ノーマライズ、ノイズ除去、フェードイン/アウトを利用して、アナログ入力からのデジタルライブラリ化が可能だ。音声波形データから楽曲名を取得するGracenote MusicIDにも対応している。さらに、APX-2はデジタル入力端子も持っているので、DATで生録した音声をデジタル経由でライブラリ化するといったこともこなす。録音機能はほかのジュークボックスソフトに対するアドバンテージと言えるだろう。

CarryOn Music 10は、左側のタブで楽曲ライブラリ(LIBRARY)、音楽CDリッピング(CD)、Webブラウズ(INTERNET)、ポッドキャスト(PODCAST)、アナログ音声録音(LINE)の機能を選択する仕組みで、アルバムのアートワーク表示にも対応する(写真=左)。グラフィックイコライザーの機能が用意されているが、PureSpaceには反映されず、プリセットの選択肢は音質がいまひとつに感じた(写真=中央)。アナログ音声入力の機能は充実しており、エフェクターパネルを起動すると、イコライザーやノイズリダクション、レベル調整、フェードイン/アウトの設定が行える(写真=右)

 オーディオ部のアンプのボリュームやライン入力をPC部からコントロールするためのアプリケーションとして、「アンプコントローラー」も用意している。アンプコントローラーはCarryOn Music 10でアナログ音声のデジタル化を行う場合など、外部入力の選択にも利用する。

 再生フォーマットの設定は、PCからオーディオ部に転送するフォーマットを設定できるようだ。テストしたところ、再生するフォーマットに合わせることで良好な結果を得ることができたが、CD音声と24ビット/96kHzの音声をCarryOn Music 10で混在させる際は、どちらに設定を合わせるか悩みどころだ(無論、デコードした音声をダイレクトに転送するPureSpaceはこの設定の限りではない)。

「アンプコントローラー」では、アンプのボリュームやライン入力のコントロールが行える(写真=左)。再生および録音時のサンプリング周波数と量子化ビット数を選択可能だ(写真=中央)。各入力は分かりやすいように名前を変更できる(写真=右)

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