これぞ正統なPDA――「HP iPAQ 212 Enterprise Handheld」を試すエンプラだけではもったいない!?(1/2 ページ)

» 2008年06月12日 12時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

スペックを強化しボディも大型化

「HP iPAQ 212 Enterprise Handheld」

 スマートフォンの普及と低価格ミニノートPCの登場は、携帯電話機能を持たないスタンドアロンPDAの市場を圧迫し続けている。現在、スタンドアロンPDA市場を支えているのは、PDAを自社専用ソリューションの一部として活用する企業ユーザーだと思われる。小型/軽量であるだけでなく、電源スイッチを入れると直ちにスタートできる俊敏性や、一般的なPCより長時間動作するバッテリーといった、PDAならではの利点を活用しようというユーザーだ。

 今回取り上げる日本ヒューレット・パッカードの「iPAQ 212 Enterprise Handheld」(以下iPAQ 212)は、その名称にも示されているように、主に企業での利用を想定したPDAだ。4インチの明るいVGA液晶ディスプレイを搭載する。LEDバックライトの輝度は、電源スイッチ横に設けられた調光センサによって自動調整されるが、その幅はそれほど大きくない。気になったのは、ディスプレイに保護カバー状のシートが張られていることだ。そのせいもあってか、スクリーンをタッチした際のレスポンスがいまひとつで、ちょっと気になる。

 同じ3ケタ台の型番を持つ「iPAQ 112 Classic Handheld」と比べると、液晶ディスプレイが3.5インチから4インチに大型化し、解像度も240ドット×320ドットから480×640ドットに精細化したこともあって、握ったときにガッチリとした印象を受ける。

 本体サイズはiPAQ 112の68.9(幅)×116.7(奥行き)×13.6(厚さ)ミリから、76(幅)×126(奥行き)×16(厚さ)ミリと一回り大きいのだが、本体の厚みがほぼ一定でテーパーがないこと、角張ったデザインが、そのような印象を強めるようだ。

 重量的にも約192グラムと、iPAQ 112に比べて約75グラムほど重い。シャツの胸ポケットに入れるのはためらわれる重量だが、その理由の1つは2200mAhの大容量バッテリーを採用したことが理由だ。これにより、液晶ディスプレイが大型化したにもかかわらず、公称値で約10時間(非通信時)の駆動時間を確保している。

6万5536色表示に対応した4インチ液晶ディスプレイを搭載する。画面解像度は480×640ドットで、横位置表示も可能だ。LEDバックライトの輝度はコントロールパネルで任意に変更できるほか、側面に用意された自動調光センサで調整が行われる(写真=左)。容量2200mAhのバッテリーは背面にあり、ユーザーによる交換が可能だ(写真=右)。非通信時のメーカー公称値は約10時間で、直販のHP Directplusでは5250円で販売されている

ボディの大型化がもたらす功罪

デュアルスロットを標準で装備

 本体が大型になった代わりに、極めて高い拡張性を持つのが本機の特徴だ。SDメモリーカードスロットとCFスロットのダブルスロット構成に加え、ドッキングコネクタもUSBのMini-Bコネクタと24ピンコネクタを備える。SDメモリーカードスロットはSDIOだけでなく、SDHCにも対応する。

 ドッキング用の24ピンコネクタは、このモデルから搭載された新しいもので、従来のiPAQに採用されていたドッキングコネクタ(22ピン)との互換性はない(クレードルなどの流用はできない)。現時点ではこの24ピンコネクタに対応した周辺機器は、同梱されているACアダプタと「iPAQ 210用24ピン同期/充電ケーブル」、オプションの「iPAQ 210用拡張ケーブル」のみラインアップされているだけだ。後者は充電(USBのMini-Bコネクタ経由より高速)とUSB 2.0接続に加え、USBホスト機能が利用可能でUSBメモリキーやキーボードなどを接続できるが、日本HPの保証が受けられる製品は現時点でないので注意したい。

本体上面/下面

本体左側面/右側面

 一方、内部はiPAQ 112と同じCPUである、MarvellのPXA310 624MHzをベースにする。パワーマネージメント機能により通常は206MHzで駆動し、ビデオ再生などCPUパワーが必要なときには624MHz動作となる。PXA270プロセッサにグラフィックスアクセラレータを統合したPXA310は、PDA用としてはハイエンドといっていいCPUではあるのだが、iPAQ 112との2万円近い価格差を考えると、CPUにも1クラス上を期待したくなる。

 メモリは、ストレージとして利用するフラッシュメモリ(Flash ROM)が256Mバイト、メインメモリ用のSDRAMが128Mバイトで構成される。ユーザーが利用できるのは前者が150Mバイト、後者が87Mバイトとされている。データの追加、あるいはアプリケーションのインストールでフラッシュメモリが消費されていくほか、24Mバイト分をiPAQ File Store領域として利用できる。iPAQ File Store領域は、SDメモリーカードを内蔵したような感覚で利用可能なストレージ領域で、工場出荷時にリセットしても内容を保持してくれる。また、メインメモリはiPAQ 112(64Mバイト)の2倍に達しており、上位モデルらしいゆとりを感じる。

 ネットワーク機能も、iPAQ 112と同じ無線LAN(IEEE802.11b/g)とBluetooth 2.0+EDRの2本立てだ。Bluetoothのプロファイルとしてオーディオプロファイル(A2DP)のサポートが加わったのもiPAQ 112と同等だ。5Wayナビゲーションボタンをはじめとする操作ボタン類の数も同じである。

CPUにMarvellのPXA310(624MHz)を搭載(写真=左)。128Mバイトのメインメモリを搭載(写真=右)

5Wayナビゲーションボタン(写真=左)。付属品一覧。24ピン同期/充電ケーブルと24ピンアダプタ、ACアダプタ、簡易ケースが同梱されている(写真=中央)。ワイヤレスマネージャの画面。無線LANとBluetoothを利用できる(写真=右)

HP iPAQ Wirelessの設定画面

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月25日 更新
最新トピックスPR

過去記事カレンダー