“クラシック”だけど最新鋭のPDA――「HP iPAQ 112 Classic Handheld」PDAの灯は消えず(1/2 ページ)

» 2008年03月03日 17時17分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

国内で地道に販売を続けるHP iPAQシリーズ

HP iPAQ 112 Classic Handheldのパッケージ

 電話機能を持たないスタンドアロンのPDAは、このところすっかり影が薄くなってしまった。“ケータイ”以上、PC未満のデジタルデバイスであるPDAは、高機能化を続ける携帯電話と、Eee PCに代表される超小型PCのはざまで、ますますアイデンティティを発揮しづらくなりつつある。携帯電話とPDAが一体となったスマートフォンの分野は何とか気を吐いているものの、古典的なスタンドアロンPDAの市場は縮小を余儀なくされている。

 そのような状況でも、昔ながらの古典的なPDAのユーザーはいる。かくいう筆者も、いまだにスタンドアロンのPDAを使い続けている。スマートフォンも試してはみたのだが、もうひとつシックリとせず、またPDAに戻ってしまった。

 そんなユーザーに頼もしい存在が日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)だ。多くのベンダーがこの市場から撤退する中、今も製品の供給を続けている。もちろん、単に古いモデルの販売を続けているのではなく、定期的に新モデルの投入も行っている。この「HP iPAQ 112 Classic Handheld」(以下、iPAQ 112)は、日本HPが1月から直販のHP Directplusで販売された最新のPDA(同社流に言えばHandheld PC)だ。なお、直販価格は3万2250円となっている。

落ち着いた外観デザインに回帰

HP iPAQ 112 Classic Handheldの外観

 このiPAQ 112の特徴を一言で表せば、クラシックな外観に最新の中身、ということになる。2006年に発表されたrxシリーズは、コンシューマーを意識した、斬新なスタイルのPDAだった。標準状態の表示が横位置になっただけでなく、外観の色遣いもシルバーとオレンジのポップなものになったほか、機能面でもジョグダイアルが追加されるなど、メディアプレーヤー的な色彩が強くなっていた。iPAQ 112は、以前発売されていたh19xxシリーズと同様な薄い縦型のデザインへ回帰し、色遣いもガンメタリック調の落ち着いたもので、いかにもPDAらしいPDAに仕上がっている。

 ガンメタリックの外装は樹脂製だが質感はよく、パッと見には気がつかないほど。本体下部に4つのアプリケーションボタンと5ウェイナビゲーションキーを配置しているのは、従来機を踏襲する。変わったのは、個々のアプリケーションに割り当てられているボタンが2つ(デフォルトでは予定表とメール)に減り、残る2つは「スタートメニュー」と「OK」になったこと。ただし、ボタンの長押しがサポートされており、予定表ボタンを長押しすれば「連絡先」に、メールボタンを長押しすることで「Windows Media Player」を呼び出すことができる(組み合せは変更可能)。

 ボタン以外の操作系は大幅に配置が見直されており、電源ボタンとメモボタンが本体右側面に、MMC/SDメモリーカードスロット(SDHC/SDIO対応)が左側面に配されている。電源ボタンとメモリカードスロットが上部から移動したことで、上部はヘッドフォンジャックとスタイラス収納口だけのシンプルなデザインとなった。また、液晶ディスプレイの上部には環境光センサーが用意され、周辺の照度に合わせて液晶ディスプレイのLEDバックライトをコントロールすることができる(最初の設定を暗くしすぎると、効果があまり感じられない)。本体下部には、PCとのデータ同期用と充電用を兼ねるUSBコネクタ(mini)が用意されている。

いかにもPDAと言えるシンプルな外観だが、配置は大きく変更された。左から上部、下部、左側面、右側面で、リセットスイッチは右側面にある。左側面下部にストラップホイールを備えているのが心憎い

 LEDバックライトのおかげもあって、3.5インチ液晶ディスプレイの表示はシャープで明るい。解像度は240ドット×320ドット(QVGA)だが、本機がラインアップ中のエントリーモデルであることを考えれば、VGA液晶でないのはやむを得ないところだろう。もちろんPDAとして利用するのにQVGAで困ることはない。

 なお、本体サイズは68.9(幅)×116.7(奥行き)×13.6(厚さ)ミリで、重量は約117グラム(実測値/バッテリー含む)。ワイシャツの胸ポケットにすっぽり収まるものの、重量感はそれなりにある。

6万5536色表示に対応した3.5インチ半透過型QVGA液晶ディスプレイを採用(写真=左)。もちろん、縦横表示の切り替えが可能だ。背面にはスピーカーとバッテリーが位置する(写真=中央)。容量3.7ボルト 1200mAhのバッテリーは着脱式で、最大15時間の駆動(非通信時)が行える(写真=右)

中身はハードウェアとソフトウェアともに一新

CPUは624MHz駆動のMarvell PXA310、OSはWindows Mobile 6 Classicだ

 外観はクラシックなiPAQ 112だが、中身はハードウェアとソフトウェアともに最新だ。CPUはMarvellのPXA310で、インテルがXScale事業をMarvellに売却すると発表したのは2006年6月のことだったが、このPXA310は買い取ったMarvellにより開発された最初のXScaleプロセッサ、ということになる。といってもPXA300シリーズは、インテルのPXA27xをベースにさらに集積度を高めたものだ。基本的にPXA27xシリーズで利用可能だったアプリケーションはそのまま利用できる。PXA310では、PXA27xで外付けだったビデオアクセラレーター機能が内蔵になるといった強化が行われている。

 その一方で、PXA27xシリーズ同様の強力なパワーマネージメント機能も健在だ。iPAQ 112に採用されたPXA310のクロックは624MHzだが、通常時は低クロック(206MHz)動作でバッテリーの消耗を防ぐ。こうしたおかげもあって、iPAQ 112は非通信時で最大約15時間と、比較的長時間のバッテリー駆動が可能だが、反面、日常的な操作のレスポンスは206MHzのCPU並みという感覚で、CPUクロックが示すほどサクサク動く、というわけではない。

 搭載されているメモリは、64MバイトのSDRAMと256Mバイトのフラッシュメモリという構成だ。それぞれ26Mバイトと186Mバイトがユーザー領域となる。前世代の同価格モデルrx4240のフラッシュメモリが128Mバイトだったことを考えると、価格は据え置きで容量は2倍になったことになる。

 通信機能は、WiFi(IEEE802.11g/b)とBluetooth 2.0+EDRだ。いずれもHPが提供するユーティリティを使うことで、簡単に利用することができる。このiPAQ 112では、これまでサポートされなかったBluetoothのオーディオプロファイル(A2DP)が正式にサポートされ、Bluetoothマネージャと呼ばれる設定ユーティリティから簡単にセットアップが行える。

 これらのベースとなるソフトウェアは、最新のWindows Mobile OSの中で、通信(電話)機能を持たない端末向けに用意されたWindows Mobile 6 Classicだ。バンドルされているOffice Mobileが最新版となり、Office 2007で採用されているフォーマットの読み込みに対応した。

内蔵メモリは64MバイトのSDRAMと256Mバイトのフラッシュメモリで構成される(写真=左)。画面は縦と横表示に切り替えられる(写真=中央)。無線LANやBluetooth用のユーティリティ「HP iPAQ Wireless」の画面(写真=右)

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