さて、モデルごとの特徴だが、ハイエンドのrx5965は、GPS機能の内蔵とトラベル・ツールソフトウェア(World Mate Standard Edition)の搭載により、Travel Companionの愛称がつけられている。World Mateは、度量衡や通貨の換算、世界時計、国際電話の国別コード一覧といった、旅行の際に必要なデータをまとめたアプリケーションだ。インターネット接続されたPCとの同期で、世界各国の天気予報データを取り込むこともできる。
GPS機能は、SiRFstar IIIチップにナビゲーションソフトのb-walkerを組み合わせたもの。ビルの谷間のようなロケーション(一例を挙げると、東京国際フォーラムのホール棟とガラス棟の間)でも、複数の衛星をキャッチできるなど、十分な感度を備える。rx5965は、標準の128Mバイトに加え2GバイトのフラッシュROMを備えるが、うち800Mバイトがb-walkerと地図データにより利用されている。
このGPS機能を簡易カーナビ代わりに利用するべく、rx5965には車載キットが標準で添付される。車載キットは、カーマウント金具とホルダ、シガープラグアダプタで構成され、ダッシュボードの見やすい位置にrx5965を固定することが可能だ。専用カーナビと異なり自律航法機能を持たないから、過度な期待をしてはならないが、SiRFstar IIIの高感度のおかげで、ある程度は使えるものになっている。
一方、rx4540とrx4240は、1Gバイトの追加フラッシュROMを持つかどうかが違いの姉妹モデルである。前述したように、1Gバイトのストレージを使いながらPHSカードでの通信も行いたければrx4540、Bluetooth携帯の利用や、PHSカードとSDメモリカードの同時利用を行わないのであればrx4240という使い分けになるだろう。これ以外は両者のスペックは共通である。
ディスプレイである2.8インチのカラー液晶は、解像度がQVGA(320×240ドット)だ。同じWindows Mobile 5.0ベースのW-ZERO3[es](WS007SH)も同じ2.8インチサイズの液晶だが、VGA解像度であるのに比べると、やや見劣りする。液晶ディスプレイを小さくしてナビゲーションパッド(十字キー)をなくし、ハードウェアボタンを側面に移したことで、本体はかなり小型化された。サイズはHDDベースのiPod with Videoを少し分厚くした感じである。
GPS機能を持たないrx4540とrx4240の用途は、PIMとWindows Media Player 10 Mobileによるエンターテインメントが中心になる。rx4540/4240は、ナビゲーションパッドの代わりに本体右肩にスクロールホイールを搭載し、スクロールでボリューム調整、ホイールクリックで再生と停止ができるなど、片手で操作可能だ。この片手操作を常に行えるようにする意図からか、本機にはホールドスイッチがない。代わりにアクリル製のクリップカバーが付属しており、画面への不慮のタッチによる誤操作を防ぐ仕組みになっている。
音質も付属のマイク付きヘッドフォン利用時は思った以上に良好だが、サードパーティ製品を利用する場合、若干ヘッドフォンを選ぶ傾向があるようだ。なお、Windows Media Playerということで、Napsterなどのサービスの利用を期待したいところだが、カードスロットがSDメモリーカードのセキュリティ機能をサポートしていないことを考えると、対応は難しいだろう。とはいえ、フリーウェアも含めたサードパーティ製ソフトの利用も考えると、メディアプレイヤーとしての潜在能力は高い。
今回発表された3機種とも、PDAに長い歴史を持つHPの製品だけに、無線機能のオン/オフを切り替えるユーティリティや、Bluetooth対応携帯電話の接続を助けるユーティリティ、メール設定をPC側で行って転送するユーティリティ添付など、使い勝手を高める細かい配慮が目立つ。PDAに通話機能を求めないユーザー、すでにBluetooth対応携帯電話を持っているユーザーはもちろん、Windows Mobileは初めてというユーザーにも適したモデルに仕上がっている。
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