「iPhoneは電話のあるべき姿を永遠に変えた」WWDC'08基調講演まとめ(後編)(2/3 ページ)

» 2008年06月18日 12時20分 公開
[林信行,ITmedia]

通信スピードが売りのiPhone 3G登場

 「我々は最初のiPhoneから非常に多くのことを学んだ。iPhone 3Gでは、そうして学んだことを反映した」とジョブズ氏は語る。

 ジョブズはまず、iPhone 3Gの側面の写真から披露した。「エッジの部分は、従来のiPhoneよりもさらに薄くなっている。背面は全面プラスチックで美しい。(側面には)ソリッドなメタルのボタンを採用。従来通りのゴージャスな3.5インチ液晶ディスプレイ。カメラ。そして平らなヘッドフォンジャック――これで好きなヘッドフォンを使うことができる」。

 会場からは再び歓声が挙がる(初代iPhoneはヘッドフォンジャックが奥まっているために、種類によってはヘッドフォン端子にささらないことがあった)。「劇的に向上した(スピーカーの)音質。とにかくすばらしいが、手に持ったときの感触はさらにすごい。信じられないだろう。iPhone 3Gだ」。

写真は左から、本体右側面/背面/左側面のメタルボタン

写真は左から、本体正面/ヘッドフォン端子/スピーカー

 続いてジョブズ氏は、先ほどあげた5つの課題にiPhone 3Gがどのように応えているかを紹介した。

 まずは1つめの3G対応。ジョブズ氏は3Gの本質は高速なデータ転送であり、高速なデータ転送が生きてくるのは、Webブラウジングと大きな添付ファイルのダウンロード時だと言う。

 ジョブズ氏は新旧のiPhoneで、同じWebページを表示させる比較テストをデモした。複雑なレイアウトで画像がいっぱいのページを表示するのに、新iPhoneが21秒で済むところを、旧iPhoneでは59秒かかった。つまり、新iPhoneは2.8倍速いことになる。

 ジョブズ氏は「さらに特筆すべきは、同じWebページを無線LAN接続で行うと、表示にかかる時間は17秒。3G通信の速度は無線LANに迫る高速な通信を可能にする」と付け加えた。

 さらに面白かったのは、ほかの3G対応スマートフォンとの比較だ。アップルは、同じWebページを3G対応のNokia「N95」や、Palm「Treo 750」で表示した場合の時間も比べている。いずれも3G端末なのでネットワークスピードは同じはずだが、新iPhoneが21秒で済むところを、N95は33秒、Treo 750は34秒かかった。iPhoneのほうが36%高速だ。

 ジョブズ氏はさらに画面を指して言う。「だが、それ以上に驚きなのは(ページを表示した)結果だ」――N95やTreo 750は、Webページの左上の隅、ロゴマークの一部だけしか表示されていないのに対して、iPhoneではページを縮小して全体イメージが表示されている。

 電子メールに添付されたPDF形式の地図を展開し表示するテストでは、iPhone 3Gが5秒で済んだところを、旧iPhoneでは18秒かかった。新iPhoneのほうが3.6倍高速だ。無線LANの速度は3秒なので、3G接続は無線LANにかなり近づいている。

 ジョブズはさらに続ける。「スピードが速いのは分かってもらえたと思うが、実は本当にすごいのは、我々がこれをすばらしいバッテリー寿命と両立していることだ」。ジョブズ氏はこういってiPhone 3Gのバッテリー動作時間を紹介した。

 スタンドバイ時間は300時間、2G接続での通話時間は10時間、3G接続での通話時間は5時間、Webブラウジングの時間は5〜6時間、ビデオ再生は7時間、音楽再生は24時間だという。

iPhone 3Gのそのほかの特徴

GPSを内蔵しTrackingが可能に

 「3Gの高速通信を使うメリットの1つは、GPSの利用が可能になることだ」。ジョブズ氏はこう語ると、iPhone 3GにGPSが搭載されたことを明らかにした。

 ジョブズ氏は「ロケーションサービスは、これから非常に重要になる」と語ったうえで、これまでのiPhoneにも、携帯電話の電波塔からの電波を使った位置特定、無線LANを使った位置特定を提供してきたが、GPSを使えばさらに詳細に現在地を知ることができると紹介。「GPSデータを使うことで、Tracking(足取りの再生)が可能になる」として、サンフランシスコにあるジグザグ型の坂を下る様子を再生してみせた。

携帯の電波での精度(写真=左)。無線LANでの精度(写真=中央)。GPSの精度(写真=右)

 2つめの課題、企業情報システムへの対応では、すでに前編の「iPhone 2.0」で説明したとおり、Microsoft ExchangeのActiveSyncに対応したほか、CISCOのVPN技術など、企業で必要とされているほとんどの技術に対応し、FORTUNE 500の多くの企業からも賞賛を浴びている。サードパーティアプリケーションについてもすでに紹介したとおりで、SDKをリリースし、多くの開発者がすばらしいアプリケーションを作っており、アップルはそれをApp Store経由で販売する予定だ。

企業対応とSDKの提供

「かな」キーボードの注目機能

 ちなみにiPhone 2.0に関して、インタビュー速報では触れなかったが、新しい「かな」キーボードには実際に触って気付く機能が1つあった。キーの上にしばらく指を載せておくと、その周囲4方向にメニューが現れるのだ。例えば「た」のキーをしばらく押し続けると、その上下左右に「ち」「つ」「て」「と」の文字が現れ、そのため指をずらすだけで1ストロークでも文字入力ができるのだ。これはハードウェアのボタンとしてキーが用意されているこれまでの携帯電話ではできない入力方法で、慣れればすごく便利かもしれない


70カ国で展開、価格は199ドルへ

 続いて取り上げた課題は「より多くの国での展開」だ。iPhoneは現在、6カ国で展開されている。アップルは当初、iPhone 3Gを12カ国で展開する予定だったが、やがて目標を倍増させ25カ国展開をめざした。そして最終的には70カ国のキャリアと契約を結ぶに至っている。

 「我々はこれから数カ月にわたって、iPhoneを70カ国で展開していく」。ジョブズ氏は「我々はここにあげたすばらしいキャリアと組んで、国際展開をはかることになった」と語った。もちろん、映し出されたスライドには(左下隅に)SoftBankのロゴも掲載されている。

日本を含む70カ国で発売(写真=左)。アップルが手を組んだキャリア。左下にはSOFTBANKのロゴも(写真=右)

 最後の課題は「価格」だ。「iPhoneは最初599ドルで販売が始まり、今日では8Gバイトモデルが399ドルで売られている。iPhone 3Gは199ドルから購入可能になる」。ジョブズ氏がこう告げると、会場は再び歓声で埋め尽くされた。

 「この価格なら、誰でも買うことができるだろう。これは8Gバイトモデルの価格だが、299ドルの16Gバイトモデルもある。そして16Gバイトモデルでは特別に白モデルも用意した」。

8Gバイトモデルが199ドル、16Gバイトモデルが299ドル。16Gバイトには白モデルもある

 ジョブズ氏は「このように我々は5つの課題のすべてをクリアできたと思う」と語り、iPhoneを全70カ国中、まずは最も大きい22カ国で同時発売すると明かした。日付は7月11日だ。この22カ国には、もちろん、日本も含まれる。

 「そしてこれら22カ国すべてで、8Gバイト版iPhoneの価格は最大199ドルで、それを超えることはない」とジョブズはつけ加えた。「我々はiPhone 3Gに非常に期待している」。

22カ国で7月11日に同時発売

 それからジョブズ氏は、iPhone 3Gの新しいCMを2回流した。CMでは「あのiPhoneが、Webブラウジングを2倍高速にする一方で、価格を半分に引き下げて再登場した」というナレーションがかかる。

 喝さいが鳴り止まない中、ジョブズ氏はiPhone 3Gの開発に関わったメンバーを聴衆に紹介し、自らも拍手を送った。「我々が彼らのようなすばらしい逸材に恵まれていることは、あなたがたも感じてもらえるだろう」。

 「WWDC 2008は、これまでのWWDCの中でも最高のものになるだろう。147セッションが用意され、1000のアップルエンジニアが参加する。また会いましょう」。ジョブズ氏はこう語って、講演を締めくくった。


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