軽量ボディに高い性能と拡張性を凝縮するため、各種パーツを徹底的に小さく軽く仕上げているのもtype Zを語るうえで欠かせない部分だ。マザーボードは12層構造の高密度基板を新開発し、type Sのマザーボードと比較して約40%も小型化した。
CADソフトの自動配線ではここまでの小型化はできないため、技術者が7500本におよぶ配線作業をミクロン単位で最適化したという。こうした基板を作れたのは、ソニーがこれまで積み上げてきたVAIOの小型化技術が土台としてあったからだ。
また、小型軽量ボディの背景には、TDP 25ワットの新型Core 2 Duo(P型番)の登場もある。P型番のCore 2 Duoは、TDPが通常のT型番より10ワット抑えられた「省電力版」として、インテルがCentrino 2の発表と同時に投入したものだ。通常電圧版のラインアップなので、既存の低電圧版Core 2 Duo(TDP 17ワット)と比べて消費電力や発熱面で不利になるが、それでもT型番よりは放熱機構に余裕を持たせやすくなる。
冷却機構については、type Sのクーリングシステムより約40グラム軽量化しながら、ブレード中央に仕切りを設けた新型の冷却ファンを採用することで、空気の流れがファン内で滞るのを防ぎ、不快な音質をカットしつつ、静音性と冷却効率をアップした。これにより、モバイルノートとしては発熱量の多いCPUや外付けGPUを効率的に冷却できるボディを実現している。
さらに直販モデルではTDP 35ワットのCore 2 Duo T9600(2.8GHz)まで搭載できるが、T9600を選択するとファンのブレードやヒートシンクが一部変更されるという。冷却機構をわざわざカスタマイズしてまでT型番のCore 2 Duoに対応する姿勢に開発陣の意地を感じる。
光学ドライブも可能な限り軽量化された。通常のドライブユニットからトップカバーを排除し、裏面には多数の穴を開けることで、type Sのものから約50グラム軽量化している。DVDスーパーマルチドライブの性能やBlu-ray Discドライブの搭載を視野に入れ、薄型軽量の7ミリ厚ドライブではなく、通常の9.5ミリ厚ドライブをベースに軽量化している点にも注目したい。
ボディの素材は、天板と底面はソニーがマルチレイヤーカーボンと呼ぶCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)、液晶ディスプレイのフレーム部分がモールド、パームレストとキーボードパネルがアルミニウムの1枚板となっている。
type Zではボディを小型化したこともあり、type Sと比較してCFRPのハウジング部分だけで約25グラム軽量化したという。カーボン素材は軽くて耐久性が高い半面、折り曲げるのが難しい素材だが、加工技術の向上によって底面のCFRPカバーを2辺折りして強度を高めた。
エグゼクティブなビジネスユーザーにも納得してもらえるようにコストをかけたというデザインにも注目したい。type Zは7月16日に発表されたVAIOノートの新モデルに共通するデザインとして、「シリンダーフォルム」と「アイソレーションキーボード」を採用している。これら2つはtype Tで好評を博したデザインで、これを“VAIOノート共通の顔”として広めていこうという狙いだ。
シリンダーフォルムとは、キーボードと液晶ディスプレイを結ぶ本体中心部に位置するヒンジに、バッテリー、電源ボタン、ACアダプタ端子といった電源関係の機能を集中させたデザインだ。本体の薄型化とバッテリー容量の確保、本体を閉じて持ったときの握りやすさに配慮しつつ、一目でVAIOと分かる個性的な外観を演出している。
アイソレーションキーボードは、キーとキーの間隔を離したデザインのキーボードを格子状のカバーにはめ込んで接着し、キーボードのたわみをなくしたものだ。キーとキーの間隔が離れていることからタイプミスが少なく、キートップの周囲にすき間がないため、長いツメでもキーに引っかかりにくい、キーの間にゴミやほこりがたまりにくいなどのメリットをうたう。
特にtype Zのアイソレーションキーボードは、VAIOとしては初めてアルミニウムの1枚板から成型。パームレストからキーボード上部までをカーブを描きながら継ぎ目なく覆っており、全面にさりげないヘアライン加工が入った高級感あふれる仕上がりだ。
前述した3パターンのプレミアムデザインも含め、デザインの好みは人それぞれだが、少なくとも高級志向のモバイルノートPCにふさわしく、見た目にもハイグレードなモデルであることが明確に分かるデザインといえる。
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