type Zのこだわりは液晶ディスプレイにも現れている。HD映像コンテンツとの親和性と作業領域の拡大、本体の小型化を考慮して、アスペクト比16:9で解像度1366×768ドット/1600×900ドットの13.1型ワイド液晶ディスプレイを搭載した。店頭モデルの1366×768ドット表示でも不満のない解像度だが、直販モデルで選べる1600×900ドット表示はモバイルノートPCとは思えない作業領域の広さだ。
ドットピッチは1366×768ドットの場合で約0.212ミリ、1600×900ドットの場合で約0.181ミリで、前者は1280×800ドット表示の12.1型ワイド液晶を搭載した標準的なモバイルノートPCと、後者は1366×768ドット表示の11.1型ワイド液晶を備えたtype Tとほぼ同じになる。
1600×900ドットの表示はかなり細かく、人によっては見づらく感じるかもしれないが、type Tの高解像度表示が許容できるならば問題ない。1600×900ドット表示の液晶に変更しても差額は1万円なので、個人的には1600×900ドット表示に大きな魅力を感じた。
また、単に新型の液晶パネルを用いるだけでなく、屋内外で十分な視認性を確保できるように、適度な光沢感と外光の映り込み低減を両立したうえで、表面にひっかき傷がつきにくいハードコーティング処理を施した「クリアソリッド液晶」を初めて採用しているのも特筆したい。
ハーフグレアともいえる表面処理は、完全な光沢のクリアブラック液晶と比べて、外光の反射が気にならず、ユーザー自身の顔が画面にはっきり映り込むこともない。それでいて、光沢パネルのように映像コンテンツをメリハリある表示で楽しめるため、グレアタイプとノングレアタイプのいいとこ取りといえる。今後はぜひVAIOノートの他機種にも採用してほしい表面処理だ。
さらに、モバイルノートPCとしては色域が非常に広く、従来のtype Sと比べて約2倍、広色域をうたうtype Tと比べてもさらに広い色域を確保し、u' v'色度域でNTSC比100%を実現した「リッチカラー」としているのもポイントだ。モバイルノートPCでは色域がNTSC比で50%程度にとどまるものも少なくない中で、表示の鮮やかさ、特に深紅や濃い青、エメラルドグリーンといった色の表現は群を抜いている。
実際に1366×768ドットと1600×900ドットの液晶ディスプレイを見比べてみたが、どちらも輝度や発色がほとんど変わらず、明るく鮮やかな表示が可能だ。BTO対応ノートPCの場合、高解像度の液晶パネルを選択すると、液晶の開口率が下がり、ピーク輝度が低くなったり、発色傾向が異なるものも少なくないが、type Zの場合は1600×900ドットになるとわずかに暗くなる以外、見え方がほとんど変わらないのに感心した。
一般的なモバイルノートPCと同様に液晶パネルはフルカラーではなく、ディザリングによる約1619万色表示なので階調再現性は低いだろうと思いきや、カラーやモノクロのグラデーションを表示してもトーンジャンプが目立つことはなく、かなり健闘している。ただし、色域はNTSCの定めるRGBの座標から特にGとBの値がずれているほか、sRGB表示モードのような色域固定はできないため、厳密なフォトレタッチを行うのには向いていない。
ノートPC用のTNパネルにしては視野角も広いので、ユーザーの姿勢に合わせて厳密にチルト角度を調整しなくても画面が見づらくなることはない。逆にモバイルシーンで視野角が広すぎることで、周囲から画面をのぞかれやすいのは困るというユーザーのために、オプションで視野角を狭めるプライバシーフィルターも用意されており、至れり尽くせりだ。総じてtype Zの液晶ディスプレイは、現状のモバイルノートPCで最高峰の表示品質を誇るといっても過言ではない。


液晶ディスプレイに角度を付けた場合、左右方向では表示が黄ばみ、上下方向ではコントラストと色度が変化するが、上下のチルト角度を正確に調整しないと、すぐに白黒が反転して色が判別できなくなるようなことはない入力環境はフルピッチのキーボードとタッチパッドの組み合わせだ。独特のアイソレーションキーボードは、主要キーのキートップが14×14ミリの正方形で、整然とキーが並んだ姿が見た目に美しいだけでなく、きちんと約19ミリのキーピッチと約2.5ミリのキーストロークを確保している。
キーとキーの間隔は約5ミリも離れているため、最初はキーの位置を目で追って正確に中央を押すように注意が求められるが、キーのレイアウト自体には無理がなく、カーソルキーが1段下がっているなど、見た目よりは随分入力しやすい。
キータッチは軽いほうで、力を入れずに入力できる。キーボードユニットはネジやツメで固定しているわけではなく、カバーに接着してあるため、キーボード全体がしなるような不具合は皆無だ。静音ゴムを利用したキートップは、入力音が比較的静かなので、静粛な場所でも使いやすいだろう。
ただし、入力時にキートップが少し傾く点、スペースバーが45ミリと短いので打ち損じることがある点、そして最下段のキーを押す際に親指がパームレスト上部の段差に当たってしまう点は、ストレスを感じた。特にパームレスト上部の段差は、長文入力時に親指に負担がかかるので、今後改善してほしいところだ。直販モデルではスペースバーが長い英語キーボードも選択できるので、英語配列に慣れたユーザーであれば、こちらを選ぶといいだろう。


日本語キーボードは、主要キーのサイズが14×14ミリ、スペースバーが45×14ミリ、Fキーが12×10ミリだ(写真=左)。直販モデルで用意される英語キーボード(写真=中央)。キーボードの裏面を見ると、パームレスト部と一体化したキーボードカバーと接着されていることが分かる(写真=右)タッチパッドはアルプス電気製の多機能ドライバを組み込んだVAIOおなじみのインテリジェントタッチパッドを採用する。タッチパッドのサイズは80×40ミリと広めに確保してあり、小さく感じることはない。左右のボタンは押すのに少し力が必要で、ストロークが浅いものの、しっかりしたクリック感がある。横長の細いボタンだが、押した際にボタンが左右にぐらついたりしないのは好印象だ。
タッチパッドの使い勝手は標準的で問題ないが、欲をいえば、キーボードが大きく変わったのだから、タッチパッドもそろそろMacBook Airのようなマルチタップに対応するなど、次の展開がほしいところではある。
なお、キーボードの左上には「S1」「S2」と2つのプログラマブルボタンが用意され、それぞれ任意のアプリケーションや動作が割り当てられる。初期設定ではS1を押すと「VAIO プレゼンテーションサポート」、S2を押すと「Windows Meeting Space」が起動する仕組みだ。
VAIO プレゼンテーションサポートは、16:9のワイド画面を生かしてプレゼンをしやすくするためのユーティリティで、起動するとデスクトップ右上に外部ディスプレイに表示されている画面が子画面表示される。これにより、プレゼン時にプロジェクターに映っている内容を手元で確認しながら、映っていない領域で資料を調べるなど、作業を効率的に進めることが可能だ。


タッチパッドは上下/左右のスクロールに対応し、左コーナーのタップに機能を割り当てられるVAIOおなじみの仕様だ(写真=左)。2つのプログラマブルボタンは、アプリケーションの起動や、消音、明るさ最大、放熱制御、省電力設定の表示などの動作を割り当てられる(写真=中央)。外部映像出力の画面をPinPのように子画面表示できる「VAIO プレゼンテーションサポート」(写真=右)以上、type Zの特徴と使い勝手をチェックした。実際に触れてみると、VAIOノートのフラッグシップモデルとして、細部までこだわり抜いた製品であることが、至るところからヒシヒシと伝わってくる。後編ではSPEEDモードとSTAMINAモードでパフォーマンスやバッテリー駆動時間がどのように違ってくるのか、ベンチマークテストを中心にその実力に迫っていきたい(後編はこちら)。
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