ときめく夢で締めくくる――2050年の未来を描き出す:Intel Developer Forum 2008(1/2 ページ)

» 2008年08月28日 20時47分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]

シンギュラリティに人工知能――SF用語が満載のラトナー氏

Intel CTOのジャスティン・ラトナー氏

 小説やテレビドラマなどで描かれる未来にあこがれてテクノロジーの世界へ飛び込んだ人間なら、それを聞いた瞬間に心ときめくようなキーワードがあるはずだ。ラトナー氏の講演で登場した「シンギュラリティ」(Singularity)も、その1つではないだろうか。

 「Technology Singularity」(技術的特異点)とは、現行の技術が指数関数的に進化することで、さらなるブレイクスルーを生み出し、その結果として誕生した人工知能が、さらに技術的進化を加速させるというものだ。この段階に達すると、もはや人類は技術的ブレイクスルーを生み出すことができなくなり、進化の波に取り残される時代がやってくるという。この転換点となるのがTechnology Singularityである。

 発明家であるレイ・カーツワイル氏は、その著書でシンギュラリティ(特異点)の存在について記述しており、その到来が21世紀のうちにも起こりうると指摘している。インターネットが普及する時期を比較的正確に予測していたことでも知られているカーツワイル氏は、特異点への到達が早ければ40年後の2050年にもやってくると述べている。今回のラトナー氏の講演では、この来たるべきシンギュラリティの時代に向けて、Intelがどのように技術を進化させていくのかが示された。

 人工知能を実現するためには、膨大な処理能力が必要となる。Intelがコンピュータをベースに技術を開発する以上、それを土台に超高速マシンやインフラを構築しなければならない。課題はいくつかあるが、まず大きな問題となるのがCPUの高速化だ。Intelでは、現在45ナノメートルプロセスルールのCPUを生産しているが、2010年には32ナノプロセスへの移行が待っている。この実現は容易ではないが、ある程度の道筋はできつつある。だが、ラトナー氏によれば、そろそろCMOS回路の限界、すなわち、ムーアの法則の限界に到達しつつあるのも事実のようだ。32ナノプロセスやそこから少し先の進化には、「化合物の組み合わせ」といった素材の工夫である程度対処できるものの、電子スピンやマグネティックメモリ、分子構造物など、新たな技術や素材の検討に入らなければならないかもしれないという。

 だが、キーノートスピーチに登場したIntelのマイク・ガーナー氏は、当面はCMOS上でできる限りのことを模索していくと述べている。これまでに蓄積されたノウハウもあり、CMOSが使いやすい回路であるというのがその理由だ。もし新素材が登場したとしても、CMOS回路をプラットフォームとして、その上に新素材による回路を形成するような形になるという。ただ、カーボンナノチューブ(CNT)のような素材を利用することで、より高速で無駄が少なく、超低消費電力の回路を作り出すことも可能だという見解も示している。

32ナノプロセス世代の先に待ちかまえているCMOS技術の限界にIntelは挑戦する。そのための素材探しや技術開発が現在取り組んでいる課題だ

次々と登場する新技術――シンギュラリティ到達までに歩む道のりとは

 ガーナー氏の研究成果以外にも、キーノートスピーチではさまざまな新技術やアイデアが紹介された。これらもやがて、シンギュラリティ到達のための礎となるのかもしれない。

 そこで紹介された技術の1つである「シリコンフォトニクス」は、IDF 2006で紹介された技術のパワーアップ版となる。ミラー構造など、これまで外部に付属していた構造物を統合し、回路としての汎用性を高めている。デモでは40Gbpsの光伝送が可能なトランスミッタ(送信機)が紹介されていたが、今後開発されるであろうレシーバ(受信機)との組み合わせで高速光伝送を実現させる。ラトナー氏によれば、余分な電力を使わず、送受信ロスも少ない光伝送技術は、将来のコア間通信で必須のものになるとされている。

 誰もがモバイル機器を利用するユビキタス時代が到来すると、膨大な通信セッションが無線経由で発生することになる。こうした機器間の通信リンクは今後数年で1人あたり1000以上になるともいわれており、限られた周波数帯域をいかに有効活用し、少ない消費電力で、かつ、相互互換性を持った通信環境を整備できるかが課題となる。ラトナー氏のキーノートスピーチで紹介された技術は、いかに効率的に周波数帯域の空きを利用して通信を行うかを示すものであった。

高速動作のCPUによる高性能システムを実現するためには、高いレートを可能にするコア間通信技術が必要となる。そのために求められる技術として期待されるシリコンフォトニクスの最新成果が紹介された
ユビキタス時代に必須となる無線通信技術。ラトナー氏は、効率的に無線通信を行うために必要な周波数探索技術を紹介した

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