NB100が“dynabook”ではない理由山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」(1/2 ページ)

» 2008年10月29日 09時30分 公開
[山田祥平,ITmedia]

 Netbookが活況だ。下降気味だったPCの売り上げを押し上げるほどの勢いで、ついに、複数の国産ベンダーも参入を決意した。今回は、東芝のPC第一事業部PCマーケティング部マーケティング参事を務める荻野孝広氏に東芝が考える「Netbookのありかた」について聞いてみた。

選択肢を用意するのが東芝の勤め

東芝 PC第一事業部PCマーケティング部マーケティング参事の荻野孝広氏

──海外ベンダーがNetbookで好調のようですが、その市場に東芝が参入する意図は。

荻野 東芝のNetbookとなる「NB100」には、dynabookのブランド名をつけませんでした。セカンドマシンユーザーやインターネットとメールができればそれでいいという割り切りを持って購入するユーザーのための、コストパフォーマンスを追求するモデルとしてNB100を位置付けています。

 東芝がNB100を投入することになった背景には、Netbookと呼ばれる市場が一定の規模に成長してきたことが挙げられます。もともと東芝は、小型の携帯PCを「Libretto」ブランドでやってきた実績があります。スペックを落として割り切る路線ですね。それでいてコストパフォーマンスが高い。NB100は、ノートPCのラインアップが豊富なPCベンダーがユーザーに提示する選択肢の1つとして考えてください。

 現在、Netbookの市場は一定の規模があると思いますが、その規模が、まだまだ増えるのか、それとも縮小してしまうのかなど、これから先の予測は難しいですね。ですから、今の時点では、ラインアップのすき間を埋めるモデルを用意したにすぎません。

dynabookでもなければQosmioでもない

──NB100が従来のdynabookユーザーを奪うようなことは。

荻野 製品のコンセプトやスペックを考えると、dynabookを買っていたユーザーがNB100を買うようなことがあってはならないのです。ですから、東芝も販売店もそうならないようにユーザーにdynabookとNB100の違いを説明しなければなりません。

 NB100で十分と思うユーザーは、コンピュータのリテラシーがかなり高いはずです。最初からNB100でできることに納得して選んでもらうわけです。このことを理解していないユーザーが、使い勝手の違いに購入したあとに気がついて、後悔することがないようにしなければならなりません。

 デジカメで撮影した画像の整理や印刷、年賀状作成などに役立つことを期待するユーザーは普及型のA4ノートPCを購入していましたが、NB100はマーケットの方法をこれまでのA4ノートPCと変えなければいけないんですね。販売する側も購入する側もNB100とこれまでのA4ノートPCとの違いを正しく認識しなければなりません。東芝ではdynabookシリーズとNB100のカタログとをそれぞれ別に作ります。販売店とも間違いがないように連携していくつもりです。

 ノートPCのユーザー層を増やすという点で、より小さいデバイスのユーザーからすくい上げることは重要です。MIDや携帯電話に追加する2台目需要です。また、東芝ユーザーを増やすという目的もあります。それから、東芝ユーザーの2台目という需要をこれでカバーできるという考えもあります。

──PCのことはよく分からないから、性能の高いモデルはいらないと、初心者は考えがちなのですが、もし、リテラシーの低いユーザーがNB100を購入してしまった場合でも、従来の東芝製ノートPCと同じ水準のサポートが期待できるのでしょうか。

荻野 もちろんです。東芝のブランドで出す以上、東芝のサービスを提供します。ノートPCで上から下までをすべてそろえて、サポートも充実させるというのは、限られたPCメーカーにしかできないはずです。

 少なくとも一定数のユーザーがいる限り、東芝はその選択肢を提供しようということですね。ノートPCに関しては、ある程度の規模でラインアップをそろえていますから、ユーザーが望んでいるのに選べないカテゴリーは東芝にはないはずです。ただし、NB100は、差異化商品ではなくコモディティ商品であることを、しっかりと理解していただきたいということです。

 早い段階でNetbookに興味を持ったユーザーを分析してみると、高いNetbookでもいいという選択肢はなくて、5万円で購入できるノートPCというところで評価しているようです。ですから、東芝が参入するにしても、価格帯を無視することはできません。そこはもう当然、必要条件になってくるでしょうね。

東芝が投入する「NB100」(写真=左)と、汎用A4ノートPCシリーズのdynabook TX(写真=右)。このほか、AX、CXとコモディティノートPCのを東芝はすでに展開していた。NB100はそれらのラインアップとも意味づけが異なる。ユーザーはそのことを理解したうえでNB100と接しなければならない

NB100はユーザーの自由な発想に委ねる

──NetbookによってモバイルノートPCとして使うユーザー層も広がっていくのでしょうか。

いまのところ、Librettoの最終進化形となった「libretto U100/190」は究極の携帯性にAV志向という付加価値を与えた

 気軽に持ち運びができるという点で、コンパクトなNetbookは評価されているようですね。でも、移動中に使うというよりは、移動先で使うという感じです。東芝としても、NB100でモバイルコンピューティングを提案するというよりは、モバイルコンピューティングを分かっているユーザーがNB100を選ぶと思っています。だから、東芝としてもNB100の利用シーンを提示することは考えていません。

 また、通常の個人向けノートPCのように多種多様なアプリケーションも導入されていません。その点でも、従来のdynabookラインアップとNB100はまったく違うんです。PCを分かっている人たちに使っていただきたいと考えています。

 もちろん、Librettoとも違います。あれは付加価値がありましたからね。でも、これは、メールとインターネットサービスでできることだけをカバーしていればそれでいいんです。

 家庭などで2台目のノートPCがほしいときに、台湾ベンダーのブランドを知っているようなユーザー以外は、国産ベンダーとしての東芝を選んでもらえるものと考えています(編注:インタビューをした時点で国内PCメーカーでNetbookを発表していたのはオンキヨー:ソーテックと東芝しかなかった)。デスクトップPCからの2台目需要も多いのではないでしょうか。家族がそれぞれ別の部屋でPCを使いたいといった需要ですね。この場合、価格の魅力は大きいですよ。高いモデルを購入できるユーザーばかりではないですから。

 そういう場合でも、NB100とdynabookを間違えないで購入してほしいですね。そこさえ間違わなければ、今までのノートPCユーザーとは違う層がターゲットとなるわけですから、PC市場のパイは広がるはずなんです。

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