もっとも、スティーブとはいってもジョブズではない。アップルの共同創業者、スティーブ・ウォズニアック氏のことだ。
同氏は昨年、フロリダで休暇を取っていたところ、聞いたこともない会社のCEOにいきなり声をかけられ、社外取締役になってくれと頼まれたという。そこで手渡された製品は、それまでになくクールなパソコンで、しかもその上ではウォズニアック氏のお気に入りのOS、Mac OS Xがちゃんと動作していた。
ウォズニアック氏に声をかけたこの会社の名前は米アクシオトロン。そのCEOとは同社の創業者、アンドレアス・ハース氏のことだ。ハース氏はもともとアップルでPDA製品(Newton)のチームに所属していた人物で、ペン入力型のデバイスに執着を持っており、2005年ごろからMacBookをベースに、ワコムのタッチパネル液晶を組み込んだ改造型Mac「ModBook」を開発し販売している。
最近米国では、オリジナルのインテルCPU搭載マシンに、アップルの許可なくMac OS Xをバンドルしたメーカーが、アップルに訴えられるといった話もよく聞くが、ModBookはそれとは違い、アップルが販売しているMacBookをベースに、それに付加価値のある改造をしてできあがった製品だ。
アップルの売り上げを奪うことはないばかりか、アップルがこれまで逃していた運動障害からキーボードを使えなかった層にMacを広げる点でも一役買っているため、アップル“半公認”の製品となっており、今ではガジェット好きな人や、グラフィックスデザイナー、モバイルビジネスマンなどの層でもユーザーベースを築きつつあり、アクシオトロンも大型の投資を得て株式の公開を行っている。
そのアクシオトロンは、シラー氏の講演の直後、Macworld Expo会場に設けられた巨大なブースの中で自らのイベントを開催し、最近の同社の現状を説明した。会場には100人近い人が集まった。
イベントでは、まずCEOのハース氏がModBookの動向を振り返った。以前はMacBookからModBookへの改造や販売済みのModBookの修理はすべて1カ所で行っていたが、現在は同製品のこれまでの成功により、このサービス拠点が全米21カ所にまで拡大している。
また、これまでのModBookは製品保証がない、という問題があったが、最近ではアクシオトロン自らが製品保証を行うようになった。これに加えて、今後同社ではユーザーから最も多かった3つのリクエストに応えていく予定だと明かした。
その1つめは「もっとボタンが欲しい」というリクエストだ。全面タッチ液晶(ワコム製の加圧センサ式のタブレット液晶)を採用したModBookは、本体の表面には余計なボタンがない。しかし、独自に用意したソフトウェアキーボードや「SynergyTouch」と呼ばれる操作パネルを表示して、快適なペン操作ができるようにしている。まもなくリリースされる新しいSynergyTouchでは、画面の4隅+各辺の合計8カ所をタッチして、異なる操作パネルを表示させることができるようになる。利用できるパネルの種類もかなり豊富だ。
2つめに多いリクエストは、「よりパワフルなマシンが欲しい」というもの。これに応えるべく、同社では現在、最新の15インチ版MacBook ProをベースにしたModBook Proを用意している。これまでのModBookは、半分だけMacBookの筐体を生かしていたが、ModBook Proの筐体は、完全にアクシオトロンによる作りおこしで、真っ黒でシャープな印象のデザインが特徴となっている。
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