キーボードを重視して設計したというだけあって、コンパクトボディの割にキーボードサイズには余裕がある。キーボードの形状は、隣接するキーをミスタイプしにくいように、キーとキーの間に3ミリ程度のスペースを設けた日本語86キーのアイソレーションキーボードだ。
主要キーのキーピッチは約16.5ミリとなっており、実際にキーのサイズを計測したところ、主要キーは約13.5×12ミリ、最上段のキーは約11×9ミリ、スペースバーは約39.5ミリだった。6段配列のキーレイアウトは「半角/全角」がEscの右にある点を除けばクセがなく、変則的なキーピッチになっているのはEnterの周辺と最下段のキーのみだ。
キーボードユニットは格子状の穴が開いたトップカバーに接着されているため、強めに押してもキーボード全体がたわんだり、キートップがぐらつくことはなく、底つき感もある。キーストロークは約1.2ミリと非常に浅い。軽い力で入力できるが、クリック感が乏しいようなことはなく、押している感覚があって数値の印象より打ちやすい。キーの入力音が小さいため、静粛な場所での利用もしやすいだろう。
キーがフラットな形状かつツルツルした塗装なので、ホームポジションに指を置いたときの座りは少々悪いが、キー間隔を離した設計も奏功し、ミスタイプは少なくて済み、このサイズのミニノートPCとしては確かにタッチタイピングがかなりしやすいといえる。
ただし、スペースバーのすぐ下に、クリックボタン上部の段差があるため、長時間の文章入力などでは、スペースバーを押すとこの段差に指の側面が当たるのが少し気になった(スペースバーを押そうとして、左右ボタンを押してしまうようなことはないが)。スペースバーの短さが不満ならば、VAIOオーナーメードモデルで選択できる英字配列キーボードを選ぶのも手だ。
ポインティングデバイスはスティック型で、3つのクリックボタンを備えている。タッチパッドと比べて評価が分かれるポインティングデバイスだが、最小限の指の動きで操作できることから疲れにくく、パワーユーザーには愛好家が多い。個人的にもタッチパッドよりスティックのほうが好みだ。スティックのせいで、G、H、Bのキーが削られているが、タイピングで困ることはなかった。
スティックの感度は問題なく、ボタンのクリック感もしっかりしていて使いやすいが、初期状態でオンになっているプレスセレクト機能(スティックを押すことでクリックの動作になる)の感度が高めのようで、マウスポインターをちょっと動かすつもりが、あらぬところをクリックしてしまうことが多々あった。この機能は感度を調整するか、オフにしたほうが無難だろう。中央のボタンはスティックと組み合わせてスクロール操作に利用できるほか、別の機能も割り当てられる。
入力しやすいキーボード以上にVAIO type Pの特徴といえるのが、Netbookをはるかに超える高解像度のワイド液晶ディスプレイだ。「ウルトラワイド液晶」とソニーが呼ぶ、この8型ワイド液晶ディスプレイは、1600×768ドット(ソニーはUWXGAと呼称)とかなり横長の高解像度表示が行える。アスペクト比は16:7.68となり、16:9映像を全画面表示すると、画面の左右に13ミリ程度黒帯が出るほどディスプレイは横に長い。画面解像度が1024×600ドットにとどまるNetbookと比較すると、解像度は実に2倍だ。
もっとも、画面の表示領域は約182×88ミリと広くないため、1600×768ドットの表示はドットピッチが約0.114ミリと非常に狭く、アイコンや文字がかなり小さく表示される点は注意が必要になる。FMV-BIBLO LOOX Uの1280×800ドット対応5.6型ワイド液晶ディスプレイ(ドットピッチは0.0945ミリ)よりは見やすいが、ここは好みが分かれるところだ。
個人的には、視聴距離が比較的近くなるヒザの上に本体を乗せた状態では、すぐに高精細表示がさほど気にならなくなったが、机上に置いて視聴距離が通常のノートPC並みに離れると、長時間の作業では表示の細かさに目がチカチカして疲れやすいように感じた。細かすぎて困るほどではないので、もっと長期間使用すれば、表示に慣れるかもしれない。VAIO type Pは本体の奥行きが120ミリと短いため、これに入るサイズの液晶パネルを搭載して縦の解像度は768ドットに決めると、必然的に極小のドットピッチになってしまうのは仕方がない。
なお、Windows Vistaの設定でアイコンサイズやフォントサイズ(DPIスケール)を大きくすれば見やすくなるが、一部のソフトではフォントサイズの変更に対応しなかったり、メニューのレイアウトから文字がはみ出てしまうこともあり、万能ではない。この超高精細表示は一度店頭で確認してみることをおすすめする。
とはいえ、Netbook最大の懸案事項ともいえるXGA(1024×768ドット)未満の解像度の壁を越えた高解像度表示は大いに歓迎すべきで、デメリットを補って余りあると思う。クリックボタンの右には2つのプログラマブルボタンが用意されているが、初期状態では左のボタンを押すと、デスクトップ上で開いたウィンドウを画面全体に自動整列できる。例えば、Webブラウザのウィンドウを2枚開いてボタンを押せば、各ウィンドウは横800ドットですき間なく整列するため、2つのWebサイトを並べて見比べることも容易だ。こうした芸当は、Netbookではマネできない。
表示の細かさ以外に目を向けると、液晶ディスプレイ表面はアクリルパネルで覆われた光沢タイプで、LEDバックライトを備えている。バックライト輝度は9段階に調整でき、高輝度ではないものの、これだけ高精細(つまり、各ドットが光を通す量が少ない)の液晶パネルの割には十分明るく、薄型の液晶ディスプレイを採用したNetbookの「Eee PC S101」などよりは高輝度だ。広色域ではないが、発色は自然でカラーバランスや階調性もまずまずといえる。
ただし、上下の視野角は狭いので、チルト角度の調整は正確に行うようにしたい。光沢仕様の画面は低反射処理が施されており、黒っぽい画面では照明や周囲が映り込むが、鏡のように自分の姿が映り込むことはないため、それほど気にならなかった。
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