これは理想の低価格ミニノートPCなのか!?――「VAIO type P」徹底検証(前編)ソニー初のAtomマシンが登場(1/4 ページ)

» 2009年01月08日 14時00分 公開

ウワサの“VAIO New Mobile”がついに登場

VAIO type PはワイヤレスWANもしくはワンセグ機能を標準搭載した店頭販売モデルが10万円前後、仕様をカスタマイズできるソニースタイル直販のVAIOオーナーメードモデルが7万9800円からだ

 新春早々、ソニーからビッグニュースが飛び込んできた。昨年末からVAIOのホームページにティーザー広告(予告広告)が掲載され、さまざまな憶測が飛び交っていたVAIOの新しいモバイルPCが、ついにそのベールを脱いだのだ。

 1月8日に正体が明らかにされた新製品とは、ソニー初のAtom搭載ミニノートPC「VAIO type P」。これまでAtom搭載の低価格PCは数多く登場しているが、VAIO type Pでは少し価格が高くなる代わりにNetbookとは違うプラットフォームを使用することで、ほかでは味わえない価値を数多く提供するという、ソニーらしい戦略が練られている。

 今回は1月16日の発売を前に、VAIO type Pの試作機を入手できたので、既存のNetbookとも比較しつつ、その実力をじっくりと検証していこう。なお、検証した機体はいずれも試作機なので、実際の製品とは異なる場合があることをあらかじめお断りしておく。製品概要と分解記事は以下の囲み内の記事を参照してほしい。

プラットフォームの選択が運命の分かれ目

 VAIO type Pを語るうえで重要なポイントとなるのが、Menlowの開発コード名で知られるMID(Mobile Internet Device)/UMPC向けプラットフォームの採用だ。

 CPUは、Netbook向けの開発コード名DiamondvilleことAtom N270(1.6GHz)ではなく、より小型化と省電力に注力した開発コード名SilverthorneことAtom Z520(1.33GHz)/Z530(1.6GHz)/Z540(1.86GHz)を搭載する。

 チップセットについても、2チップで構成されるNetbook向けのIntel 945GSE Expressとは異なり、1チップ構成のIntel System Controller Hub(SCH) US15Wだ。さらには、チップセットに統合されるグラフィックス機能も945GSEのIntel GMA 950に対して、PowerVRをベースとしたIntel GMA 500になる。Intel GMA 500はHD映像のハードウェアデコードによる再生支援機能を持つが、3Dグラフィックスの性能は低い。

VAIO type Pに搭載された10層基板のマザーボード表面(写真=左)と裏面(写真=右)。そのほかに複数の基板で構成されるが、このメインボードのサイズは約75×65ミリと非常にコンパクトで、本体の小型化に大きく貢献している。ボードの表面には、Atom Z500番台のCPU、1チップ構成のIntel SCH US15Wチップセット、2GバイトのDDR2-533 SDRAMをオンボードで実装する。上部中央の1番大きなチップがIntel SCH US15W、その左がAtom Z500番台のCPUだ

 このように、VAIO type PはAtom搭載とはいえ、Netbookとは似て非なる製品だ。周知の通り、Netbookではインテルとマイクロソフトが安価にAtom N270(1.6GHz)やWindows XP Home Editionを供給するのと引き替えに、液晶ディスプレイの解像度が最大1024×600ドットにとどまるなどの基本スペックに関する制約を受けることになる。それによって、メーカーは低価格でNetbookを販売できるメリットが得られる半面、競合製品にスペックで差を付けることが難しくなるデメリットも抱えてしまう。

 そこでソニーは少々割高になるのを承知で、こうした制約を受けず、メーカーが自由に製品を開発しやすいMenlowを選択したというわけだ。この選択により、Netbookでは実現が困難なレベルのコンパクトボディや、1024×600ドットを大きく上回る高解像度ディスプレイの搭載を可能としている点に注目してほしい。一方で、パフォーマンス面はNetbookに比べて不利になる部分も少なくないが、その検証結果は後編で紹介する。

Netbookではなく“ポケットスタイルPC”という新提案

 さて、VAIO type Pの製品コンセプトは、高機能化が進むケータイとともに手軽に持ち出してリッチなインターネット環境が楽しめる“ポケットスタイルPC”というもの。ソニーは、VAIO type Pが既存のNetbookと同一視されないように、この造語を前面に押し出したプロモーションを行っている。ちなみに「P」の文字には、Private、Personal、Pocketable、Premiumといった意味を込めたという。

 昨今は携帯電話が普及し、誰でも外出先で手軽にメールやWebコンテンツが利用できるようになった。また、より高度な機能を求める向きにはスマートフォンといった選択肢もある。このように進化したケータイがPCに近づいていく中で、PCを携帯利用してもらうためにソニーが考えたのは、薄さや軽さ、スタミナに配慮しながらも、PCの強みである「キー入力のしやすさ」と「情報表示能力の高さ」を重視するという方針だ。

ソニーは男女がジーンズのポケットから颯爽(さっそう)とVAIO type Pを取り出すイメージ写真を使って、ポケットスタイルPCという新コンセプトをアピールしている。もちろん、実際にはボディの幅があるため、ジーンズのポケットに入れるのは難しいし、仮に入ったとしても耐久性の面からおすすめできない

ボディの設置面積ギリギリまで使ってキーボードを敷き詰めた“ジャストKeyboardサイズ”のボディを採用

 こうしてイチから設計されたのが、ソニーが“ジャストKeyboardサイズ”と呼ぶ横長のボディデザインだ。キーボードのサイズを十分確保したうえで、それ以外のスペースは極力削っており、本体の一面にキーボードが敷き詰められている。現状でMenlowを用いたWindows搭載PCとしては、デルの「Inspiron Mini 12」、富士通の「FMV-BIBLO LOOX U」、ウィルコムの「WILLCOM D4」が挙げられるが、そのどれとも違った個性的なデザインだ。

 パームレスト部がばっさりと省かれ、ポインティングデバイスにスティック型を採用したスタイルは、1998年に投入された名機「VAIO PCG-C1」の復活を思わせる。ただ、ボディの薄さと軽さはPCG-C1の時代からぐんと進化した。本体サイズは厚さが19.8ミリの薄型で、横幅は245ミリ、奥行きは120ミリと、ダイレクトメールなどに多いA4用紙が3つ折りで入る長形3号の定形サイズ封筒(235×120ミリ)と同程度の設置面積におさっている。ティーザー広告のイメージ画像に使われた小さな封筒は、ボディサイズを表現していたのだ。

 コンパクトなサイズに加えて、ボディの前面から背面までが19.8ミリ厚で統一されたフラットボディは、バッグの中にもキレイにしまえる。側面は角を丸めた「カプセルシェイプ」になっていることもあり、小脇に抱えたときも手によくなじむ印象だ。ソニーはVAIO type Pの開発にあたり、キーボードの使い勝手や持ちやすさなどを最適なバランスに保てるように、数多くのモックアップを作ってデザインを磨き上げていったそうだが、確かに絶妙なサイズ感と思う。

開発時にはさまざまなモックが作られ、ボディのサイズやデザインが検討された。左の写真の箱に入っているのは、VAIO type Pのボディカラーのもとになった天然石だ

 次のページでは、重量やバッテリー駆動時間、手の込んだ外装を見ていこう。

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