これは理想の低価格ミニノートPCなのか!?――「VAIO type P」徹底検証(後編)真の実力が明らかに(4/6 ページ)

» 2009年01月15日 11時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]

Windows Vistaの各種動作とインスタントモードの起動時間をチェック

 これまではベンチマークテストプログラムでシステムの性能を検証してきたが、実際にWindows Vistaを操作した場合のレスポンスもチェックしていこう。

 ここではセットアップを済ませて余計なソフトなどは入れずに1日程度インターネット接続に試用した程度の状態で、Windows Vistaの起動、休止状態への移行と復帰、スリープへの移行と復帰、シャットダウン、インスタントモードの起動と終了にかかる時間を計測してみた。

 Windows Vistaの起動時間は電源ボタンを押してから「ようこそ」画面が出るまでの時間と、デスクトップ画面が表示されてウェルカムセンターが起動するまでの2段階で計測している。インスタントモードの起動時間はGUIが完全に表示され、ユーザーの操作が可能になるまでの時間だ。これらの動作時間はバラツキがあるので、各計測は5回以上行い、大幅に時間がかかるようなイレギュラーなケースを除いたうえで平均値を採用した。

Windows Vistaの各種動作とインスタントモードの起動/終了時間

 結果は仕様によって、多少の差が出た。いずれにせよ、Vistaの起動やシャットダウンは時間がかかるので、高速に移行と復帰が可能なスリープやインスタントモードをうまく活用するのがよいだろう。今回のテストは購入直後に近い状況なので、ユーザーがアプリケーションを追加したり、長期間使った場合はかなり時間が変わってくるはずだ。

 一通り触った感想を述べると、VAIO type Pを購入するうえで妥協が入る部分が操作のレスポンスといえる。Windows XP Home Edition(SP3)を搭載した低価格なNetbookはOSが結構キビキビと動作するので、VAIO type Pもこれと似たレスポンスだろうと考えるのは早計だ。Menlowプラットフォームに加えて、OSにWindows Vista Home Basic(SP1)を採用したことの負担はやはり大きい。

 テスト結果では見えてこないが、特に店頭モデルでは、メニューやウィンドウを開く動作のたびに待たされ、ウィンドウは最初に輪郭が描画されてからワンテンポ遅れてアイコンや文字が映し出されるといった具合になる。通常はそれなりに操作できても、OSやソフトウェアの自動アップデートも含め、Vistaではバックグラウンドで別のタスクが走りがちなので、突然レスポンスが低下してしまうこともあった。また、VAIO type Pは画面解像度が高いため、つい多数のアプリケーションやウィンドウを開きたくなるが、これももたつきの原因となるので慎重さが求められる。VAIO独自のコンテンツ解析機能など、OSとソフトウェアの各種設定を見直すのも手だ。

 昔から超小型のPCに慣れ親しんだユーザーであれば、このゆったりした動作も折り込み済みで購入するかもしれないが、多くの人にとってVAIO type Pの使用感はガマンが必要だろう。したがって、少しでも快適にVistaを動かしたいならば、直販モデルでCPUとデータストレージのアップグレードを検討すべきだ。Atom Z540(1.86GHz)とSSDを搭載したハイエンドの構成では、店頭モデルよりVistaのもたつきが緩和され、印象が変わってくる。データストレージをSSDに変更した構成は、店頭モデルと使い比べると多少レスポンスの向上が見られるが、大差ではなく、CPUと同時にアップグレードするのが得策といえる。

HD動画のハードウェアデコードに対応

8型ワイド液晶ディスプレイは横長なので、16:9映像を全画面表示すると、画面の左右に13ミリ程度黒帯が出る

 一方、Netbookよりもパフォーマンスで有利な面もある。それがIntel SCH US15Wチップセットに統合されたグラフィックス機能のIntel GMA 500が持つHD映像のハードウェアデコードによる再生支援機能だ。WMV、MPEG-4 AVC/H.264、MPEG-4、MPEG-2といった動画を対応ソフトで表示する場合、CPUに負荷をかけずに再生できるのは見逃せない。

 VAIO type PではVAIO Media plus、Windows Media Player 11(WMP 11)、Internet Explorer 7、WinDVD for VAIO、Windows Media Center(Vista Home Premium選択時)といった動画再生対応アプリケーションが用意されており、これらで動画再生支援機能が使えるとのこと(インスタントモードは非対応)。ただし、このハードウェアデコード機能は万全ではなく、アプリケーションによって細かな制限(ウィンドウ表示と全画面表示でパフォーマンスが異なるなど)や再生支援が有効なファイルに違いがある点は注意が必要だ。同じファイルフォーマットでも内容によって再生品質が異なる場合があるため、実際に再生してみないと分からない部分もある。

VAIO type Pの動画再生性能
ファイル形式 MPEG-2 WMV H.264 MPEG-4
WinDVD for VAIO 全画面表示でコマ落ちの場合あり
Windows Media Player 11 全画面表示でコマ落ちの場合あり 全画面表示でコマ落ちの場合あり
Windows Media Center 全画面表示でコマ落ちの場合あり
Internet Explorer 7 CPU高負荷時に制限される
VAIO Media plus 全画面表示でコマ落ちの場合あり 全画面表示でコマ落ちの場合あり 仕様上Bフレームを落とす

※これらはソニー提供のテスト結果(いずれもコンテンツ保護がない動画ファイル)。実際は同じファイルフォーマットでも内容によって再生品質が異なる場合もある


 例えば、1080/24pのWMV9ファイルをWMP 11で全画面再生したところ、まったくコマ落ちせずに音声も含めて快適に再生できたが、VAIO Media plusの全画面表示ではコマ落ちが少し見られた。H.264については、WMP 11で全画面表示するとファイルによって再生できたりコマ落ちすることがあり、VAIO Media plusで表示するとBフレームが仕様上省かれて再生されるといった具合だ。そのほか、MPEG-2はWMP 11とVAIO Media plusで全画面再生するとコマ落ちするが、WinDVD for VAIOでは再生でき、Internet Explorer 7ではWMVのハードウェアデコードに対応しない。

 ちなみに動画のハードウェアデコード機能はチップセットに搭載されたものなので、Atom Z540(1.86GHz)を搭載した構成でもHD映像の再生パフォーマンスに大きな違いは見られなかった。

1080/24p(8Mbps)のWMV9ファイルを再生した場合のCPU使用率。左から、Atom Z520(1.33GHz)と60GバイトHDD搭載の店頭向けワンセグモデルVGN-P70H/W、Atom Z520(1.33GHz)と64GバイトSSD搭載の直販モデルVGN-P90HS/R、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSSD搭載のハイエンドな直販モデルVGN-P90HS/Bの結果だ。CPU使用率は瞬間的に90%を超えることもあったが、45〜60%くらいで推移していた

 試しに、YouTubeニコニコ動画も見たところ、標準的な画質のコンテンツであれば実用レベルで再生可能で、ニコニコ動画のエコノミーモードなどでは快適に視聴できる動画も多かった。ただし、高解像度の動画やニコニコ動画でコメント数が非常に多い場面では表示がもたついたり、視聴が厳しい場合もある。

YouTubeでSorenson H.263/320×240ドット/30fps/300kbpsの動画を再生した場合のCPU使用率。左から、Atom Z520(1.33GHz)と60GバイトHDD搭載の店頭向けワンセグモデルVGN-P70H/W、Atom Z520(1.33GHz)と64GバイトSSD搭載の直販モデルVGN-P90HS/R、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSSD搭載のハイエンドな直販モデルVGN-P90HS/Bの結果だ。CPU使用率はおおむね60〜70%くらいを推移している

ニコニコ動画でOn2 VP6/320×240ドット/60fps/300kbpsの動画を再生した場合のCPU使用率。左から、Atom Z520(1.33GHz)と60GバイトHDD搭載の店頭向けワンセグモデルVGN-P70H/W、Atom Z520(1.33GHz)と64GバイトSSD搭載の直販モデルVGN-P90HS/R、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSSD搭載のハイエンドな直販モデルVGN-P90HS/Bの結果だ。CPU使用率は70〜90%程度となっており、コメント数が多い場面では瞬間的に100%に達することもある

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