これは理想の低価格ミニノートPCなのか!?――「VAIO type P」徹底検証(後編)真の実力が明らかに(3/6 ページ)

» 2009年01月15日 11時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]

仕様の異なる3台のVAIO type Pを徹底比較する

 薄型軽量ボディに豊富な機能を凝縮しているのが魅力のVAIO type Pだが、気になるのは省電力に重きを置いたMID/UMPC向けプラットフォーム(開発コード名:Menlow)の採用がパフォーマンスにどのような影響を与えているかだ。ここでは、仕様の異なる3台の試作機を用意し、横並びで各種テストを実施した。

 用意した3台の試作機は、Atom Z520(1.33GHz)と60GバイトHDD搭載の店頭向けモデル、Atom Z520(1.33GHz)と64GバイトSSD搭載のソニースタイル直販VAIOオーナーメードモデル、そしてAtom Z540(1.86GHz)と128GバイトSSD搭載のハイエンドなVAIOオーナーメードモデルだ。いずれもワイヤレスWAN+GPS機能はなく、ワンセグチューナーを装備している。店頭向けモデルのデータストレージをHDDからSSDに変更した場合と、直販モデルで購入できる最上位のCPUとデータストレージを選択した場合の性能差に注目してほしい。

 3台の仕様表とデバイスマネージャの画面は以下に示した。重量を計測したところ、最も重い店頭モデルでも約614グラム、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSSDを備えたモデルでは約592グラム、Atom Z520(1.33GHz)と64GバイトSSDを搭載したモデルでは約585グラムと、公称値での最軽量構成時重量(約588グラム)を下回る軽さだった。この薄さと軽さはやはり魅力だ。

今回テストした「VAIO type P」の試作機
製品名 VGN-P70H/W(店頭モデル) VGN-P90HS/R(直販モデル1) VGN-P90HS/B(直販モデル2)
OS Windows Vista Home Basic(SP1)
カラー クリスタルホワイト ガーネットレッド オニキスブラック
CPU Atom Z520(1.33GHz) Atom Z540(1.86GHz)
メインメモリ 2Gバイトオンボード(DDR2-533 SDRAM)
チップセット Intel System Controller Hub(SCH) US15W
液晶ディスプレイ 8型ワイド(1600×768ドット)
データストレージ 60GバイトHDD(Ultra ATA、4200rpm) 64GバイトSSD(Serial ATA) 128GバイトSSD(Serial ATA)
光学ドライブ
ワンセグ 搭載
ワイヤレスWAN+GPS
Bluetooth 搭載(Bluetooth 2.1+EDR準拠)
ノイズキャンセリングヘッドフォン
Webカメラ 搭載(MOTION EYE 有効画素数31万画素)
キーボード 日本語配列86キー
バッテリー 標準バッテリー(7.4ボルト 2100mAh)
ディスプレイ/LANアダプタ 付属
ウォールマウントプラグ 付属
オフィススイート
セキュリティ対策ソフト マカフィー・PCセキュリティセンター(90日期間限定版)
PDF作成ソフト
日本語入力ソフト ATOK 2008 for Windows(30日期間限定版)
保証サービス 1年間保証 3年間保証<ベーシック>
本体サイズ 245(幅)×120(奥行き)×19.8(高さ)ミリ
実測での重量 約614グラム 約585グラム 約592グラム
販売価格 実売10万円前後 11万7300円 15万7300円

Atom Z520(1.33GHz)と60GバイトHDDを搭載した店頭向けワンセグモデル「VGN-P70H/W」のデバイスマネージャ画面。HDDは東芝の「MK6028GAL」で、1.8インチ/5ミリ厚のParallel ATA接続HDD(ZIFコネクタ仕様)だ。無線LANはAtheros AR928Xを装備する。「Sony-cipher-device」の「Sony CXD9192」はワンセグチューナー、「Sony Firmware Extension Parser Device」と、「Sony Programmable I/O Control Device」は独自機能用のデバイスだ

Atom Z520(1.33GHz)と64GバイトSSD搭載の直販モデル「VGN-P90HS/R」のデバイスマネージャ画面。SSDはSerial ATAタイプでSamsungの「MMCRE64GFMPP-MVA」とあり、MLCタイプのSSDだ

Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSSD搭載の直販モデル「VGN-P90HS/B」のデバイスマネージャ画面。SSDはSerial ATAタイプでSamsungの「MMCQE28GFMUP-MVA」とあり、こちらもMLCタイプだ

Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア

 まずはVista標準の性能評価機能であるWindowsエクスペリエンスインデックスを実施した。各モデルのスコアは以下の通りだ。

Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア。左から、Atom Z520(1.33GHz)と60GバイトHDD搭載の店頭向けワンセグモデルVGN-P70H/W、Atom Z520(1.33GHz)と64GバイトSSD搭載の直販モデルVGN-P90HS/R、Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSSD搭載のハイエンドな直販モデルVGN-P90HS/Bの結果

 Atom Z520(1.33GHz)を搭載した2台はプロセッサのスコアが低く、総合スコアは「2.7」にとどまった。店頭モデルの60GバイトHDDを64GバイトSSDに変更することで、プライマリハードディスクのスコアが「4.1」から「5.8」に跳ね上がっている点に注目したい。

 Atom Z540(1.86GHz)と128GバイトSSD搭載のハイエンド仕様では、プロセッサのスコアが「3.4」まで向上し、ゲーム用グラフィックスの「3.0」が最も低い値となった。Intel System Controller Hub(SCH) US15Wチップセットに統合されたグラフィックス機能のIntel GMA 500は3D描画性能が低いため仕方がない(代わりに後述するHD動画の再生支援機能がある)。

 その一方で、Windows Aeroのグラフィックスパフォーマンスを示すグラフィックスのスコアは、3台とも「5.9」と最高点をマークしているが、これはWindowsエクスペリエンスインデックスがMenlowのグラフィックススコアを正しく表示できない問題によるもので、正しい値ではない。実際、直販モデルでは32ビット版Windows Vista Business(SP1)/Home Premium(SP1)も選択可能だが、VAIO type PではWindows Aeroをオンにするとパフォーマンスが低下するため、ソニーは公式にWindows Aeroを使用不可としている。

PCMark05、3DMark05、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコア

 次にPCMark05、3DMark05、FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3といった定番のベンチマークテストプログラムを実行した。各テストは、ACアダプタを接続し、電源プランは「高パフォーマンス」に設定している。

 PCMark05とFF XIベンチ3の結果は参考までに、Atom N270(1.6GHz)と2Gバイトメモリ、16GバイトSSDを備えた構成のASUS製Netbook「Eee PC S101」と、Atom N270(1.6GHz)と2Gバイトメモリ、160GバイトHDD(2.5インチ/5400rpm)を備えたASUS製Netbook「Eee PC 1000H-X」の結果も併記した(テスト時の画面解像度の関係で3DMark05の結果は省いた)。ただし、これら2台のOSはWindows XP Home Edition(SP3)であり、条件が完全に一致していない点は注意してほしい。

PCMark05の結果

 PCMark05の結果を見ると、仕様の違いがそのままパフォーマンスの差につながっているのが分かる。店頭モデルのVGN-P70H/Wは総じて控えめな結果だが、64GバイトSSDを選択した場合はHDDのスコアが4倍以上も向上した。さらにCPUをAtom Z520(1.33GHz)から40%クロックがアップするAtom Z540(1.84GHz)に変更することで、CPUスコアと総合スコアは1.5倍程度まで高まっている。64GバイトSSDと128GバイトSSDの性能はほぼ同じだ。

 Atom N270(1.6GHz)とIntel 945GSE Expressチップセットを組み合わせたNetbookとの比較では、性能より省電力を優先させた1チップ構成のIntel SCHチップセットを選択したことで分が悪く、特にグラフィックス面が不利になる。CPUとストレージのスペックで下回る店頭モデルはメモリ以外のスコアで水をあけられてしまった。

 ただし、Atom Z540(1.84GHz)と128GバイトSSDを装備したハイエンドな構成では、CPUとHDDのスコアがNetbookの中でも高速なEee PC S101を上回った点に注目したい。パフォーマンスにこだわるならば、CPUのアップグレードは非常に有効だ。

左から3DMark05(1024×768ドット)、FF XIベンチの結果

 これまでの検証で結果は容易に想像できるが、3DMark05とFF XIベンチの結果については低調だ。DirectX 8.1世代の少々古いテストであるFF XIベンチの結果を見ても、解像度が低いLow設定で1000に届いておらず、プレイできるレベルに達していない。

 性能の差が大きかったデータストレージの違いについては、PCMark05のHDD関連テストと「CrystalDiskMark 2.2」(ひよひよ氏作)で詳しく調べてみた。こちらも参考までにEee PC S101とEee PC 1000H-Xの結果を併記している。

 PCMark05のHDD関連テストは、XP Startup(Windows XPの起動をトレース/データのリードが中心)、Application Loading(アプリケーション6種類の起動をトレース/リードが中心)、General Usage(WordやIEなど標準的なアプリケーションの使用をトレース/リード60%、ライト40%)、Virus Scan(600Mバイトのウイルススキャン/データのリードが中心)、File Write(680Mバイトのファイル書き込み/ライト100%)の5つで構成される。CrystalDiskMark 2.2はシーケンシャル/ランダムのリード/ライト性能を計測するテストだ。

左から、PCMark05のHDD関連テスト、CrystalDiskMark 2.2のリード/ライトの結果

 結果はすべての項目で64Gバイト/128GバイトSSDが60GバイトHDDを大きく上回った。VAIO type PのHDDは回転数4200rpmの1.8インチタイプなので、こうして並べてみると遅さが目立つ。テスト結果に多少のバラツキはあるが、64Gバイトと128GバイトのSSDはほとんど同じ性能と見てよいだろう。Eee PC S101のSSDを比較した場合、データのリード速度ではわずかに劣るものの、ライト速度では勝っており、全体的にバランスよく高速な結果となっている。

 レビュー前編分解記事で触れた通り、VAIO type PはHDDの接続インタフェースがParallel ATAなので、SSDはSerial ATA/Parallel ATA変換アダプタを介してマザーボード上の専用端子に接続されている。これが性能面で多少のボトルネックになることが懸念されたが、テスト結果を見る限り、十分なパフォーマンスが得られた。

 直販モデルで選択できる64Gバイト/128GバイトSSDはパフォーマンスに加えて、耐衝撃性と静音性の面でも1.8インチHDDより有利なので、購入時にはCPUのアップグレードと併せて積極的に検討したいところだ。

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