以上、VAIO type Pをじっくりと検証したが、長所と短所が非常にはっきりしており、VAIOらしい切れ味の鋭い新コンセプトのミニノートPCという印象を受けた。安易にNetbookの流行に乗らず、別の提案をしてきたところに、長年PCの小型化に取り組んできたVAIO開発陣のプライドが感じられる。
その長所は何といっても、奥行き120ミリ、厚さ19.8ミリ、最軽量の構成で重さ約588グラムという小型軽量のフラットボディと、底面までネジが1本も見えない洗練されたデザイン、そしてこのコンパクトボディにタッチタイピングも十分可能なサイズのキーボードを敷き詰めたことだ。モバイル利用を促進する地図サービスとの連携や、バッテリー駆動時間が長めに確保されているのもいい。
一方、1600×768ドット表示の8型ワイド液晶ディスプレイはミニノートPCらしからぬ高解像度で非常にひかれるのだが、同時にドットピッチが狭すぎて表示が見にくくなる欠点も抱えており、万人向けとはいいがたいだろう。また、ファンレス設計により手に入れた静粛性も魅力だが、その半面、ボディが発熱しやすいため一長一短ではある。そして、最も注意すべきは、やはりMenlowプラットフォームとWindows Vistaの組み合わせによる操作レスポンスの鈍さだ。HD動画のハードウェアデコード機能という武器があるとはいえ、一般的な用途でより低価格なNetbookにレスポンスで譲るのは惜しい(Netbookが価格の割に高性能過ぎるともいえるのだが)。
とはいえ、今回試用していくうちに、こうして指摘した短所は長所の前にかなりかすんでしまったのも事実だ。このボディの携帯性と入力環境のバランス感覚は実に素晴らしい出来栄えで、開発段階でモックアップを多数作って吟味しただけのことはある。抜群の持ち運びやすさは、手ぶらで出かけたいときや荷物が多いときでも常に携帯する気にさせるため、結果的に外出先で活用する機会は普段使っているモバイルノートやNetbookより明らかに増えた。この差はモバイルPCにとって非常に大きいのではないだろうか。ソニーが“手ばなせないPCへ――ポケットスタイルPC”と語るのも理解できる(ジーンズのバックポケットに本体を突っ込んだ広告は少々やり過ぎだとも思うが)。
VAIO type Pは非常に“とがった”製品だけに、購入前に実機に触って確認することを強くおすすめしたい。ここでボディは気に入ったが、操作感が不満というならば、VAIOオーナーメードモデルによるCPUとデータストレージのアップグレードという道がある。となると、10万円以上の予算を覚悟しなければならないので、“低価格”ミニノートPCというカテゴリーからは完全に外れてしまうが、それだけの価値を見い出せるモデルだと確信した。実際、Netbookの台頭を意識して価格は低めに設定されているが、中身を見れば分かる通り、コストをかけて細部まで作り込まれており、そういった意味ではむしろコストパフォーマンスが高い。
今回の記事タイトルは周囲の期待度を反映して「これは理想の低価格ミニノートPCなのか!?」と付けたが、個人的な結論は「必ずしも“低価格”ではないが、予算があれば理想にかなり近づけられるミニノートPC」というものだ。現在ミニノートPCの購入を検討しているならば、安価なNetbookもいいが、ぜひVAIO type Pをチェックしてソニーの底力を体感してほしい。
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