“初心者お断り”の超小型Linuxマシン「本(Ben)NanoNote」をいじり倒すこいつは楽しませてくれそうだ(1/3 ページ)

» 2010年04月01日 12時15分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

「OpenMoko」と「本(Ben)NanoNote」の関係

 折しもソフトバンクからAndroid携帯が発表されたばかりだが、先進的なユーザーインタフェースやセンスのいいデザインで絶大な人気を誇るアップルの「iPhone」と今後人気を二分すると思われるのがGoogleのAndroid携帯だ。AndroidはLinuxをベースとしたオープンなライセンスのプラットフォームであり、多くのベンダーからAndroid搭載製品が登場することは間違いない。

 しかし、それ以前からオープンソースによる携帯プラットフォームは存在していた。それが「OpenMoko」だ。OpenMokoもLinuxをベースとしている点はAndroidと同じだが、ウインドウシステムに「X.Org」、ウインドウマネージャに「Matchbox」を採用するなど、Javaに特化したAndroidに対して、よりオープンなものを目指した。そうして、2007年9月に初めて一般向けにOpenMoko搭載携帯である「FIC Neo1973」を、2008年7月には後継機の「Openmoko Neo FreeRunner」を発売した。しかし、すでにスマートフォン市場はiPhoneとAndroidに集約されつつあり計画は頓挫、OpenMokoもレイオフに踏み切ることになった……というのがこれまでの粗筋。

 そして元OpenMokoの従業員たちが立ち上げた会社Qi(气) Hardwareの最初のプロダクトが「Ben NanoNote」というわけだ。OpenMokoの高すぎた目標、製品リリースまでに時間がかかりすぎて機を逃したといった反省からか、大胆な計画を実行に移している。それはすべてをオープンにし、ともかくまずは製品を出す、それからコミュニティの力によって製品(ハードウェア)自体も仕上げていく、というものだ。この計画から生み落とされた第一世代が今回の「本(Ben) NanoNote」だが、当然ながら後期のものほど多機能になっていくことが予想されるし、まだまだ荒削りな部分は多いため、この第一世代を購入しようという人がどれだけいるかは分からない。しかし、「祭り」は早く参加したものほど楽しみが多いのもまた事実だ。「フルキーボードを搭載したクラムシェル型オープンソースLinux携帯機」といえば“大本命”が控えてはいるが、まずは本(Ben)NanoNoteで楽しむこととしよう。

本(Ben)NanoNoteはすべてがオープンソースで公開されている

ハードウェアスペックをチェック

 本(Ben)NanoNoteは超小型Linuxマシンだ。126グラムという段違いの軽さから推測できると思うが、PCの延長として考えるとおそらく実物よりも大きく想像してしまうのではないだろうか。本(Ben)NanoNoteはその出自からも分かるとおり、携帯電話を祖としている。携帯電話から電話の機能を外し、クラムシェル型にしてフルキーボードをつけた、といったほうが近い(VAIO type Pと比較するとその異様な小ささが分かる)。

iPhoneと並べたところ。ボディサイズはPCというより携帯電話に近い

本体右側面にminiUSBコネクタを搭載する。B型なので周辺機器は接続できない。左側面にはmicroSDスロットがある。端子が上についており、microSDカードは裏返して装着することになる

 キーボードはキーがやや重く、長文以前に長いコマンドやパスを打つのも一苦労する。また、キートップの面積を確保するためにキー数が少なくなっており、複数の修飾キーを併用して文字入力を行うことになる。文字入力用の修飾キーとしてはSHIFT(↓)のほか、Fn、赤↑がある。これらのキーは左下に集められており、そのために右から上にかけて同時押しの対象キーが配置されている。

キーボードはピッチ8.8ミリで、キーの同時押しを多用する必要がある。そのわりにナゾの「气」キーやVolキーなど、削れそうなものもあるのだが……

 特に注意が必要なのが数字キーだ。本(Ben)NanoNoteのキーボードは基本的には10列5段だが、その上にファンクションキーが8個(スピーカと干渉する左端2個分が省略されている)並ぶ。ファンクションキーを除いて5段であれば一般的、と思うところだが、実際には一般的なフルキーボードの配列である11〜13列に足りないため、その分が4段目に回り込む形となり、本来1段目を占める数字キーはFnキー併用での入力となっている。

 テンキーのないノートPCでもNumLockを有効にすることで、テンキーに近い形で数字が入力できるが、本(Ben)NanoNoteではNumLockと異なり、同時押しで入力しなくてはならない。なかなかに“ヘビィ”な使い心地だ。

 また、本(Ben)NanoNoteには無線LAN機能は搭載されておらず、通信を行う場合にはUSBケーブルでPCと接続し、Ethernet over USBを利用する。搭載されているUSBはminiUSB-B、つまり、本(Ben)NanoNoteは周辺機器側となる。NanoNoteにUSB無線LANアダプタやUSBメモリなどのUSB機器を接続することはできないので注意してほしい。

 その一方で外部記録装置用として用意されているmicroSDHCスロットはSDIOに対応しており、単なるストレージ以外にも利用が可能だ。今のところ、SPECTECのmicroSD型802.11b/g無線LANアダプタ「SDW-823」の動作が確認されている。

 底面のふたを外すとバッテリーが見えるが、これは携帯電話のバッテリーそのものだ。実際、Nokia携帯の一部機種のバッテリーと互換性があることが確認されている。バッテリーを外すとその下には一部に穴の開いたシールが見える。この穴から見えている端子はショートさせることでUSBデバイスとしてPC側から認識されるブート用と、シリアル出力用だ。まるで「これくらい用意しておけば……後は分かるな?」と言わんばかりの設計である。

バッテリーを外したところ。シリアル出力とUSBブート用端子が見える(写真=左)。購入は販売を請け負っているsharism.ccから。FedEx Priorityだと3〜4日で到着した(画面=右)

 そのほかのスペックについては下の表を見てほしい。

Ben NanoNoteの主な仕様
CPU Xburst Jz4720(MIPS互換)
動作周波数 336MHz
ディスプレイ 3型カラーTFT
解像度 320×240ドット
表示色数 1677万色
本体サイズ 99(幅)×75(奥行き)×17.5(高さ)ミリ
重量 126g(バッテリー含む)
RAM 32MB Synchronous DRAM
内蔵ストレージ 2GB NAND flash memory
外部記録装置 microSDHCスロット
インタフェース miniUSB(B)USB2.0
キーボード 58キーQWERTY配列
音声出力 スピーカおよびヘッドホン端子
マイク入力 あり
バッテリー 850mAh リチウムイオンバッテリー

触ってみよう

起動時に表示されるOpenWRTのロゴ

 本体にバッテリーを装着し、USBケーブルでPCと接続すると充電が始まる。充電中は右側面のLEDが赤く点灯する。キーボード右上のパワーボタンを数秒間押すとブートが始まり、本(Ben)NanoNoteのOSであるOpenWRTのロゴ画面が表示されるはずだ。OpenWRTは元々ルーター用のオープンな組み込みシステム向けLinuxだったが、OpenMoko携帯のほか、NASなどにも利用されるようになっている。

 しばらく待つとEnterキーを打つように求められる。指示に従ってキーを押すとそのままrootでログインする。OpenWRTのロゴ画面は自動的には消えず、このままだと3行程度しか表示領域がないので、

# clear

と入力するか、Ctrl+Lで画面をクリアする。

 いったんログインしてしまえばあとは通常のLinuxマシンと同じだ。本(Ben)NanoNote用のソフトウェアはダウンロードサイトから入手できる。本(Ben)NanoNoteにソフトウェアをインストールする最も簡単な方法は、PCにソフトウェアをダウンロードし、microSDカードに保存して本(Ben)NanoNoteに入れることだ。

OpenWRT公式サイト(画面=左)。本(Ben)NanoNote用アプリケーションダウンロードサイト(画面=右)

 なお、microSDカードのマウントポイントは“/card”だが、OSイメージのバージョンによっては自動マウントされないことがある。その場合は

# mount /dev/mmcblk0p1 /card

でマウントさせればいい。下にソフトウェアのスクリーンショットをいくつか掲載しておこう。

GMUのダウンロードページは非常に分かりづらい。画面の赤枠のリンクが正しいダウンロードリンクだ(画面=左)。Dmenuはグラフィカルなメニュー。ただし、ここに見えているアイコンはA320からのポーティングであり、すべてが動作するわけではない(画面=中央)。音楽プレーヤーgmu(画面=右)

テキストベースのアクションゲームASCIIpOrtal(画面=左)。FPSゲームQuake(画面=中央)。ローグ型ゲームPOWDER(画面=右)

spoutはものすごい勢いで何かが吹き出るゲームだ(画面=左)。実はアクアプラスの携帯ゲーム機「P/ECE(ピース)」のゲーム部門大賞受賞作をポーティングしたもの(画面=中央)。spoutの作者kuni氏のサイト(画面=右)

辞書ソフト「StarDict」。UnifontのWenQuanYi(文泉驛)をインストールすれば日本語表示も可能だ(画面=左)。StarDict用の辞書ファイルはStarDictフォーラムからダウンロードできる(画面=右)

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