DVDで十分? またまたご冗談を――「BDR-S05J」で始めるBlu-ray生活“BL憂いならパイオ”のワケ(2/2 ページ)

» 2010年04月28日 11時00分 公開
[瓜生聖,ITmedia]
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「12倍速BD-R」の性能が持つ意味

パナソニックとソニー製の6倍速BD-Rメディアでは12倍速での書き込みが可能。CAV方式のため平均速度としては9倍速程度になるが、BD-Rメディア1枚あたり(約22.5Gバイト)の書き込みにかかる時間は11分を切る

 光学メディアに書き込みを行う場合、書き込み開始から終了までは常に同じ速度とは限らない。円周の長い外周部のメリットを生かすため、外周に行くに従って速度を上げる方式を採ることが多い。BDR-S05Jの場合も高速な書き込みでは角速度一定となるCAV方式を採用している。そのため速度が2倍表記になったからといって書き込みにかかる時間が単純に2分の1になるわけではない。BDR-S05Jの誇る「12倍速」は、パナソニック製とソニー製の6倍速メディアを利用したときに、最外周あたりで到達する速度だが、全体の平均速度は9倍強といったところだ。

 このようにメディアメーカーが規定した記録速度を上回る書き込みができるかどうかは、パイオニアのWebサイトで公開されており、本来4倍速であるメディアでも10倍速書き込みが可能な製品もある。この場合、書き込み開始後から12倍速のときと同様の速度上昇を続け、全体の半分強あたりで10倍速に達する。その後、12倍速書き込みが可能な一部のメディアではさらに速度が上昇していくが、10倍速ではその速度を維持したままになる。もっとも、10倍速で書き込まれる範囲は広いため、平均速度も約8.6倍と比較的高く、12倍速との差はそれほど大きくはない。例えば、22.5Gバイトのデータ書き込みにかかる時間は、12倍速で約11分であるのに対し、10倍速ではそのプラス15秒程度に過ぎない。

 この12倍速書き込みは、品質の高い6倍速メディアを使用した、いわばぜいたくなシチュエーションで、かつ極めて限定的な範囲で達成される速度だ。しかし、だからといって「そんなに高価なメディアは買えないから関係ない」というわけではなく、その高いポテンシャルがあるからこそ、廉価な4倍速メディアでも10倍速の書き込みが可能なのだと考えられる。6倍速メディアと4倍速メディアでは現時点で約4倍の価格差があるが、その安価な4倍速メディアでさえ10倍速で書き込めるのは、本来12倍速のポテンシャルを持つBDR-S05Jならではのポイントだろう。これはかなりお得感が高い。

パイオニアの「BDR-S05J」対応メディア一覧。4倍速メディアの「PHILIPR04」はCAV 10倍速での書き込みをサポートしている(画面=左)。PHILIPR04のOEM先の1つである上海問屋の格安4倍速メディア「BD-R DN-BDR425(10P)」。10枚組990円で購入できる(画面=中央)。実際にDN-BDR425に書き込みをしたときのグラフ。13.5Gバイト付近で最高速の10倍速に到達しているのが分かる。BD-Rとしては格安メディアながら11分15秒で書き込みが完了しており、ドライブ自体の品質の高さを証明した(画面=右)

Blu-ray Discドライブを活用しよう

 最後にBlu-ray Discドライブの活用法をもう少し掘り下げてみよう。

 DVDにしろ、Blu-rayにしろ、記録メディアの外周部はエラーが出やすい。これは遠心力を利用した製造方法のために、最外周部では品質が低下しやすい傾向にあるからだ。また、外周部になるほど書き込み時のディスクのたわみと速度が大きくなることも一因として挙げられる。こういった理由から、ディスク容量いっぱいまで書き込むのではなく、多少マージンを残して、外周部への記録を避けるという使い方をしている人は少なくない。

 一方、2層メディアの場合は最内周から1層目の書き込みを開始し、最外周に到達したところで内周に向かって2層目へ書き込みを行う。つまり、2層メディアでは事実上、最外周への記録は避けられない。また、価格も割高であることから、データをどうしても1枚のメディアに収める必要がある場合などを除き、1層メディアを利用したほうがメリットが多い。つまり「DVD-R DLを使うよりもBD-R(1層)」ということになる。

 そこで、入手性の高いメディアの例として、DVD-R DL 8倍速(CLV8倍速書き込み)とBD-R(1層)4倍速(CAV10倍速書き込み)を比較してみると、少し乱暴な言い方をすれば、DVD-R DLよりもBD-R(1層)のほうが容量で2.9倍、バイト単価で2.3倍、バイトあたりの速度で3.5倍のアドバンテージがある、と言い換えることができるわけだ。これがBlu-ray Discドライブに移行する動機の1つになるだろう。

 DVD-Rの読み込み速度。最大16倍、平均11.8倍(画面=左)。BD-Rに書き込んだISOファイルをVirtual CloneDriveでマウントした場合の読み込み速度。最大速度は14.9倍だが、平均では12.8倍と実DVD-Rを上回る。回転速度は擬似的なものでパフォーマンスには関係しない(画面=中央)。同じファイルを外周部に置いた場合の速度。最大速度25.4倍、平均でも23.6倍と非常に高速だ(画面=右)

 既存のDVD-RやDVD-R DLのデータをBD-Rに集約する方法はいくつかある。1つは単純にフォルダ/ファイルをコピーする方法だ。また、B's Recorderにはこのような用途向けの「まとめディスク」機能があり、複数のDVDなどをBD-R 1枚にまとめることが簡単にできる。

 ほかには元のメディアをリッピングし、ISOイメージファイルに変換したうえでBD-Rに記録する方法もある。利用するときには仮想光学ドライブソフトを使ってマウントする。DVD-Videoのように、フォルダ単位でのコピーでは再生ソフトが扱いづらい場合や、メディア内のフォルダ・ファイルを個別に扱う必要がない場合などはこちらのほうが便利だろう。なお、AnyDVDなどを利用することで可能になる市販DVD-Videoのリッピングは現時点では、私的複製に限り違法ではないという見解が主流だが、Blu-rayをリッピングする際のコピーコントロール技術の回避はアンティグア・バーブーダなど一部の国を除き違法となるので注意してほしい。

BD-R上のISOファイルは仮想ドライブソフトを使ってマウントすれば本物のディスクと同様に利用可能。ただし、ブートディスクとしては利用できない(画面=左)。大阪弁護士会のIT・知的財産の法務ネット。アクセスコントロール技術であるCSSの解除は私的複製に限り法律には違反しないという見解。ただし、コピーコントロール技術であるマクロビジョンを解除することは「その結果に障害が生じないようになった複製」に該当し、私的複製ではなくなる(画面=右)

AnyDVD導入前。著作権保護されたDVD-Videoはリッピングできない(画面=左)。AnyDVDを導入するとPC側にメディアの情報が渡されるときに復号化などが行われるため、PCからはプロテクトのないDVDとして見える。なお、AnyDVD単体でもリッピングが可能だ。ただし、私的複製を超えた利用は方法にかかわらず違法になる。また、Blu-rayをリッピングする際のコピーコントロール技術の回避はAnyDVD販売元のSlySoft社があるアンティグア・バーブーダなど一部の国を除き違法となるので注意しよう(画面=右)

 また、PC用の地デジチューナーを利用する場合、タイムシフト視聴だけであればHDDでも十分だが、書き出し用メディアとしてBlu-ray Discがあるとかなり利便性が高まる。CPRM対応のDVD-RW/DVD-RAMも利用可能だが、この場合はSD画質に落ちてしまう。保存用や別の機器での視聴などのために9回のコピー+1回のムーブが可能なダビング10を有効に利用するには、データの改変(トランスコード)が行われず、録画時そのままの状態で保存できるほうがいい。

 今回取り上げたBDR-05Jは内蔵モデルだが、5インチ光学ドライブに対応したケースを使うことで、外付けドライブとしても利用できる。特にラトックシステムの「RS-EC5-U3」は、高速なUSB 3.0に対応しており、USB接続ながらBD-Rへの12倍速書き込みを実現している。その性能の高さから実売で1万円程度と割高な印象はあるが、ドライブの換装・使い回しが可能であることを考えると、長期間利用することで十分元がとれるはずだ。また、eSATA接続専用のケースなら、ドライブの性能を最大限に利用できるうえに、実売価格は3000円台からと安く、選択肢も幅広い。

地デジチューナーカードはBlu-ray Discドライブと相性のいいパーツの1つだ。写真はmini B-CASを採用したアイ・オー・データ機器の「GV-MVP/HS3」(写真=左)。次世代インタフェースであるUSB 3.0に対応したラトックシステムの5インチケース「RS-EC5-U3」。複数台のPCを所有している環境ならUSB接続の外付けドライブとして運用できる同製品は重宝する。また、USB 3.0接続時はBD-R 12倍速書き込みを実現する(写真=中央/右)


 BDR-S05Jの実売価格は約2万7000円と、Blu-ray Discドライブとしてはやや高価な部類に入る。しかし、そのぶん書き込み品質や静音性は文句なしに高い。書き込み済みメディアの品質は、ドライブとメディア双方の品質が影響してくるが、消耗品として継続購入することになるBD-Rメディアはその都度変更することはできても、ドライブはそうはいかない。書き込み品質の低いドライブを購入すると、そのぶん高品質な(高価な)BD-Rメディアを使用せざるを得ず、また、どのメディアを使っても品質は頭打ちになる。そうそう取り替えのきかないドライブこそ、多少高価でも品質の高いものを選んだほうがトータルでは安上がりになる。

 BDR-S05Jは、BD-R書き込み12倍速という“派手”なスペックに目を奪われがちだが、これはドライブの高品質を追求した結果に過ぎない。だからこそ、12倍速を利用するパフォーマンス志向のユーザーはもちろんのこと、これからBlu-rayへ移行しようと考える幅広いユーザーに対しても、自信を持って勧められる1台たり得るのだ。

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