ラトナー氏は、CPUの低消費電力化の第1歩は「CPUに電圧レギュレータを統合することだ」と説明する。ラトナー氏は、2005年の8月に開催されたIDF Fall 2005の基調講演で、現在マザーボード上に搭載している電圧変換回路(VRM:Voltage Regulation Module)をCPUに統合するCMOS電圧レギュレータに関する発表を行なった。同氏は「現在、CPUの電力リクエストに応じてオンボードの電圧変換回路を動かしていたのでは、電力効率が悪い。これをCPU上に統合すれば、単一電圧供給で、より高速に電圧を変更できるため、電力効率を15〜30%ほど向上する」という。
さらにラトナー氏は、「この技術は、2013年に市場投入する“Haswell”(開発コード名)で実装するほか、Atomについても、22ナノメートルプロセスルールと3Dトライゲートを採用する“Silvermont”(開発コード名)で同技術を採用する」と明らかにしている。
次に続くのは、ラトナー氏がIDF San Francisco 2011で披露した「ニアしきい電圧駆動技術」の実装だ。ここでいう「しきい電圧」とは、トランジスタを駆動できる最低限の電圧のことだ。トランジスタは一定の電圧を加えることでオンになり、それ以下の電圧ではオフになる。この動作を繰り返すことで、デジタル信号の“0”と“1”を生成する。しかし、現在のプロセッサでは、半導体のしきい電圧よりもかなり高い値を通常駆動電圧にしている。これは、ウエハから採れるチップごとにしきい電圧が異なることや、しきい電圧ぎりぎりの低電圧では、動作が安定しなかったりパフォーマンスがでないためだ。
そこで、Intel Labsは、Socket 7のPentium(P54C)をベースにこの技術を実装した試作プロセッサ“Claremont”(クレアモント)で、当時15ワット前後で実現していた性能を、10ミリワット以下で実現できることを示している。IDF 2011の基調講演で行ったClaemontのデモで、小型ライトに照らされた太陽電池(インテルは切手サイズと表現したが、ラトナー氏は切手にしてはちょっと大きすぎるよね、と語っていた)で駆動し、3Dゲームや動画再生を行なったが、「Claremontでは電力効率を5倍に高めているが、CPUをニアしきい電圧技術に最適化してイチから設計すれば、電力効率を10倍以上高めることも可能だ」と説明する。
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