アップルが作り出した2つの“魔法”――「iPad mini」と第4世代「iPad」を徹底検証発売直前!!(4/5 ページ)

» 2012年10月31日 10時00分 公開
[林信行,ITmedia]

使うほどに納得がいく仕様と性能

iPad miniが発表されたAppleスペシャルイベントでは、ワールドワイドマーケティング担当上級副社長のフィル・シラー氏が、「Androidタブレットにはほとんどアプリがないために、スマートフォン用アプリを利用することになる。そうしたアプリはタブレットの大画面を生かしきれていない」と批判した。これは旅情報アプリ「tripAdvisor」の画面比較。ほかに動画サイト「Vimeo」のクライアントアプリや音楽視聴サービス「PANDORA」の公式アプリ、オークションサイト「eBay」の公式アプリ、グルメ情報の「yelp!」の公式アプリなども比較していた

 iPad miniが発表されたAppleのスペシャルイベントでは、フィル・シラー上級副社長が、さまざまなWebページやAndroid用のアプリケーションをiPad miniとNexus 7で起動し、その快適さの違いを比較していた。

 そこで、誇張があるのではないかと思い、実際に筆者のほうでも試してみた。すると、アップルの公式Webページは、きちんと端末の画面サイズにあわせてうまくリサイズされるので、Nexus 7でもiPad miniでも変わらず快適に見ることができたが、ソーシャルメディアの画面など、画面サイズにあわせて表示情報が変わるWebサイトの利用では大きな差が出た。

 掲載した写真ではTwitterのプロフィールページを両端末で表示するところを比較しているが、今日でも多くのWebサイトがiPad miniが採用するXGAという画面サイズに最適化されていることが実感できるはずだ。もちろん、7型タブレットでも、スクロールなどの操作をすれば、同じ情報が読めることには違いないが、いちいちスクロールや縮小といった一手間が加わるのと、そうした操作がなくてもいきなり読み始められるiPad miniでは、日々の使い勝手に大きな違いが生まれることは簡単に想像がつくだろう。

Twitterのプロフィールページを7型Android端末とiPad miniの標準ブラウザで表示した画面。iPad miniでは2個半ほどツイートが表示されている(写真=左)。Twitterのプロフィールページの表示、画面を縦にしての比較。iPad miniでは3つのツイートの下に、最近の画像も表示されているが、7型Andoridタブレットでは……。まだ世の中の多くのWebページがXGAをターゲットにしていることが分かる(画面=右)

 このように他社の“片手持ちタブレット”と比べても、圧倒的な使い勝手の差を生み出すiPad miniだが、この製品がすごいところは、一回り大きな画面を搭載する“両手持ちタブレット”、つまり標準サイズのiPadと比べても、かなり優れたスペックを凝縮していることだ。

 本体サイズが小さくなれば、その分バッテリーサイズも小さくなるので動作時間が短くなりがちだが、iPad miniは同じ解像度の9.7型タブレットであるiPad 2と同じ10時間を維持。その一方で、背面のiSightカメラの解像度は70万画素から500万画素に大幅アップし、正面のFaceTimeカメラでも120万画素、720pのハイビジョン動画が撮れるようになった。

 これだけでもすごいが、無線LANの通信速度はiPad 2と比べて2倍速く、Bluetoothテクノロジーも音響機器で使った際の音質などが大きく向上する最新のBluetooth 4.0を搭載。これはケーブル端子が、従来の30ピンからLightningに切り替わった今ではとても重要なポイントだ(アップルは、周辺機器メーカーにBluetoothなどのワイヤレス技術をもっと活用することを強くすすめている)。さらに3GモデルではLTEにも対応した。

 なんと、Retinaディスプレイ以外は第4世代iPadにほぼ匹敵する機能を搭載したうえで、iPad 2と比べても5000円以上安い手ごろな価格を実現しているのだ。

iPad miniと第4世代iPad、どっちを使う!?

 さて、筆者は今回のレビューにあたり、第4世代のiPadとiPad miniを同時に手に入れて使っていたのだが、家にいる間の用事はほとんどiPad miniですんでしまうことに気がついた。電子書籍の閲覧もiPad miniだし、ちょっとしたWebの閲覧も、ゲームで息抜きをするのもiPad miniだ。

 それでは、iPad miniが、標準サイズのiPadを完全に置き換えてしまうかというと、そうは思えない。これまで筆者は、会議室などのテーブルの真ん中に標準サイズのiPadを置いて2〜3人で情報を覗き込むといった使い方をよくしていたが、iPad miniではそもそも本体が軽いので、見たい情報を表示したら本体を相手に手渡して回覧する、というスタイルのほうが自然だった。

163 ppiでもそれなりに見やすい解像度だが、雑誌や新聞のような大きな印刷物を縮小表示した場合には見出しの文字は読めても、本文の文字は潰れてしまう。それすらも読める鮮明さで表示してくれるのがRetina Displayであり、ここは大型なRetina Display対応iPadの大きな強みと言える

 また、iBook Authorで作られた電子教科書を試しに読んでみたところ、iPad miniでの利用でもまったく問題はないが、写真の持つ迫力やRetinaディスプレイによる文字のなめらかさを味わうとしたら、やはり第4世代iPadのほうに分がある。高精細な雑誌や新聞など、紙のオリジナルがA4版以上のものをiPadの画面サイズに表示するコンテンツでは、本文の文字が潰れて読みにくくなることもあるかもしれない(これは画面サイズ以上に解像度の違いという要因が大きい)。

iPadでは、iPhoneにしか最適化されていないアプリを起動すると、実際のiPhoneの画面より少しだけ大きめに表示されていて、そのおかげでちょっとだけ操作がしやすかったが、iPad miniでは、完全に原寸での表示になった(写真=右)

 ただ、価格も含めたバランスで見た場合、iPad miniは非常に優秀だ。それだけに、iPad miniとiPadの両方を持つ人もいると思われるが、おそらく利用時間はiPad miniのほうが圧倒的に長くなるだろう。

 iPadとiPad miniでは、それ以外にも細かな違いがたくさんある。例えば、iPadに最適化されていないiPhone専用アプリを起動した時、iPad miniでは原寸大で表示されるようになった(実はこれまでのiPadでは、原寸大より少しだけ大きめに表示されていた。おかげでキーボードなども打ちやすかったのだが……)。

 もっとも、画面サイズ的にはiPhoneに近づいたiPad miniだが、前提としているのはあくまでもiPadに最適化されたアプリケーションであって、エミュレーションのアプリは、原寸大表示をしても拡大表示をしてもやや使いづらい。このデバイスは“iPhone BIG”ではなく、すでに27万5000本にまで増えたiPadに最適化された豊富なアプリケーションを、より価格的にも、重さ的にも、サイズ的にも手軽に楽しめるようにした1台なのだ。

文字表示をベクター化し、さまざまな電子雑誌の中でも、最も鮮明な誌面を表示してくれる雑誌アプリ、Zinioでガジェット雑誌「flick!」のページめくりをしてみた。第4世代iPadではパラパラとページをめくるよりも速く、画面の高解像度表示が終了している。これに対して、iPad miniでも、ページめくりに追いついてはいるが、やはり1度、ギザギザな文字で表示され、ワンクッションおいてから表示が切り替わっている。第4世代iPadの解像度が4倍であることを考えると、これは驚くべき性能向上だ

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