“最強”カード? 「Radeon HD 7990」のパフォーマンスを検証ほぼ7970×2基(1/2 ページ)

» 2013年04月24日 15時18分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]

ようやく登場!AMDデザインのデュアル「Tahiti」カード

Radeon HD 7990

 Radeon HD 7970(開発コード名:Tahiti)のリリースからおよそ1年半が過ぎた。最近のGPUとしてはなかなか長寿命だが、AMDはまだまだこのまま突き進むつもりのようだ。およそRadeon HD 7900シリーズGPUを2基、カード上でCrossFireXを構成したのが新たに登場した「Radeon 7990」。過去に登場したRadeon HD 6990などと同じデュアルGPUカードであるが、これまでと比べるとシングルGPUのリリースからデュアルGPUのリリースまでが長くかかった印象を受ける。

 AMDは、公表するGPUの消費電力値が世代によってブレるため、公称値での比較は難しいのだが、実測値で見ると、Radeon HD 6970に比べ、Radeon HD 7970の消費電力は増加していた。Radeon HD 6000世代のころは“枯れた”40ナノメートルプロセス、Radeon HD 7000世代では新しい28ナノメートルプロセスを採用したことにより、消費電力の最適化に手間がかかったのではないかと勘ぐってしまう。

 Radeon HD 7990は満を持して登場したTahiti搭載デュアルGPUカードなのだが、実はすでにOEMメーカーからは同様のコンセプトのデュアルGPUカードはリリースされている。PowerColorの「DEVIL13 HD7990 6GB GDDR5」や、ASUSTeKの「ARES2-6GD5」は、メーカー独自にTahitiを2基搭載したデュアルGPUカードだった。

 これらは、AMD設計ではないわけだが、コードネーム的には当初よりTahitiのデュアルGPUカードに用いられる予定だった「New Zealand」が用いらていれる(なお、FirePro S10000やRadeon Sky 900などのAMD製デュアルTahitiカードもNew Zealandの呼称となり、要はNew ZealandのRadeon HDのみが特別に“Malta”の呼称で呼ばれるわけだ)。一方、AMDリファレンスデザインのデュアルGPUカードは先述のとおり「Malta」だ。ここでは、ここを明確に区別するためMaltaの呼称を用いる。それでは、Maltaの仕様を確認していこう。

2基のTahitiを搭載するMalta。カードの前部、後部に1つずつGPUを搭載する。写真右上、ブラケットのすぐ後ろにあるCrossFireX用コネクタは1基

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ほぼRadeon HD 7970×2基のCrossFireX

 Maltaのスペックは、Radeon HD 7970相当のGPUを2基搭載するものとなるため、各所で「×2」という表記になっている。ポイントをピックアップして紹介していくと、まずGPUクロックは定格で1GHzに設定されている。これはRadeon HD 7970 GHz Editionと同様で、Radeon HD 7970当初のスペックよりも高いことになる。

 また、メモリクロックも、ベースで1500MHz(6Gbps相当)に設定されており、Radeon HD 7970 GHz Editionに準拠、当初のRadeon HD 7970よりも高い。他社デザインのNew Zealandと比べると、DEVIL13 HD7990 6GB GDDR5よりもコア・メモリクロックとも高く、一方、ARES2-6GD5よりはコア・メモリクロックとも低い。もっとも、ARES2-6GD5は高クロック動作を可能とするために電力を8ピン×3基で補い、冷却には水冷を採用しているなど、かなりクセのある仕様である点は留意したい。

製品名 Radeon HD 7990 Radeon HD 7970 GHz Edition Radeon HD 7970 Radeon HD 6990
コードネーム Malta Tahiti Tahiti Antilles
ストリームプロセッサ数 2048x2 2048 2048 1536x2
テクスチャユニット 128x2 128 128 96x2
ROPユニット 32x2 32 32 32x2
Z-Stencil 128x2 128 128 128x2
GPUクロック(MHz) 1000 1000 925 830
最大GPUクロック(MHz) - 1050 - -
メモリクロック(GHz) 1500 1500 1375 1250
メモリ接続バス幅(bit) 384x2 384 384 256x2
メモリ帯域幅(GB/sec) 288x2 288 264 160x2
メモリ容量(MB) 3072x2 3072 3072 2048x2
Typical Board Power(W) 375 250 250 375
補助電源レイアウト 8+8 8+6 8+6 8+8
プロセス(nm) 28 28 28 40
Catalyst Control CenterおよびGPU-Z v0.7.0から見たMalta

 補助電源端子は、8ピン×2基に収まっている。計算上、PCI Expressからの75ワットに150ワット×2を加え、375ワットまで供給できる計算だ。Radeon HD 7970は8ピン+6ピンで300ワットであるため、75ワット程度の増加で1つGPUを増やすことに成功したわけだ(実際には余裕を残しているだろうから、75ワットで済むはずがないが……)。

 低消費電力向けの機能としては、GCN(Grahics Core Next)世代のRadeon HD 7000シリーズと同じく、「ZeroCore Power Technology」が採用されている。通常の電力・クロック制御に加え、ディスプレイオフ時(ロング・アイドル状態)には、GPUの電力をカットできるという技術だ。また、CrossFireX構成でのGPU未使用時には、カードの電力オフ、ファンの停止といった制御が行われるとされる(ウエイクアップ用にPCI Express 1レーンのみ供給され、GPU起動はミリ秒単位で行われるという)。

 リファレンスカードのクーラーは、もちろん長さはあるが、2スロットに収まっており、これに3連ファンが搭載されたものになっている。ファンの口径は、カードの高さいっぱいに相当するほど大きい。

Radeon HD 7990(上)とRadeon HD 6990(下)。ともにリファレンスクーラーを搭載しているが、そのデザインは大きく変更された

 内部は、目一杯のヒートシンクにヒートパイプを組み合わせており、外見ほどマイルドなものではない。AMDによると、前世代のデュアルGPUカード、Radeon HD 6990の際、ユーザーからのフィードバックとして動作音がうるさいと多く寄せられていたことから、Radeon HD 7990のクーラーデザインは、白紙の状態から静音を目指してスタートしたという。目標として掲げたのは「GeForce GTX TITAN」だそうで、これを上回る静音性を実現するため、5つのデザインを比較し、音量、そして音質を計測し、最も低い音圧で音質にも不満が少なかったデザインを採用したと語っている。

 AMD自身のデータによれば、Radeon HD 7990の動作音は、37.8デシベルとのこと。これは「静かな図書館」の目安である40デシベルを下回るものだ。バラック状態での計測では、アイドル時は確かに40デシベルを下回り、38.6デシベルを計測した。デュアルGPUカードは、カードベンダーによるオリジナルクーラーの搭載があまり期待できないため、リファレンスクーラーの静音化はメリットが大きいといえるだろう。また、ベンチマーク実行直後でも、従来のデュアルGPUカードのように、ブラケットが触れないほど熱くなるということはなかった。ただし、さすがにそうした高負荷時の動作音では54.3デシベルまで上昇した。

2基のGPUの間のスペースには、PLX Technology製のPCI Expressスイッチングチップが搭載されている

 基板裏は放熱用の金属プレートで覆われており、2基のGPUとCrossFireX用のコネクタ部のみ露出している。2基のGPUは、1番目と3番目のファンの下にある。Radeon HD 6990に近いレイアウトだ。また、CrossFireX用コネクタも、従来までのデュアルGPU Radeon HDカード同様に、1基のみ搭載されており、最大構成は2-way、4GPU構成となる。

 デュアルGPUカードには、2つのGPUとPCI Expressバスを結ぶPCI Expressスイッチチップが搭載される。ここは、Radeon HD 7990も過去の製品同様、PLX Technology製のスイッチングチップを搭載するとされる。PCI Express 3.0に対応した最新世代のチップで、計48レーン(96Gbps)の帯域を持ち、3-wayに16レーン接続できると説明されている。

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