グラフィックスカードは、NVIDIA Quadro K600搭載カードを装着している。Kepler世代のアーキテクチャを採用するエントリーモデルで、グラフィックスメモリは1Gバイトだ。GeForceが主に3Dゲームを想定してドライバの開発や動作検証を行っているのに対し、Quadroはプロフェッショナル用のグラフィックス/開発ツールをターゲットにドライバの最適化と動作検証を行っている。CADやCGの制作用に導入するワークステーションならば、やはりQuadroが心強い。
映像出力はDisplayPortとDVI-Iを搭載しており、DVI−アナログRGB変換アダプタも付属する。マザーボードの背面にも2基のDisplayPortとアナログRGBがあるが、これはCPU統合グラフィックス用のポートであるため利用できない(Core i7/Core i5モデルでは有効)。そのほか2基のPS/2ポート、シリアルポート、USB 3.0、USB 2.0、有線LAN、ライン入力、ライン出力などを備える。
それではベンチマークテストで本機の実力を確かめてみよう。評価機のスペックをおさらいすると、CPUはXeon E3-1240 v3(3.4GHz/最大3.8GHz)、8Gバイトメモリ、1TバイトHDD(7200rpm)、NVIDIA Quadro K600(グラフィックスメモリ1Gバイト)、64ビット版Windows 7 Professional(SP1)という内容だ。
Windows 7のエクスペリエンスインデックスは、ストレージがHDDであるためプライマリハードディスクのサブスコアが5.9と低いが、プロセッサは7.7、メモリが7.8、グラフィックス/ゲーム用グラフィックスも6.8と、HDD以外は高いレベルにある。評価機はWestern Digital製のHDD「WD10EZEX-75Z」を搭載しており、3.5インチの7200rpm製品だけあってシーケンシャルリード/ライトはHDDとしては相当に高いレベルにあるものの、やはりSSDには及ばない。
CINEBENCH R11.5では、CPUで7.92pt、CPU(シングルコア)で1.69ptといずれも高いレベルのスコアをマークした。特にマルチスレッドでレンダリング処理を行うCPUのスコアは、超低電圧版のデュアルコアCPUが主力となっている最新のノートPC/Ultrabookと比べると次元が違うといえる好成績だ。
一方、PCMark 7はストレージ性能が大きく影響することやComputationに含まれる項目がIntel HD Graphicsシリーズのハードウェアエンコーダに対応していることなどが影響し、CINEBENCHのスコアからすると物足りないスコアとなった。もっとも、一般的なHDD搭載ノートPCのスコアは2000〜3000程度であり、それらに比べると高いことは間違いない。
3DMark Vantageや3DMark、ストリートファイターIVベンチマーク、モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】といった3D描画系のテストも実施したが、DirectXベースの描画性能はデスクトップ向けのIntel HD Graphics 4600と同じくらいのレベルといえる。
室温27度/暗騒音32デシベルの環境で本体の手前15センチに騒音計を設置したところ、起動直後こそ40デシベル前後の音がするが、すぐに静かになった。アイドル時や低負荷時は35〜36デシベルと、動作していることが分かる程度だ。ベンチマークテスト中など高い負荷がかかると最大で45デシベル程度まで上がるが、比較的落ち着いた音であるためかそれほど耳障りに感じなかった。
本構成での価格は15万4980円(税込み、以下同)だ。より安く本機を手に入れたいならば、Core i5-4670、Quadro NVS 310(グラフィックスメモリ512Mバイト)搭載グラフィックスカードを装着する13万9980円の構成もある。
Precision T1700 SFFは単に高性能というだけではなく、信頼性と安定性、そして開発/制作ツールとの互換性も重視して設計されたワークステーションであり、ボディサイズや騒音レベルも個人利用に向いた仕上がりとなっている。クリエイター予備軍にとってはもちろん、ビジネスユーザーにも魅力的なモデルだろう。
最近は3Dプリンタも入手しやすい価格で販売されてきていることから、3DCGツールへの関心が高まりつつあり、個人でも使えるワークステーションのニーズがさらに高まる可能性は十分にある。今後の展開にも注目したいモデルだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.