「VAIO Fit 11A」――11.6型“2in1”新モデルを徹底検証 Bay Trail-Mの実力は?最新PC速攻レビュー(1/4 ページ)

» 2014年01月29日 13時00分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]
ココが「○」
・“3 VIEW STYLE”のコンパクトボディ
・高品位な液晶、スピーカー、筆圧ペン対応
・11.6型の新型VAIOでは求めやすい価格
ココが「×」
・約1.28キロと11.6型VAIOでは重め
・VAIOモバイルノートでは駆動時間がやや短い
・Haswell搭載の上位機より性能は控えめ

はじめに:Bay Trail-M搭載でコンパクトな変形型モバイルPC

ソニーの新しい11.6型2in1デバイス「VAIO Fit 11A」。写真は通常のクラムシェルノートPCスタイル(ソニーは「キーボードモード」と呼ぶ)

 2014年春、新たな“2in1”がVAIOのラインアップに加わった。この「VAIO Fit 11A」は、液晶ディスプレイをクルッと回転させて裏返す、ソニー独自の変形機構により、3つのスタイルで使える「VAIO Fit A」シリーズ最小の11.6型モデルだ。

 同シリーズは、これまで15.5型の「VAIO Fit 15A」、14型の「VAIO Fit 14A」、そして13.3型の「VAIO Fit 13A」を展開してきたが、ここに11.6型モデルが追加されたことになる。画面が小さくなったぶん、ボディが小さく、薄く、軽くなり、アーキテクチャも変更することで、購入しやすい価格帯におさめているのが見逃せない。

 製品コンセプトは13.3型以上のモデルと同様だ。一般的なPCユーザーにとっての使いやすさを意識した2in1デバイスで、テーマとして「従来型クラムシェルノートPCの機能と使い勝手を100%確保」しつつ、それに加えて「スタイルチェンジによる新しい体験ができること」を掲げている。そのために「マルチフリップヒンジ」と呼ぶ液晶回転機構を開発し、通常のクラムシェルノートと同じ「キーボードモード」のほか、「ビューモード」に「タブレットモード」と、3つのスタイル(ソニーは“3 VIEW STYLE”と呼ぶ)を簡単に切り替えて使うことが可能だ。

 一方、VAIO Fit 11Aでは、カジュアルさやアフォーダブル(購入しやすい)であることを強く意識しており、基本システムもHaswellこと第4世代Coreではなく、Bay Trail-Mの名で開発が進められてきた新しいモバイル向けのPentium/Celeronを採用している。タブレットでの採用例が多いAtom Z3770(開発コード名:Bay Trail-T)などと同じSilvermontアーキテクチャを採用したエントリーモバイル向けのSoC(System on Chip)だ。

 Bay Trail-Tとの違いは主にインタフェース部分で、メモリサポートがDDR3Lであったり、Serial ATA 3Gbps、PCI Express 2.0をサポートするなど、タブレットに特化したBay Trail-Tに比べて汎用(はんよう)性が高く、省電力よりは性能方向に振った仕様となっている(InstantGoには対応しない)。また、OSは64ビット版Windows 8.1だ(現状でBay Trail-T搭載機のOSは32ビット版に限られる)。

 店頭販売向けの標準仕様モデルはコストパフォーマンスを重視した1モデル「SVF11N19EJS」のみの展開だが、ソニーストアで購入できるVAIOオーナーメード(VOM)モデル「SVF11N1A1J」では、よりハイスペックな構成を含めて、主要パーツやソフトウェアの有無をカスタマイズしてオーダーできる。今回はVOMモデルの最上位スペック構成(試作機)を入手できたので、性能や使い勝手をチェックしていこう。

ボディと製品概要:クールなデザインは健在 画質と音質にもこだわり

本体サイズは約285(幅)×198(奥行き)×16.5〜19(高さ)ミリ、重量は約1.28キロだ。粗めのヘアライン加工で仕上げたアルミニウムの天板とキーボードベゼル/パームレストの2枚の板を強調した独特のデザインを採用する。画面反転の軸となる、天板中央部に走る1本のラインが目を引く(写真=左)。通常のVAIOノートと異なり、液晶ディスプレイのヒンジ付近にダイヤモンドカットで反射光が輝く「VAIO」ロゴが配置されている(写真=右)
ソニーではクラムシェルノートPCと同じスタイルを「キーボードモード」と呼んでおり、そこから天板のラインを軸に、画面をクルッと反転させると「ビューモード」になる。ビューモードは、対面する相手に表示を見せたり、映像コンテンツを視聴したりするのに最適だ
ビューモードの画面を倒して畳めば「タブレットモード」になる(写真=左)。11.6型ワイド液晶は1920×1080ドット表示に対応し、画素密度は約190ppi(pixel per inch:1インチあたりのピクセル数)と、通常利用でドットの粗さが気にならない精細さだ。広視野角のIPSパネルに専用カラーフィルターを導入して色域を広げた「トリルミナスディスプレイ for mobile」、液晶パネルと表面ガラスの間にクリアな樹脂を挟んで空気層をなくし、コントラスト感とタッチ精度を高めた「オプティコントラストパネル」を採用する。一方、大型モデルが搭載する超解像技術を含む映像高画質化エンジン「X-Reality for mobile」は、CPU処理性能の関係から省かれた。画面の上部には、"Exmor R for PC" CMOSセンサー搭載の92万画素カメラ、カメラランプ、モノラルマイク、照度センサーも内蔵する。キーボードモードでは、約135度まで画面のチルト角度が調整可能だ(写真=右)
6列仕様のアイソレーションキーボードは、打ちやすさにこだわり、VAIOの薄型ノートPCにしては深めとなる約1.35ミリのキーストロークを確保した。横キーピッチは約16.95ミリ(縦キーピッチは実測約16.5ミリ)と広くはないが、レイアウトは自然で長文入力も可能だ。剛性が高く、入力時のたわみもない。キーボードの右上には「ASSIST」ボタン(サポートツールの「VAIO Care」を起動)がある。大型モデルはキーボードベゼル/パームレストがアルミニウム製だが、VAIO Fit 11Aは樹脂製だ。それでも塗装は上質で高級感があり、剛性の面でもまったく不安はない。VOMモデルはLEDバックライト付きのキーボードを選択可能(写真=右)。周囲が暗くてもキー入力が行える
左右ボタン一体型のタッチパッドは90(横)×55(縦)ミリと十分な広さがあり、指の滑りは良好だ。シナプティクス製のドライバを導入し、2本指でのスクロールや拡大/縮小機能が標準で有効になっている(画像=左)。もちろん、右端からのスワイプによるチャーム表示など、Windows 8.1のジェスチャー操作も可能だ。音質面では、xLOUD、CLEAR PHASE、S-FORCE Front Surround 3D、VPT、Voice Zoom、Sound Optimizerといったソニーおなじみの音響効果技術を導入。これらの効果をインテリジェントに適用するClearAudio+モードを搭載しており、音楽/映画コンテンツをそれぞれに最適な音質で楽しめる(画像=右)
キーボードモードで液晶ディスプレイを閉じた状態の見た目は、クラムシェルノートPCそのものだ。前面には端子もボタンもなく、電源とバッテリーの状態を示すインジケータのみを備える(写真=左)。背面の左端には、音量調整ボタンも配置している(写真=右)。タブレットモードを意識し、「VOL」のプリントが逆向きとなっているのは、VAIO Fit 13Aと同じだ。音量調整はキーボードの「Fn」キーと「F3」または「F4」キーの同時押しでも行なえる
左側面は手前から、左スピーカー、SDメモリーカードスロット、排気口、ACアダプタ接続用のDC入力がある(写真=左)。右側面は手前から、右スピーカー、ヘッドフォン出力、USB 3.0、USB 3.0(電源オフチャージ対応)、HDMI出力、電源ボタンが並ぶ(写真=右)。通信機能はIEEE802.11b/g/nの無線LANとBluetooth 4.0+HSを備えている
肉厚のソリッドなアルミニウム板で構成された天面のデザインは、大画面モデルと同様だが、サイズがコンパクトで持ち運びやすい(写真=左)。写真のカラーはブラックだが、シルバーとピンクも選べる(店頭モデルはシルバーのみ)。底面もノイズを極力排除し、シンプルに仕上げている(写真=右)。表面はザラっとした手触りで、VAIO Fit 13Aほど上質な触り心地ではない。中央の手前側にNFC、奥側に799万画素カメラを搭載している。カメラは高感度撮影に強い"Exmor RS for PC" CMOSセンサーを採用した
10点マルチタッチのタッチ操作に加えて、専用デジタイザスタイラス(筆圧対応ペン)での描画にも対応。VAIO Duo 13などVAIO共通の筆圧対応ペン(256段階)がオプションで用意されている(写真=左)。液晶のオプティコントラスト技術、そしてペンの先までセンサーを内蔵した独自のペン構造によって、視差を最小限に抑えており、精細な描画が可能だ(写真=右)。フォトレタッチソフトはPhotoshop Elements 12が付属するが、同ソフトをはじめ、プロ向けのPhotoshop CCとIllustrator CCについても、ペン入力の筆圧機能にアップデートで対応する予定だ(アップデートは2014年春を予定)
内蔵バッテリーの駆動時間は約8時間、充電時間は約3時間(いずれも公称値)。付属のACアダプタはVAIO Fit 13と同じだ(写真=左)。実測でのサイズが39(幅)×104(奥行き)×27(高さ)ミリ、電源ケーブル込みの総重量が214グラムと、持ち運びは苦にならない。出力仕様は19.5ボルト/2アンペアだ。USBポートタイプの出力(5ボルト/1.0アンペア)も装備し、スマートフォンなどを同時に充電できる。オプションとして、ACアダプタのUSBに接続して使える小型無線LANルータを用意(写真=右)。スティック型ACアダプタのような細長い形で、合体したまま持ち運べる

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