NAS製品に最も重要なデータ保護機能や障害発生時の通知機能、さらにはドライブの信頼性にまつわる機能は次回詳しく紹介するが、今回はその前に、昨今のNASに搭載されている付加機能について紹介しておく。
どのメーカーのNASにも搭載される機能ではなく、差別化を目的に特定メーカーのある製品にだけ搭載されている、いわばプラスアルファの機能だ。「NASがあればこんなこともできる」という一例としてお読みいただきたい。
まず1つはネットワークカメラと連携しての録画機能。低価格化が進むネットワークカメラは、スタンダードな監視用途のほか、ショールームやセミナーの配信など、さまざまな用途に用いられているが、それ自体に記録領域を持っている製品は少ない。それゆえ、ストリーミングでの配信にとどまっているケースがほとんどだ。
ネットワークカメラ対応のNASであれば、LAN上の複数のネットワークカメラを指定し、録画データの保存が行える。ただし、カメラおよびNASの双方が対応している必要があるため、対応機種は限られており、異なるメーカーの製品同士の相互接続性は高くない。この機能を使うのであれば、まずは対応製品を探すところから入ったほうがよいだろう。また、台数が増えるとライセンスが必要になる場合もあるので、大規模な運用を考えている場合は注意したい。
Webサーバ機能を備えている製品もある。前述の通り、NASはそれ自体が一種のサーバなので、ホームページのデータを置き、外部からのアクセスが可能なようにポートを開ければ、Webサーバとしても機能する。MySQL(オープンソースのデータベースの1つ)などを利用することも可能だ。もっとも、トラフィックが増加するとストレージへの快適なアクセスが妨げられるので、ファイルサーバなどと共用するのであれば、部署内でイントラネットのサーバを立てたり、データベースを動かすといった用途が現実的だろう。
iTunesの音楽データを保存したり、動画を保存してDLNA(Digital Living Network Alliance)対応機器から呼び出すといった、マルチメディア機能を備えた製品もある。これらは家庭用と法人向けの境界線があまり明確でない海外製NASに多くみられ、国内メーカーの法人向けNASに実装されているケースは少ないが、例えばNASにデモ動画を保存してショールームのバックグラウンドに設置しておき、来訪者にタブレット上で再生してもらうといったニーズはあるだろう。
このほか、プリントサーバもNASの機能としては一般的だ。背面のUSBポートにプリンタを接続することで、ネットワーク内の各PCから印刷できる機能である。ネットワーク対応の複合機を導入しているオフィスならあまり意味はないが、USB接続のプリンタを共有して使っているSOHO事業者であれば、プリントサーバを買い足さずにプリンタが共有できる。NASは電源を落とさずに連続稼働させることが多いので、そうした意味でもメリットがある。ただし、Windowsのみ対応というケースがほとんどで、かつ双方向通信に対応しないため、インク残量のチェックなどの機能が使えない点には注意したい。
一部のNAS製品に搭載される、オレガの「VVAULT(ブイボルト)」というストレージ仮想化機能も面白い。これは複数のNASを束ねて1つの領域として利用できる機能で、頻繁にアクセスするデータを最新のNASの領域へ、そうでないデータを古いNASの領域へと自動的に配置してくれる(ティアリング)ので、NASの買い替え後も古いNASを有効活用しつつ、パフォーマンス面では高性能なNASの恩恵を受けられる。容量の関係で新しいNASを追加したい場合は、検討に値するだろう。

Webサーバ機能を備えたQNAPのNAS「TS-469 Pro」(画像=左)。「VVAULT Professional OEM」を搭載したアイ・オー・データ機器のNAS「HDL-Z4WSV」シリーズ(画像=右)次回は、目的に合ったNAS製品を選ぶコツとして、データ保護機能や障害発生時の通知機能、さらにはドライブの信頼性にまつわる機能など、NASの基本機能まわりを詳しく紹介する。
「PC USER Pro」
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