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ワゴンセールはなぜ安いのか? そして買いなのか?牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2014年04月22日 17時45分 公開
[牧ノブユキ,ITmedia]

仕入れ価格は50%よりも上なのに半額セールが起こる謎

 家電量販店をはじめとする販売店では、閉店や売れ残りなどさまざまな事情で、店頭の商品がワゴンセールなどでたたき売られる場合がある。PC関連のアイテムについては、ハードウェアではそう頻繁にあるわけではないが、サプライやアクセサリのように通電しない商品では、標準価格の半額はおろか、100円均一のような特価処分も珍しくない。

 もっとも、半額というのは販売店にとってもかなりの出血大サービスである。もし普段は標準価格の10%引きで販売していたとして、仕入れ値が50%であれば、40%が販売店の利益となる。これを標準価格の50%引で売るとなると、販売店の利益はゼロだ。PCまわりのハードウェアで仕入れ値が50%を切る製品はほぼ皆無なので、半額で売ると確実にマイナスになってしまう。小売に詳しくない消費者の中にはたまに誤解している人がいるが「売価が半額になれば店の利益も半分になる」わけでは決してない。

 では、サプライやアクセサリはどうかというと、中には仕入れ値が50%を下回るような製品も確かにある。それでも、せいぜい50%をわずかに切るかどうかといったレベルであり、通常は55〜65%くらいが相場なので、おいそれと半額で売れるわけではない。しかも上記はあくまで伝票ベースの価格の話なので、20%前後と言われる販管費を上積みして考えた場合、利益はゼロどころか大赤字である。

 にもかかわらず、ワゴンセールでは「半額」とか、あるいは「100円均一」といった、目玉が飛び出るようなプライスをつけて商品をたたき売っている光景はよく目にする。こうした「処分価格」はいかなるスキームによって実現するものなのか。販売店やメーカー、さまざまな事情を見ていこう。

処分価格の裏にメーカーの影あり

 そもそも「処分価格」をつけてたたき売る必要が起こるのは、製品の価値が下がるためだ。PCの周辺機器やアクセサリの価値が下がるケースは大きく分けて2つ。1つはその製品に対応するPCが終息して需要がなくなるケース。もう1つは、その周辺機器やアクセサリに後継製品が登場し、そちらを販売するために先代の製品の在庫を早くなくしたいというケースだ。

 この両者に共通するのは、ユーザーにとっては決して製品の価値は下がったわけではなく、むしろメーカー側の問題であるということだ。PC本体が終息しても、また後継製品にバトンタッチするにせよ、ユーザーにとってその製品の価値そのものは大きく変わるわけではない。すべてのユーザーがすぐさまPC本体を買い替えるわけではないし、また後継製品が登場したからといって従来の製品が使えなくなるわけではない。

 しかしメーカーにとっては、こうした外部要因はまさに死活問題だ。メーカーは販売店に製品を卸しており、販売店の店頭には在庫が山のように積まれている。これら在庫を放置したままの状態で、「新しい製品を仕入れてください」「ハイいいですよ」などという牧歌的なやりとりは起こり得ない。多少のタイムラグはあるにせよ、「まず在庫の金額を圧縮して、そのうえで新しい製品を仕入れましょう」となるのが普通だ。

 ここでメーカーが迫られる選択は2つ。1つは旧製品を引き取ってその代わりに新製品を仕入れてもらうパターン。実際には「新製品と同額分の返品を受ける」という慣習があり、メーカーの営業マンの成績が大きくマイナスにならないよう販売店側がはからずも配慮した格好になっているのだが、メーカーが自ら旧製品を引き受けることで、スムーズに新製品に移行できるというわけだ。このパターンでは、旧製品は店頭で処分などされることなく、いつの間にか新製品に入れ替わっているので、ワゴンセールのような形で旧製品がユーザーの目に触れることはない。

 もう1つは、これが今回の本題なのだが、販売店が処分価格をつけて売りやすいよう、仕入れ済みの製品に対してメーカーが値引きを行うパターンもよく見られる。例えば標準価格の60%で販売店が仕入れた製品があったとして、そこにメーカーが30%ぶんの値引きを行えば、帳簿上の製品の仕入れ値は60−30=30%にまで低下する。ここまで仕入れ値が安くなれば、たとえ半額で売っても、販売店側は20%の利益が得られるというわけだ。販管費を考えると実質的なもうけはないに等しいが、ワゴンセールというのは客寄せにはうってつけであり、また赤字にさえならなければ、売上にもなるので販売店としては悪い話ではない。

 またこの方法は、メーカーにとってもメリットがある。先ほど述べたように、これら旧製品はメーカーにとって価値が低下しているので、たとえ返品を受けたところで廃棄されるケースがほとんどだ。しかも製品を引き上げるためには手間もかかれば送料もかかるので、伝票上の価格以上にロスが大きい。その点、たとえ値引きを入れる必要があったとしても、販売店が売り切ってくれるのであれば、メーカーとしてはそれに越したことはない。場合によっては、いったん値引きを入れてワゴンセールを行ってもらい、どうしても売れ残ってしまった製品だけを引き取る、という合わせ技もありうる。

 ちなみにこうした値引きには、該当の製品に直接値引き伝票を入れるケースもあれば、合計額をまとめて協賛金として支払うケースがある。後者の場合、どの製品に値引きを入れたか分からなくなりがちなので、販売店の中には、いったん処分対策として協賛金を受け取ったことをうやむやにして、しばらくたってから元の仕入れ価格のままで返品を要求してくる店員やバイヤーがいたりもする。ありがちな手口なのでメーカー側はとっくにお見通しで、そうした要求を繰り返す店員は代々ブラックリストに載せて営業所の中で語り継いでいたりするものだが、営業マンや責任者が交代したタイミングでこれをやられると、うっかり引っかかってしまうこともなくはない。

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