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完全ケーブルレスの魅力――iX世代のコンパクトスキャナ「ScanSnap iX100」を試す“どこでもスキャン”を実現(1/2 ページ)

» 2014年06月10日 19時00分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

出るべくして出たバッテリー内蔵モバイルドキュメントスキャナ

 2001年に初代モデル「fi-4110EOX」が発売されてから13年。もはや「ScanSnap」シリーズは、ドキュメントスキャナの代名詞とも言える。2012年にはフラッグシップモデル「iX500」、スタンダードモデル「S1300i」が発売されたものの、コンパクトモデルのラインアップは2010年以降大きな動きがなかった。しかし、4年の歳月を経てついに新型「ScanSnap iX100」(以下、iX100)が登場した。

 すでに成熟期に入っていると言っても過言ではないScanSnapシリーズだが、モバイル利用を前提とする「尖った」コンパクトモデルにはまだまだ革新的なモデルチェンジの余地が残されている。iX100の「バッテリー内蔵」という特徴も、最初に聞いたときはそういった過渡期における挑戦の1つ、という印象だった。

 だが、実際に本機を使ってみてすぐにその印象は間違いだと分かった。iX100は現在のモバイル環境を見据え、S1100の設計を受け継ぎつつ、フラッグシップ機であるiX500の成果を反映させた、堅実な正当進化の逸品だった。

「S1100」譲りの美しいデザインと「iX100」の新機能

ScanSnap iX100の外箱。この時点ですでに小ささが際立っている

 iX100のデザインはiX500に引き続き、ミラノのデザインスタジオ、toshisatojidesignが手がけている。使っていないときには周囲と調和し、使うときには高性能を発揮する、という2つの「顔」を具現化した「W-face」がデザインコンセプトだ。ブラックで統一されていながら、排出ガイドを閉じるとシックなマットブラック、開けると光沢のあるピアノブラックの面が現れる。

 それと同時にS1100のコンパクトさも踏襲。横から見ると背面側に膨らみのあったS1100に対し、iX100は面取りした直方体そのもの。タブレットやスマートフォンで利用する場合には一切のケーブルが不要なiX100の利用スタイルによくマッチする、シンプルを極めたデザインだ。

 電源ボタンはなく、前面部分の給紙ガイドを開くことで電源オンとなる。給紙ガイドには紙を置くときのガイドとなる出っ張りが左右にあるが、その幅は別売のA3キャリアシートに合わせた218ミリとなっており、A4サイズ幅である210ミリより広い。斜行が気になるかもしれないが、原稿が多少傾いて読み込まれても補正されるので問題はない。

 原稿読み取りは片面のみで、1枚ずつ原稿面を表向きにして挿入する。そのため、両面を読み取る場合には原稿を裏返してもう1度セットする必要がある。その際に役立つのが排出ガイドの開閉による2ウェイペーパーパスだ。

 iX100の上面カバーを兼ねる排出ガイドを閉じたままで読み取りを行うと、給紙口から排出口までストレートに原稿が送られる。一般的なオフィス用紙のほか、はがきなどの厚口用紙、プラスチックカードのように折り曲げができない原稿などを読み込む際に利用する。

 一方、上面カバーを開くと本体部の排出口をふさぐように排出ガイドがセットされ、原稿がUターンして戻ってくる。原稿の裏表が逆になるので、それをそのまま再度投入すればよい。裏表だけでなく天地もひっくり返ってしまうが、ScanSnap Managerの向き補正機能を使えば自動的に向きをそろえてくれる。

ほぼ直方体のフォルム(写真=左)。成人男性が片手でしっかり持てるサイズ(写真=右)

上面右側のボタンはScan/Stopボタン。電源ボタンではない(写真=左)。給紙カバーを開けると電源オン(写真=右)

排出ガイドを開けると光沢のあるピアノブラック。外側のマットな表面とは対照的だ(写真=左)。背面部にはWi-FiスイッチとWPSボタン。iX500のときもそうだったが、背面のボタンのデザインにはなぜか“後付け感”がある(写真=右)

microUSBポートは充電にも使用する。ストラップホールがあるのはポータブル型ならでは(写真=左)。内部を開けたところ。iX100は上面部のみの片面読み取り(写真=右)

「iX500」で開発された技術をつぎ込んだ正統進化形

 iX100のサイズは、273(幅)×47.5(奥行き)×36(高さ)ミリ。S1100と比べ高さがわずかに2ミリ増加しただけで、ほぼ同じサイズだ。一方、新たに内蔵されたバッテリーのためか、重量は約350グラムから約400グラムに増えている。iX100の大きな特徴はこのバッテリーと、Wi-Fiに対応している点だ。内蔵バッテリーの容量は720ミリアンペアアワーと、かなり小さいものの、260枚の連続読み取りが行える。モバイルバッテリーを使って連続稼働時間を延ばすこともできるだろう。

 前コンパクトモデルのS1100ではUSBバスパワーで動作し、ノートPCと接続すれば別途電源を確保することなく利用することができた。USBは万能のインタフェースとしてどんなPCにも搭載されている――はずだった。だが、わずか数年で時代は変わり、USBホスト機能を持たないタブレットやスマートフォンが世の中を席巻するようになった。コンパクトモデルの使命として、どこででも利用できるようにするためにWi-Fi機能、そしてホストからの電力供給なしで動作するための内蔵バッテリーを搭載することは必然だったのかもしれない。

S1100とiX100の比較
型番 iX100 S1100
市場価格(税込) 2万2800円 1万7800円
給電方式 バッテリー(USBバスパワーは充電専用) USBバスパワー
接続方式 USB2.0/1.1、IEEE802.11b/g/n USB2.0/1.1
読み取り速度(片面) 5.2秒/枚 7.5秒/枚
外形寸法(幅×奥行き×高さ) 273×47.5×36ミリ 273×47.5×34ミリ
重量 400グラム 350グラム

Android版ScanSnap Connect Application。セットアップウィザードではiX100かその他を選択。発売前のバージョンのため製品版では変更される可能性もあるが、iX100だけでなくiX500も利用可能だった

 iX500同様、GIプロセッサを搭載したiX100は、USB 3.0ポートこそ提供されてはいないものの、Wi-Fi機能においてはiX500から大きな進化を遂げている。無線アクセスポイントが必須だったiX500に対し、iX100は自身が無線アクセスポイントとなってタブレットやスマートフォンをつなぐことができるようになった。出先での利用を考えると無線アクセスポイントがなくても使えることは重要な改善ポイントだ。

 タブレットやスマートフォンから利用する場合には、専用アプリ「ScanSnap Connect Application」(以下、SSCA)を使用する。GIプロセッサに画像処理を行わせることでタブレットやスマートフォンに大きな負荷をかけることなく、原稿の読み込みが可能だ。

 SSCAはAndroid/iOS用のほか、Windows/Mac用も提供されている。以前はWi-Fi接続ではScanSnap Managerが利用できなかったためにPCでSSCAを使うことにもメリットがあったが、ScanSnap ManagerがWi-Fi接続に対応した今となってはその利用価値は薄くなってしまったようだ。

SSCAの設定画面。ファイル形式、画質などの一般的な設定項目が並んでいる。なお、読み取り面の項目があるがiX100の場合は片面のみ(画面=左)。SSCAメイン画面。本体のScan/Stopボタンを押すか、画面右下のScanボタンをタップすれば読み込みが開始する(画面=右)

SSCAでは継続読み取りにも対応。2枚目以降は原稿をセットすれば自動的に読み込みが開始される(画面=左)。原稿の傾きも自動補正してくれるが、原稿の向きの自動補正機能はない。編集機能を使って修正する(画面=右)

PDFファイルで保存した場合は「送信」メニューから別のデバイスへ送信することができる。なぜかJPEGファイルだと「送信」メニューは利用できない(画面=左)。無線アクセスポイントが使用できない場合は、iX100自身を無線アクセスポイントとして接続する(画面=右)

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