未来のMacを先取り!「OS X Yosemite」特大プレビュー林信行が「OS X v10.10」を徹底分析(3/7 ページ)

» 2014年06月17日 21時50分 公開
[林信行,ITmedia]

Yosemiteがめざした世界観

 OSの狙いを解読したところで、続いてYosemiteを詳細に分析してみようと思う。このOSの、Continuity以外の最大の特徴は「見た目」の変更だ。

 新たな時代を切り開く製品にとって「見た目」の変更は重要な要素だ。人にしても同じかもしれない。何かの大きなできごとがきっかけで、本人がまったく新しい気持ちの人間に生まれ変わっても、心の内側だけで、それまでと同じ格好をしていたのでは、周囲の人々になかなか変化に気づいてもらえず、これまでと同様の扱いを受け、結果として新展開を妨げられてしまう。

 アップルは、これまでにも度々、見た目を大きく変更することで、うまく時代の節目をアピールしてきた。1998年の半透明でカラフルなiMacや、2010年のiPhone 4といったハードのデザインの時もあれば、2001年のMac OS X初バージョンのAquaやブラシメタルと呼ばれる見た目の変更を行い「時代が変わったんだ」と告げてきた。

 OS X Yosemiteは、「Mac」というパソコンの新しい門出となるOSであり、その大きく変わった見た目はそれを世界に伝えるためのステートメントだ。もっとも、見た目を変えれば、それだけでなんとなく「新しく見せられる」という側面もある。そのせいで最近では「見た目」を変更することが、ソフトウェア商品を売るための手段の1つとなっている悪い側面もある。

見た目も大きく変更されたYosemite

 OS X Yosemiteの再デザインは、本当に「理にかなった」ものなのだろうか。2つの視点から分析してみたい。

 まず1つは「どれくらい細かいところまでこだわって世界観を作り込んでいるか」で、これによって再デザインの本気度が浮かび上がってくる。

 演出のための見た目変更は、短期間でコストをかけずに、できるだけ見た目を変えようとするので、画面上での面積も大きく目立つ部分だけを変更しようとする傾向が強い。これに対して本気の再デザインでは、細部まで破たんがないように新しい世界観を作り込む。

 例えば、画面上で使う文字の種類(フォント)にしてもそうなら、色調、画面上の要素のコントラストづけもそうだし、動きもそうだ。

 2001年のMac OS X v10.0が登場してから、ブラシュメタル画面など何度かのデザイン変更を加えた後も、そのまま引き継がれてきたウィンドウ左上の赤(閉じる)、黄(ドックにしまう)、緑(リサイズ/最大化)の3つのボタンが13年目にして初めて再デザインされ、Finderウィンドウの上に並ぶ表示スタイル変更や並べ替え、共有などのボタンアイコンも、よく見ると塗りつぶしをなくし、細い線だけで輪郭が描かれた涼しいものに描き直されている(ほとんどの人は、この部分の変更に気づきもしないだろう)。

Retinaディスプレイに最適化された美しいフォントや、ウィンドウ左上の3色のボタンなど、デザインが細かく変わっている

 メニューバーも、Spotlight検索の虫眼鏡アイコンが柄が長く細くなったり、バッテリーが横長になっていることなら気がつく人がいるかもしれないが、線の太さに調整が入っただけの無線LANの受信感度を示すアイコンや、実はかすかにグラデーションが入っているアップルメニューからグラデーションがなくなり、黒の塗りつぶしに変わったことについては、一生気がつかない人がいるかもしれない。

一見しただけでは気付かないような細かい変更も多い

 OSの「機能一覧」や「新しい特徴」としても、まったく紹介されることがなければ、使い勝手にもそれほど大きな変化を生むとは思えない変化――普通の企業なら、関わった人は「そんな細かいところにお金と時間をかけるな」と怒られる社員が出てきそうな変化だ。

 しかし、だからこそアップルは、そんな細かいところまでこだわれる、世界でもなかなか類を見ない企業となっている。そのモノづくりに臨む姿勢は、道を究めた職人が、普通の人が触ってもほとんど気がつかないような数ミクロンの厚みの違いやしなりの違いにこだわって道具をつくる様にも似ている。

 彼らが作る道具に触れた人々は、そのこだわりの細かさにほとんど気がつくことがない。実は人間の脳の補正機能は偉大で、多少歪みがある道具や凸凹がある道具でも、「それは平らだ」と思い込んで使うことができる。しかし、一度、細かなこだわりで本当に上質を極めたものに触れると、その快感が身体に刻まれる。そして、これまでどこかで我慢して使っていた道具に戻った時、「ここはなんでこうじゃないんだ」と新たに不満が見えてしまう。

 実際のところ筆者も、Mavericksのメニューバーにあるアップルマークにまだ残っていたかすかなグラデーションや、色々な機能が満載され、いつのまにかFinderウィンドウの見た目が重く暑苦しくなっていたことに気がついたのも、この記事を書き始めてからだ。

 こう書くと「よいもの」を知ることは、逆に不幸なのではないかと考える人がいるかもしれない。その一方で、そういった我慢をしていた要素を取り除いたほうが、道具そのものの存在感が消え、その上で作られている自分の作品、作業そのものの存在感が増して、集中でき、創造性が高まる、という考え方もある。アップルは後者を信じてこうした細部にまでこだわっているのだと思う。

 もっとも、この考えが正しければ、文字の存在感の「重さ」が目立つ日本語のOS環境において、Yosemiteの最終出荷版で、どれだけフォントにこだわってくれるかは気にしたいポイントだ。

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