未来のMacを先取り!「OS X Yosemite」特大プレビュー林信行が「OS X v10.10」を徹底分析(6/7 ページ)

» 2014年06月17日 21時50分 公開
[林信行,ITmedia]

気が利いた新機能が満載の標準アプリケーション

 ここまでOS X Yosemiteが持つOSとしてのコンセプトやデザインについて話をしてきた。新時代を切り開くOSを深く知るには、目指す方向性や姿勢の理解が大事だと思ったからだ。

 だが、新OSがメリットとなる新機能がなかったらユーザーは新OSに移行してくれない。アップルはその点も考慮して、これまでMacの利用でよく不満として挙げられてきた意見に耳を傾けては、そこを解消し、これまでのMacやiOSの利用スタイルから想像を膨らませて「こんな機能が加わったらもっと楽しく便利になる」という機能を追加してきている。

 特に大きく変わったのはFinder、メッセージ、Mail、Safariの4つだ。

Finder

 Finderでは、新たにiCloud Driveというインターネットストレージが用意される。iCloudの利用者は無料でも5Gバイト、そして最大で1Tバイトもの書類保管用スペースを利用できる。Finderのほかのフォルダと同様に、検索もできるし、タグやラベルをつけることもできる。

 それでいて同じiCloudでログインしているほかのMacから利用したり、Webブラウザを使えばWindows機からも利用できる。また、iOS機器でもiCloudに対応したアプリケーションから開くことが可能だ。

iCloud DriveがFinderウィンドウに組み込まれ、クラウドを意識することなくファイルを共有できる

 そんなことはDropboxやGoogleドライブといった他社製のソフト/サービスでも実現しているじゃないか、と指摘する人がいるかもしれない。その通りだ。

 しかし、iCloud DriveはOSの標準機能である。一緒に仕事をしている相手や、ITに不慣れな家族にDropboxやGoogle Driveの入手やインストールの仕方、最初の同期が終わったかの確認の仕方など一連の説明をするのと、最初に一度、iCloudの設定だけを教えておき、すぐに使い始めるのとではどっちが簡単だろうか。その答えを出すのに、さほどの想像力は必要ないだろう。

 Finderにはこれ以外にも重要な新機能がある。なんとiOS 8機器との間でAirDropを使って写真や書類などの受け渡しが可能になったのだ。むしろ、「これまでなんでそれができなかったのか」と疑問に思う人も多いだろうし、筆者もそのうちの1人ではあるが、とにかくこれまではできなかったし、今度からはできるようになった。これは両デバイスを使う、ある程度、デジタルに精通した人にとってはうれしい機能変更のはずだ。

メッセージ

 一方、大胆に機能が追加されたのが「メッセージ」だ。すでにContinuityの部分で、iPhoneを媒介してSMSのやりとりも可能になったことは紹介したが、それに加えて新たにSoundbite、つまり短い声の録音メッセージも送れるようになった。

 相手がメッセージでしつこく「で、結局、火曜日の予定はこれそうなの?」と聞いてくる。こちらは宅配業者が荷物を引き取りに来るまでに急いで宛名を書かなくてはならず手が離せない。そんなときにメッセージウィンドウの右下にあるマイクボタンをクリックして「8割の可能性で行けると思うけれど、午後の会議次第ではかなり遅刻することになるかも。何時までやっていそう?」と声で録音してメッセージを送る。

 これはiOS 8と共通の新機能なので、iPhoneからメッセージを送っている相手に、声で返事をすることもできるし、文字で返すこともできる。コミュニケーションのスタイルに大きな柔軟性が生まれる機能だ。

 こちらもすでにLINEやFacebookメッセンジャーなど、多くのメッセージ系アプリに標準搭載されている機能だが、LINEのIDを教え合ったり、Facebookの登録の仕方を教えたりするところから始めることを考えると、一度Apple IDの設定さえすれば済む標準機能の手軽さが魅力となるはずだ。

新しくなったメッセージ。テキストメッセージに音声クリップで返信するといったことが手軽にできる

 ちなみにメッセージでは、会話にタイトルをつけて整理したり、会話の途中から参加者を増やすことも可能になる。

Mail

 利便性の面で、大きな進化があるのがMailアプリだ。大幅に強化されたiCloudとの連携で最大5Gバイトまでの添付書類が送れるようになった。

 メールを使っていてわずらわしいのが、添付書類の容量制限だ。例えば、あそこのクライアントのサーバはこの間、たった10Mバイトの書類を添付しただけでエラーが出て返ってきた。あるいは、メールを数通に分けて送るとか、あそこは100Mバイトまで大丈夫だけれど、どうやって圧縮しても115Mバイトになってしまうので、仕方がないからファイル共有サービスに書類をアップロードしてリンクをメールする――こんな面倒なことを1日に何回もやっている人も多いだろう。

 そこでアップルがOS X標準のMail機能に加えてきたのがMailDropと呼ばれる大容量書類添付機能だ。容量が大きな書類を添付すると、自動的に書類をiCloud領域にアップロードして、メールにダウンロード用のリンクを挿入する。

 操作の手順は普通に書類を添付したメールを送るのとまったく変わらず、処理はほぼ全自動で行なわれる。インターネット普及の起爆剤として、電子メールが世の中に普及してから20年近くが経つが、発表されてから振り返ると、どうしてもっと早く実現しなかったのだろうとさえ思える機能だ。

 署名だけして返さなければならない書類が送られてくることや、PDF形式の原稿の校正がメールで送られてくる人も多いだろう。そんなとき、これまではまずプリンターで印刷してからサインして、それを郵送(またはスキャン)するといった馬鹿げた手順を踏んでいた人も多いだろう(実はOS Xの「プレビュー」には印刷しなくても書類にサインを加える機能が元々あるのだが、ほとんど知られていない)。

 これに対して新しいMailでは、送られてきたメールの「返信」ボタンを押せば、メール編集画面上で署名を加えたり(Macのカメラでほかの紙にペンで描いた署名を取り込み合成する)、矢印や囲み、指示や差し替え文章などをPDF書類上に描き込むことができるようになる。これは仕事のスタイルを大きく変えてくれそうだ。

新しいMailアプリでは、iCloud経由で巨大な添付ファイルを送信できるほか、編集画面でメモや署名を書き加えたり、図形を入れたりできるようになる

Safari

 アップルが最も力を込めて宣伝しているのがSafariの変更だ。ツールバーなどをよりシンプルにしたことで、Webコンテンツそのものの表示スペースが大きくなり、お気に入りはアドレスバーに文字を打ち込もうとすると、その下にアイコンで表示される。

 タブ機能はMacで開いているタブに加え、同じiCloudのIDで利用しているiOS機器で開いているタブも一気に参照できるようになり、何かを検索しようとするとWikipedia、Bing、マップ、ニュース、iTunesを検索した候補も自動で表示するようになる。

 最近、Webページを閲覧している間は、それまでの自分のWebブラザを使っての行動履歴が取られてマーケティング活動などに使われていることが多いが、それをよしとしない人は「プライベートブラウズモード」でウィンドウを開きそれを利用する。そのウィンドウから利用している限りは、新しくMacを買って新規設定した直後のように、Safariがあなたのことを一切知らない状態で、履歴や足跡を残さずに怪しげなWebサイトのチェックや秘匿性が重要なオンラインバンキングなどの利用を安心して行なわせてくれる。標準検索エンジンの候補として、ユーザー動向を一切、調査しないことを掲げている「DuckDuckGo」を選ぶことも可能になっている。

アドレスバーに検索ワードを打ち込むとお気に入りが表示される。同一iCloud IDの機器で開いているページもタブで参照できる

 これに加えて、新Safariは改良されたNitro JavaScriptエンジンを搭載し、Webページの表示などもさらに大幅に高速化。米国などでは人気のネットビデオレンタルサービスのNeflixをバッテリー消費などをあまりせず利用する機能なども追加された。

 少し地味と言えば地味かもしれないが、一度でも使うとそれなしには戻れないアプリケーションの改善は、ユーザーを無料の新OSにアップデートさせるのには十分な理由となるはずだ。

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