未来のMacを先取り!「OS X Yosemite」特大プレビュー林信行が「OS X v10.10」を徹底分析(1/7 ページ)

» 2014年06月17日 21時50分 公開
[林信行,ITmedia]
WWDC 2014で発表された次世代OS X「Yosemite」

 WWDC 2014では2つの重要な発表が行なわれた。1つはすでにほかの記事でも紹介している「iOS 8」。もう1つはMacの新OS「OS X Yosemite」だ。

 実はこのOS、バージョン番号はOS X 10.10。ついに「10.」の後が2ケタになった最初のバージョンである。世界は10進法に支配されている。Mac 30年の歴史を振り返ると、バージョンの下1ケタが0や5になるものはメジャーアップデートの中でも特に大きな意味を持つものが多い。このOS X v10.10も、Macの歴史における分岐点のOSとなることだろう。

 いや、それどころかOS X Yosemiteは「これからの時代、パソコンはどうあるべきか」を世に問うOSなのかもしれない。

Lion以降の集大成、そして新しい出発点

 OS X Yosemiteは、Macの新しい時代を切り開くOSだ。このOSが何を目指しているかを理解するうえでは、「OS X Yosemite」という、ただ1つの点を見つめて判断するより、ここ数年の「OS X」を振り返って、それらをつなぎあわせたほうが分かりやすい。

 新たな変化の兆しが生まれたのは2010年だった。パソコンはかつて情報テクノロジーの王者だったが、2007年のiPhone登場で状況が変わり、2010年のiPad登場で、さらに立ち場が弱くなった。

 故スティーブ・ジョブズも、iPad発表直後はパソコンがすぐになくなることはないが製品としては色あせてしまった、といった主旨の発言を繰り返し、ポストPC時代の到来を告げ、もしかしたら、このままMacを含めたパソコンはどんどん存在感がなくなるのかもしれないとさえ思わせた。実際、iPadの発表後は世界的にパソコンの出荷台数が急減する。

 だが、アップルは2010年秋の「Back to the Mac」というイベントを開き、自らこの状況の改革に乗り出した。

 「iPhoneやiPadといったポストPCの製品が勢いを増す時代になった。それにあわせてパソコンの側も、これらの新世代の製品の特徴を取り込むように進化すべきだ」という主旨の発表で、まさにこれを形にしたApp Storeやアプリケーションのフル画面動作モード、通知サービス、「OS X v10.7 Lion」が発表された。

 2011年7月に出た「OS X Lion」では、OSの名前が「Mac OS X」から「OS X」に改まり、自動保存、絵文字、単語の自動修正、iOS風のアプリ起動画面(ラウンチパッド)など、基本的なiOS的要素が追加された。

 続く2012年7月の「OS X Mountain Lion」では、さらにスライドして表示する通知センターが加わり、「ノート」アプリケーション、iChatというアプリに変わる「メッセージ」アプリが追加、ほかにもゲームセンターなど、前バージョンでは間に合っていなかったiOS的基本機能が加わっている。

WWDC 2013で発表された「OS X Mavericks」。カリフォルニアの地名に由来する新しい命名規則も話題になった

 2013年10月、アップルは名付け方も新しい「OS X Mavericks」が登場。このOSのテーマは引き続き「iBook」や「マップ」といったMacに足りていなかった基本アプリの追加も行なわれたが、それに加えてiCloudを通してのiOS機器とMacの本格的な連携を初めて実現した。

 Pages、Numbers、KeynoteといったアプリケーションでiCloud上に保存した書類は、iOS機器の対応アプリでもiCloudから開くことができ、その逆もできるようになった。さらにはiCloud Keychainという画期的な機能で、一度、Macの快適なキーボードで無線LANの長いパスワードなどを入力し登録しておけば、同じiCloudのアカウントが登録されたiOS機器にもその結果が反映され、パスワード入力なしで無線LANが利用可能になった。実はiOSユーザーは、この機能のためだけでもMacを使いたくなるのでは、と思うほど便利な機能だ。

 iPadの台頭でパソコンよりもタブレット製品の人気が出てくると、競合他社の中には「パソコン vs. タブレット」の構図で異なる製品ジャンルを比較し、「パソコンのほうが優れているから弊社のパソコンを」「いや、タブレットのほうが優れているから弊社のタブレットを」といったアピールの仕方が増えた。さらには「パソコンでありながら、タブレットとしても使える」ことを売りにした製品も出てきている。

 しかし、アップルの視点とスタンスは、それらとは一線を画す。きちんといい仕事をして作り込んだものであれば、スマートフォンにはスマートフォンならではの魅力と使い勝手のよさがあり、タブレットにはタブレットだからこその魅力と使い勝手のよさがある。そして、パソコンという製品にもパソコンならではの魅力と使い勝手のよさがある――そこでアップルは、さまざまま機器の間で切り替えを意識することなく同じ作業ができるようにした。こうすることによって、それぞれの機器の違いや魅力が世の中に伝わると考えたのだ。

 これは前バージョンであるOS X Mavericksがリリースされたとき筆者が思いついた言葉なのだが、「気分や状況によって、ギアを切り替える」(ギアには自動車などのギアの意味と、機器という意味でのギアの2つの意味をかけてある)――これこそがいま、アップルが目指している新時代のデジタルライフスタイルだろう。

 そしてその意味において、OS X Yosemiteは、Lionから続く流れの集大成であり、それと同時に、これから先の新しく大きな1歩を踏み出したOSだともいえる。

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