この夏「Surface Pro 3」は最もクールな“ノートパソコン”――MacBook Airの有力なライバルに林信行がMacユーザー視点でSurfaceをチェック(2/3 ページ)

» 2014年07月24日 15時00分 公開
[林信行,ITmedia]

主戦場をタブレットからノートに切り替え

 ここまで取り上げてきた機能だけでも、Surface Pro 3が、いかに細部まで見直してきたかがよく分かると思う。そして今回最大の改良は、なんといっても本体/タッチパネル液晶サイズの変更だ。

液晶ディスプレイが1920×1080ドット表示の10.6型ワイド(16:9)から、2160×1440ピクセル表示の12型ワイドとなり、画素密度が約216ppiに向上した。アスペクト比3:2は紙のノートのサイズに近い

 液晶の裏側に本体基板を内蔵した製品というとアップルのiPadが世界的主流になっている。アップルは製品から余計な要素をすべて取り除き、その製品の本質的な形状(アーキタイプ/原型)に迫るアプローチを取る企業だ。

 1度、アップルにアーキタイプを取られてしまっているだけに、後から出てきた他社のタブレット型製品のほとんどは、iPadに何か余計な要素を加えた“偽物感”が出てしまう、というのがアップルのデザイン戦略のすごいところだ。

 これに対抗するためかは分からないが、Surfaceは、本体だけの状態で見ても明らかにiPadと異なる16:9のワイドな画面を特徴としてきた。これはある意味で非常に強い製品アイデンティティを確立していたが、使いやすかったかというと別問題だった。縦長にして使うにはA4などの書類の上下を余らせてしまうし、横長で使うには横が余ってしまう。

 そこでマイクロソフトは、複数のアプリのウィンドウを横に並べて作業をする、というスタイルを提案していた。実際に筆者も本の監訳で画面左側にWordで開いた原著を表示し、右側にGoogle Docsで開いた作業中の文章を表示、といった形で作業をしてみて、これは確かにある程度は快適だった。しかし、作業を進めるうちに表示できる行数が少ないあたりに少し歯がゆさを覚えるところもあった。

 Surface Pro 3では、潔く16:9の画面を切り捨て、よりさまざまなシーンで利用がしやすい横縦比3:2の12型画面を選んだ(画素密度が向上し、画面が大きくなった分、解像度も増している)。

 無理した差別化を切り捨て、より一般的な製品形状に近づいたため、利便性は向上したが、やはり本体の形状は少し見た目がiPadに似た雰囲気がある。しかも、これまでは長辺に置かれていたWindowsマークが、短辺の方に移動したので、これがiPadのホームボタンのように見えて、最初に見たときはSurface Pro 3は縦長で使うのかという印象を受けた。しかし、よく見るとWindowsボタンのロゴマークは縦長方向ではなく、横長方向を向いている。つまり、タブレットを横長に構えたときに右手の親指で押すのが基本仕様になっている。

 縦横比とWindowsボタンの配置で、Surface Pro 3の本体は、単体で正面から見ると、かなりiPadに似てしまった印象があるが、これがいい効果も出している。12型の液晶はiPad Airの10型と比べても圧倒的に大きく、存在感がある。そう、Surface Pro 3は単体で縦に構えると巨大なiPadに見えるのだ。

 また、Surface Pro 2が907グラムだったのに対し、Surface Pro 3は約800グラムと、画面サイズを大きくしながら薄型軽量化を果たしている。もっとも、前モデルから大幅に軽量化して、10型ながら500グラムを切ってきたiPad Airとはまた別の方向への進化といえるかもしれない。つまり、iPadなどのタブレット製品と直接競合するのは避け、代わりにMacBook Airに代表される超薄型軽量ノートパソコンと競っていく方向だ。

 つまり、「ノートパソコンとしても使えるタブレット」というニュアンスよりも、「タブレットとしても使えるノートパソコン」というニュアンスを強めに打ち出したのだ。これはわずかな違いに見えて、製品イメージにポジティブな変化をもたらしたと思う。

 Surface Pro 3は寝転がりながら電子書籍を読んだり、ゲームをしたりするのには少し重いし、意外とすぐに本体が熱くなりがちだ。しかし、卓上でノートパソコンとして使ったり、キックスタンドでちょっとしたスペースに立てかけて映画を楽しんだり、ニュースを読んだりといった用途には非常に向いている(画面が大きい事も快適さにプラスに働いている)。

 本体がやや熱くなりやすいというのは、少々マイナスのイメージがあるが、実はこれはノートパソコンとして見たSurfaceの強みでもある。キーボードとなるタッチカバーが熱くなる本体と分離されているため、その熱さが手に伝わってくることはない。そう、実はSurfaceは、ただかっこいいという意味でのクールだけでなく、夏場でも手元が涼しい(クールな)ノートパソコンでもあるのだ。

 ほかのWindows PCやAndroid端末をさんざん見てみた身としては、これだけでも高得点をつけたいが、アップル製品のデザインに慣れてきた厳しい目で言わせてもらうと、“Surface Pro 4”以降で検討してほしいデザイン上のリクエストもある。ヘッドフォン端子とMini DisplayPort、USBポートが本体を立てて使ったとき、画面の下半分になるように移動してほしい。目の前にSurface Pro 3を置いてテレビ番組の収録を行なったが、本体の上の方から映像出力のケーブルが伸びている様子はどうにも見栄えがよくない。

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