この夏「Surface Pro 3」は最もクールな“ノートパソコン”――MacBook Airの有力なライバルに林信行がMacユーザー視点でSurfaceをチェック(3/3 ページ)

» 2014年07月24日 15時00分 公開
[林信行,ITmedia]
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ゲーム専用機並みの高精細サッカーゲームが厚さ9.1ミリで動作する

PC版のFIFA 14をプレイしてみた

 Surface Pro 3の魅力は、そのデザインのクールさだけではない。細かなCPUのスペックやグラフィックスのスペックをみても、それが実際の利用でどの程度の変化をもたらすかは、なかなか伝わってこない。筆者はEA SportsのFIFA公認サッカーゲームの大ファンで、ゲーム機でもパソコンでもタブレットでも、このゲームを自分なりのベンチマークにしているところがあり、実際にプレイしてみた。

 結論から言うと、Surface Pro 3は、PC版のFIFA 14が快適に楽しめる(これは個人的には大きなマイルストーンだ)。FIFA 14にはiPadなどのタブレット用に作られたバージョンと、ゲーム機並みの高精細なグラフィックスで動くPC版FIFA 14の2種類がある。タブレット版もそこそこきれいなグラフィックスではあるが、PC版とは比較にならず、もはや別のゲームだ。最近、Windowsストアでタブレット版FIFA 14の販売も始まったが、サッカー好きのSurface Pro 3ユーザーにはそちらではなく、多少高価だがEA Sportsのストアから購入するPC版をおすすめしたい(といっても、9月にはFIFA 15が出るので、それを待ったほうが賢明かも)。

Surface Proでは厳しかったFIFA 14が標準グラフィックス設定で快適に動作する

 このFIFA 14、初代Surface Proでは、正直動作が厳しかった。しかし、Surface Pro 3では、標準のグラフィックス設定でも、かなり快適にプレイが可能だ。ただ、ペナルティキックなどを打つ際に、左右に動く照準が真ん中にあったタイミングでスペースを押す必要があるような、シビアなタイミングが要求される操作では多少のズレが生じやすい(Xbox 360ではうまく真ん中で合わせられる筆者も、性能なのか、キーボードの問題なのか、必ずズレてしまう)。しかし、それ以外のプレイは問題ない。

 一目で誰だか分かる3Dスキャンデータから起こした、かなりリアルな選手の顔や表情と、その選手が実際に来ているユニフォームやスパイク(の裏側)まで正確に再現したFIFA 14。実際のサッカー場を正確に3Dで再現し、フィールドを駆け回る合計11人×2チームの選手と、一緒に走り回る審判やテレビカメラ、さらにサッカー場を埋め尽くす応援団の聴衆まで描き込まれた、およそ2世代前の専用ゲーム機でも表現できなかったような精彩なグラフィックスが、厚さわずか9.1ミリのSurface Pro 3の上で動いているというのは、まさに驚きだ。

 筆者がSurface Pro 3を使い始めて1週間強になる。Macが主環境の筆者だが、Keynoteでプレゼンテーションをする以外の仕事は、WebブラウザのChromeさえインストールすれば、Gmail、Google Drive、Google Docが使えるため、Macとほぼ同じ環境が再現できるし、いざとなれば付属のOfficeも使うことができるので困ることがない。

 メモを取りたいとき、Surfaceペンから簡単に呼び出せるOneNoteで取るか、手書き文字認識機能も優れたこちらも付属のNoteAnytimeで取るかが悩ましいところだが、どちらを使ってもiPad版とiPhone版ある(ただしMac版はない)のでWindows環境の中だけに閉じ込められる心配なく、安心して使うことができる。

 ただ、Macを使い慣れた人間として少しだけ苦情を言うと、まだWindows 8.1やSurface Pro 3の解像度に対応していないアプリケーションも多いようで、例えばウィンドウの右上にある最大化や最小化のボタンが小さ過ぎて押しにくかったり、指でのタッチはおろか、ペンを使ったタッチでも反応する位置がずれてうまく操作できない、ということが多かった。

 アプリケーションごとに、プロパティの互換性タブを設定すればいいのだろうが、それもいちいち面倒くさい。Windowsだと、圧倒的に幅広いハードやアプリケーションへの対応が求められるので、時間がかかることは理解できないではないが、せっかくOSを作るマイクロソフト自身が、こうした魅力的なハードウェアを出してきたので、今後はこのハードを基準として、OSやアプリケーションの使い心地の最適化をしてくれればと期待している。

 マイクロソフトは常に顧客からの厳しい声に真摯(しんし)に向き合う企業だ。それだけについつい互換性に縛られ過ぎて、どんどんと機能を雪だるま式に増やし、自らを縛り付けてしまうことが多い。

 しかし、Surface Pro 3では、そうした呪縛を取り払い、画面サイズからSurfaceペン、さらにはACアダプタのコネクターまで一気に旧モデルの資産を切り捨て、いい方向に転換した。その大胆さと勇気の決断に賛辞を贈りたい。

 この製品の初日の予約件数は、前のSurface Pro 2と比べて25倍と大幅に伸びたという。割り切った仕様に変更したからこその予約増、という側面もあるかもしれないが、今回のSurface Pro 3でユーザーが急増した後では、スペックの変更はより難しくなっていたことだろう。

 これまで必要十分な性能を、薄くて見た目にもクールなボディに収めたノートパソコンというと、筆者の印象ではMacBook Airの独壇場だった。しかし、ここへき有力なライバルが出てきたのは歓迎すべきことだ。これに刺激を受けて、今後の他社のWindowsノートパソコン(あるいはChromebook)やMacBook Airがどのように進化を始めるか、楽しみでならない。

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