キーボードを使う場合、タブレット本体は背面に内蔵されたスタンドを開き、自立させることになる。このスタンドも秀逸な作りで、特許を取得済みという。
従来のVAIO Tap 11やSurfaceシリーズは、背面の中央付近にスタンドのヒンジがあり、スタンドが下から上に開く構造だった。しかしこの試作機は、背面の下部にスタンドのヒンジを設けており、内蔵スタンドを上から下に開く逆向きの構造としている。これにより、スタンドの設置面積を広く取ることができ、平らな机上では安定しやすい。
このスタンドは、画面が垂直に近い状態から、ほぼ寝かせた状態まで、無段階でチルト角度を調整できる。最初にタブレットを立たせるときは、手でスタンドを開く必要があるが、一度開くと、画面の端を持って前後にチルト調整をしても、スタンドがしっかりその角度を保持でき、少し力を加えてペン入力をしたくらいでは倒れない。
VAIO Tap 11やSurfaceシリーズでは、スタンドを手で押さえながら画面の角度調整を行う必要があるが、この試作機ではスタンドを手で押さえなくても角度調整ができる。例えば倒しすぎた画面を戻す際、スタンドまで持ち上がってしまうことはなく、接地したままの状態を保てるのだ。画面を水平近くまで寝かせると、スタンドはパタンと閉じる。
膝の上に載せた状態では安定しにくいため、スタンドを閉じて寝かせたまま使ったほうがよいが、机上での使い勝手はVAIO Tap 11より格段に向上した。
クリエイター向けのタブレットという点で、力を入れているのがペン入力だ。VAIO Duo 11で初めて導入し、モデルチェンジとともに進化させてきた、N-trig製の筆圧検知デジタイザスタイラス(ペン)を採用する。
VAIO Duo 13やVAIO Tap 11のペンと比較した場合、ロゴがSONYからVAIOに代わり、本体カラーに合わせてペンもガンメタリックからブラックになった。
ペンはタブレットの右側面に磁力で吸着するほか、脱落しないよう右側面にペンホルダーを装着することもできる。細かいところでは、タブレット本体の上面に指でのタッチを無効にするボタンが追加された。もともとペン入力時に画面へ触れた手のひらを検出させないパームチェック機能も備えているが、よりペン入力に専念したい場合は手動でタッチを無効化するのもよいだろう。
筆圧レベルは公開されていないが、ペンの基本設計に変更はなく、従来同様の256段階と思われる。仮に256段階だったとしても、筆圧レベルの段階数だけで書き味は決まらず、さまざまな要素が使用感に関わってくるため、スペックだけを見て、他機種の1024段階や2048段階より大きく劣ると判断するのは早計だ。
N-trig製のデジタイザスタイラスは、ペン側に電池(単6形×1本)がいるものの、他社の電磁誘導方式と比べて、低コストで省スペースに実装でき、前述のオプティコントラストパネルと合わせ、書いたペン先と表示される筆跡の隙間(視差)を詰められるほか、画面端でもペン先の検出がズレにくいなどの特徴を持つ。ただし、非常にゆっくり線を書くと筆跡がブレやすいなどの欠点もある。
当初は筆圧対応のアプリが限られたが、アドビシステムズとの協業により、Adobe Creative SuiteやPhotoshop Elements 12でも筆圧を生かしたペン入力がサポートされるようになった。セルシスのイラスト/マンガ作成ツールであるCLIP STUDIO PAINTも筆圧に対応するなど、クリエイター向け製品として活用の幅はかなり広がっている。
最近ではSurface Pro 3にもN-trig製のデジタイザスタイラスが採用されたが、2機種を使い比べてみると、VAIOの試作機のほうが素早い筆さばき、ゆっくりとした描画のどちらも高精度で追従性が高かった。VAIO Duo 11の時代から独自にチューニングし、書き味をハードウェアとソフトウェアの両面で追求してきた経験の差だろう。
しかし、今後の製品化に向けては、より自然で正確なペン入力ができるよう改良を重ねるとのこと。実際VAIOは、すでに著名なクリエイターやイラストレーター、漫画家にこの試作機を試してもらい、フィードバックを反映する試みを始めており、今後もプロが納得する書き味を追求していくという。
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