より薄く、優美に――林信行が「iPad Air 2」の魅力に迫る世界で最も“悩ましいタブレット”に進化(3/5 ページ)

» 2014年10月22日 10時01分 公開
[林信行(写真:篠原孝志、撮影協力:平河町ライブラリー),ITmedia]

Touch IDの搭載で最も安心できるタブレットに

 さて、iPad Air 2でもう1つの特徴が、待望されていた指紋認証技術「Touch ID」の搭載だ。実は同時に発表されたiPad mini 3では、このTouch IDの搭載が前モデル、iPad mini with Retina Displayとの唯一の変更点になっており、この機能のためだけに継続販売される前モデルとの間に1万円ほどの価格差がついている。

ついにiPadにもTouch IDが搭載された。法人利用だけにとどまらず、個人で使う分にも安心感と楽しみが広がる新機能だ

iPad mini 3にいたっては、このTouch ID搭載が、前モデルとの唯一の変更点になるが、今後の広がりも考えると、この機能のためだけに1万円を余計に払う価値は十分にあるのではないかと思う

 果たしてTouch IDに、そこまでの価値があるのだろうか?

 TouchIDで最も有名なのが画面ロックを解除する使い方だ。iPadの情報を勝手にのぞかれないように4ケタの暗証番号(パスコード)やパスワードを設定するのが理想の使い方だが、人前で使う機会の多いiPadは、パスコードの入力中だけ目を背けてもらわないと入力したパスコードやパスワードが丸見えになってしまう。これはどこのスマートフォン、どこのタブレットにもある問題だろう。

 しかし、TouchID付きのiPhone/iPadなら、ホームボタンに指を置くだけで、本人確認が行われロックが解除される。だから、周囲の人にもいちいち目を背けてもらう必要がなく、より心地よく人前でプライバシーが守られたiPadを使うことができる。もちろん、これは企業でiPadを使う場合にも重要なポイントだ。現在、IBMの営業部隊のサポートを受けiPadが急速に企業に広がりつつあるが、その際、TouchIDの有無が大きな違いを生むだろう(※囲み参照)。

 TouchIDはこれに加えて、例えばiTunes StoreやApp Store、iBookstoreでの支払いの承認にも用いられる。「この曲を購入すると250円が課金されます」よろしいですか? と言ったメッセージが表示されるので、まるで承認の印鑑を押すようにホームボタンに指を置くと、それだけで購入が承認され、ダウンロードが始まる。

 さて、多くの人がIT系のレビューをするときに犯す間違いが、現状だけで物事を評価・判断することだ。だが、Touch IDの価値は現状だけでは判断することができない。というのも、この機能はこれから最も成長が著しい分野を見据えたものだからだ。

 先日リリースされたばかりのiOS 8.1アップデートのおかげで、米国ではApple Pay機能が利用可能になった。

 Apple Payというと、iPhone 6やiPhone 6 Plusをおサイフケータイよろしく、お店の機械にタッチして支払う技術だと思っている人が多いかもしれない。それはApple Payの半分の側面でしかなく、実は世の中にたくさんあるオンラインショップ(ECサイト)でも使えるのだ。まるで、音楽やアプリを買うようにして、好きな服や靴を選んだ後、「この購入を承認しますか?」の問い合わせに対して、指で触れて承認する。

 Heartbleed問題からLINEのなりすまし事件など、2014年を振り返ってみて、一体、どれだけパスワード関わる問題があったかを思い出してみてほしい。

 アップルはこのパスワードという古く原始的で問題だらけの仕組みに終止符を打とうとしている(同時に番号をのぞき見られたらおしまいのクレジットカードという古いやりとりの方法にもApple Payで終止符を打とうとしている)。その要となる技術がTouch IDだ。

 Apple Payなんて、アメリカだけの技術だと思っている人もいるかもしれない。しかし実は、Apple Payは交通系ICカードのような大掛かりなインフラシステムではなく、お店が賛同すればすぐに始められる仕組みであり、2020年にオリンピックを控え、海外観光客の増加を狙う日本でも対応を図ろうとしているお店が意外に多い、というウワサを聞くし、オンラインショップにしても、面倒なパスワードの入力の手間を省けて、購買意欲をより購買に結びつけやすくなる、と知ったら導入したがるところが多いはずだ。

米AppleのApple Payのページ(http://www.apple.com/apple-pay/)には、しっかりと新iPadが掲載されている。iPad mini 3やiPad Air 2にはNFCは内蔵されておらず店頭での支払いには使うことができないが、その代わりオンラインショップでTouch IDの指紋認証を使って商品の購入ができるのだ

 だが、こうした動きもまだ氷山の一角にすぎない。実はアップルはiOS 8シリーズから、このTouch ID技術をほかのアプリの開発者も利用できるようにした。すでにEvernoteが、指紋認証しないと表示されないメモ機能などへの応用を始めており、今後あらゆるアプリで、さまざまな形で、指紋認証が使われていくはずだ。それを考えるとTouch IDのための1万円という価格差はわずかなものに思えてくる。

※)特にIBMにコンサルティングを受けるようなこともない企業だと、果たしてiPadがビジネスに本当に役に立つのか、と疑問を感じる人がいるかもしれない。この疑問に対する回答は、実は筆者がこの4年間、年間100回以上の講演で話してきた、まさにその内容となっている。この記事の中ではとても書ききれないが、iPadは農林水産業といった一次産業から、ファッションの世界、教育の世界などさまざまな業種、業界に革命を起こしてきた。

 そのほんの一部はアップルの公式ホームページ内にある「ビジネスにiPadを」でも紹介されている。実は日本こそがiPadをビジネスで利用する事例の宝庫であり、筆者もたくさん21世紀の新しい風景を思わせる事例を持っている。iPadの導入がより大きな革命をもたらしているのは、やたらと注意書きが多くて難しいパソコンなんていう道具がそれまで使われていなかった業界だ。こういった業界ではiPad導入による進化がめざましい。

 一方、すでにパソコンを導入してきたオフィスでの事務仕事などの分野では、せっかく買ってきたiPadにキーボードをつないで、Word、Excel、PowerPoint相当のアプリを入れて、文字入力がしにくいからとキーボードをつないで使ってしまっていることも多い。こういった使い方だとiPadは、ただの「使いにくいパソコン」になってしまう。

 iPadは、これまでのITの使い方をたんに小型・軽量化したものではなく、仕事やプライベートを、これまでになかったまったく新しい発想で変えていくための道具なのだ。


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