大型のiPhoneが登場した今でも、コンテンツを楽しむうえでiPadが最強のデバイスであることは伝わったと思う。
それではコンテンツの作成はどうなのだろう。ワープロでの文章書きや表計算ソフトでの表作成、プレゼンテーションソフトでのスライド作成でも画面が大きいのが快適なのは容易く想像がつく。
ビデオの編集などにおいても、パフォーマンスはもちろん、画面解像度的にもかなり快適だ。試しにアップルが無料で提供しているビデオ編集ソフト、iMovieでiPad Air 2で撮影したHD動画を編集してみたところ、なんと編集中のクリップが表示されるプレビューエリアだけでなんと720pハイビジョン影像よりも画素数が多い1335×755ドットで表示が行われていた。
数年前のパソコンにも勝るとも劣らないハイビジョン編集環境が、スッとカバンの雑誌の間に挟まる小ささ薄さで実現してしまっているというのは、実際に映像を扱う業務に携わっている人から見れば、驚きのため息が出てくることだろう。
さて、クリエイティブな活用というと、実は今、四半世紀近くにわたってアップルとともにデジタルコンテンツの世界を築いてきたアドビが、最近タッチ操作の革命に本気で乗り出している。タッチ操作を使って次世代のクリエイティブツールを創出しようとしているのだ。
その代表的な製品が奇しくもiPad Air 2が発表された10月17日から日本での発売が始まった「Adobe Ink&Slide」という製品である。スタイラスペンと定規のセットなのだが、このスタイラスペンは、指の代わりを果たすスタイラスペンとは違って、きちんとペン先で筆圧を感じ取って、強く画面に押し付けるとペン先が太くなり、筆圧を弱めると線がほっそりする特殊なスタイラスになっている(実はペン先が筆圧を検知して、その情報をBluetoothでリアルタイムでiPadに送信している)。
アドビが作っているスタイラスペンだけに、絵を描いたり、製図をするために開発されたもので、描画をするときに画面に手首や手の平ををついてしまっても、それには反応しない「パームリジェクション」機能も用意されている。しかも、付属の定規を置くと画面にガイドラインが現れて、そのガイドライン通りのまっすぐな線分が描ける(逆に定規を置いている間は線から外れるところは描けない)。
さらに定規の上のボタンを押すと円や三角形、四角やフレンチカーブ、登録された線が素材などをスタンプのようにして描くことが可能なツールになっている(詳しい製品情報は公式ページを参照して欲しい)。
残念ながら筆者には絵心がないが、フリーアナウンサーであり、スポーツインストラクターでもあり、バイオリンも弾き、油絵も描く櫻井さんに絵を描いてもらったところ「紙にスケッチを描くのとは、少しだけ感覚が違うがすぐに慣れる」とすぐに使いこなし始めた。
Adobe Ink&Slideは、これまでのiPad AirやiPad miniにも対応するが、やはり、画面が大きいiPad Airの方が絵を描いたりするのには使いやすそうだったし、これからiPadの購入を検討する人で、こう言った使い方も考えている人は、ついに500グラムを切り(LTEモデルで444グラム、Wi-Fiモデルなら437グラム)、iPad mini 3との重量差も100グラムほどにまで迫ったiPad Air 2がお勧めだろう。
ただ、これからのiPad選びでは、少し悩ましい問題がある。
これまで筆者は、可能ならLTE内蔵モデルを勧めてきた。しかし、iOS 8.1ではiPhoneのバッテリーさえ切れていなければ、Instant Hotspotという機能を使って、簡単にiPhoneをテザリング状態に切り替えてインターネットを利用できる。このInstant Hotspotの機能があまりに簡単で快適なので、以前ほどはLTEを内蔵している必要性は感じなくなってしまった。
とは言え、iPadは心地よさを求めて使うもの。LTE内蔵モデルを買えば、このひと手間さえもなくして、いつでも簡単にインターネットブラウジングができ、しかも、万が一、iPhoneのバッテリーが切れてしまったときでも、iPadで通話以外の機能をほぼ完全に代用できる、というのは大きな魅力だ。
これまで世界で最も魅力的だったタブレットは、今年、さまざまな新機能を搭載して、世界で最も悩ましいタブレットに進化した。
BS12chTwellV「岡崎・鈴木のマーケット・アナライズ」、ラジオNIKKEI「マーケット・トレンド」、ビジネス・ブレークスルー等で経済番組を中心に活動しているフリーアナウンサー。まもなくCSビジネス・ブレークスルーTVにて始まる林信行の新番組「21世紀のカタチ」でも司会を務める。
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