VAIO Z Canvasで大きな魅力の1つが、新採用の12.3型液晶ディスプレイだ。解像度は2560×1704ピクセル、画素密度は約250ppi(pixels per inch:1インチあたりのピクセル数)と、肉眼で画素を判別できない高精細な表示が味わえる。
見慣れない画面サイズと解像度だが、これはクリエイターが紙のノートと同じようにペンで手書きができるよう、アスペクト比が3:2とワイドすぎない液晶パネルを選択したためだ。12.3型の画面サイズは、ペン入力には小さいと思うかもしれないが、アスペクト比が3:2で縦方向のスペースが広く確保できるため、使ってみると意外に余裕がある。
電力効率を高めるため、画面に正対した際に表示が明るく見える「集光バックライト」を採用しているが、少し斜めから見て暗くなるようなことはなく、広視野角なIPSパネルの搭載も相まって見栄えがよい。
そもほかにも、発色の向上と視差の低減を両立するダイレクトボンディング、高硬度の表面ガラス、防汚・指紋防止コーティングを施したグレア表面処理など、画質とペン入力での使い勝手にこだわっている。光の反射を抑え、ペンの摩擦を高める「液晶保護シート」(+税別2480円、出荷時貼り付けサービス費込)も購入時に選択可能だ。
特にクリエイター向けの仕様としては、Adobe RGBカバー率95%以上の広色域を確保しているのが見逃せない。昨今はタブレットやノートPCの液晶ディスプレイも広色域化が進んでいるが、それでもsRGBをカバーする程度のものがほとんどだ。高画質で知られるVAIO Z(VJZ13A1)もsRGBカバー率100%となっている。sRGBを大きく上回り、デジタルフォトや印刷、デザインの現場で使われるAdobe RGB規格に対応できるのは頼もしい。
しかも、VAIO Z Canvasは「VAIOの設定」ユーティリティで色温度を「D65(6500K)」と「D50(5000K)」に設定できるほか、エックスライトの測色器「Color Munki Photo」を使ったカラーキャリブレーションまでサポートしている。かなり厳密なカラーマネジメントが求められる用途でも導入できるよう配慮されているのだ。
それでは実際にVAIO Z Canvasの液晶ディスプレイは正確な発色が得られるのか、実際の表示を測色器で計測してみよう。エックスライトの「i1 Display Pro」を利用し、D65とD50の設定で色温度とガンマ特性を調べてみた。
色温度の計測結果は、D65設定が6917K、D50設定が5228Kと、それぞれ設定値より若干高めだった。測色器側の誤差も考慮すると、デフォルト設定の正確さとしては、及第点ではないだろうか。より高精度を望むならば、キャリブレーションをして色温度を合わせれば問題ない。ちなみに、今回評価した試作機は量産品に近いが、液晶ディスプレイの画質は最終ではないとのことで、実際の製品ではさらに精度が上がる可能性もある。
ガンマ補正カーブと色域については、どちらの設定でも変化がなかったので、「D65」設定の結果のみ掲載する。計測後のガンマ補正カーブは、赤、青、緑のラインがきれいに重なり、かつほぼ45度のきれいな直線となった。つまり、映像信号の入力値と液晶ディスプレイの出力値が一致しており、ほとんど補正の必要がない階調再現性と言える。
i1 Display Proの計測で作成したICCプロファイルから色域を確認したところ、sRGBの色域を大きく上回り、Adobe RGBの色域をほぼカバーしていることが分かった。なお、面積比は102%とAdobe RGBを上回っているが、少しズレているためカバー率で言えば95%だ。これは公称値とぴったり一致する。
実際に見ても緑や赤の発色が豊かで、一目見て広色域で高画質なディスプレイと感じられるはずだ。モバイルPC/タブレットの液晶ディスプレイとしては、現状で最も正確な色再現が広色域で期待できる製品と言えるだろう。
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