このほか、Appleの「新しいMacBook」や「Apple Watch」に「Taptic Engine」の名称で搭載されて脚光を浴びている「Haptic Feedback(触感フィードバック)」に関する技術も興味深い。
一般に、静電容量方式のタッチセンサーや小型のスイッチでは、実際にコンピュータが「ユーザーに触られた」と認識したことをユーザーに正しく伝えるのが難しく、最近のスマートフォンでも「クリック音」や「バイブレーター」の機能を使って擬似的に「触感」を再現している。
これを機械的により自然に行うのがHaptic Feedbackだ。例えば、キートップの刻印のみが施された板で実際にキーボードを打っているような感覚を得られたり、スマートフォンやタブレットでスクラッチゲームのような「(表面を)こする」感覚を楽しむ、といったことが可能になる。
もしHaptic Feedbackが「Surface」シリーズの「Touch Cover」に採用されれば、「実際にタイプした感覚がないので使いにくい」という感想とともに自然消滅していった同製品も、その薄さと軽さから再び注目を集める日がやって来るかもしれない。
MSRAは組織単体の研究開発もさることながら、ここが「ハブ」となって中国IT産業の中核の1つを担っている点に特徴がある。
例えばMSRAのビル1階はショールームとなっており、Microsoftの最新技術を駆使したプレゼンテーションが堪能できる。全面がWindowsの“Live Tile”で占められた部屋や、270度をカバーする円筒形状の部屋に半透明スクリーンが置かれ、立体的に映し出される複数の情報を俯瞰(ふかん)的に眺められるもの、そして2つの離れた会議室をつないでプレゼンテーションを交えた会議が行えるビデオチャットシステムなど、筆者もMSRAでしか見た記憶がない設備が用意されている。
そして同ビルの2階は「Microsoft Ventures」の名が付けられたインキュベーターによる、ベンチャー企業20社が集まるコワーキングスペースとなっている。ここは年1〜2回程度の審査を経て入居したスタートアップらの作業空間となっており、主に起業から1〜2年程度の企業が多いようだ。
Microsoftによれば、出資関連以外の面で特に利用条件はなく、その業種もサービスや携帯アプリ、さらには話題のドローンまでさまざまだ。傾向としては、もともとMSRAの研究員がそのままMicrosoft Venturesで独立したケースや、もともとの研究テーマをそのまま引き継いだ関係で「イメージ解析」や「検索広告」といったものが多かったりなど、MSRAならではの特色が出ている。
また「中国外へのサービス展開」を当初から打ち出している点も大きな特徴で、この辺りは「国内限定」となりやすい中国の他のITスタートアップとは、一線を画していると言えるかもしれない。
人口が14億人を突破していると言われる中国では、国内を主要ターゲットとしただけでも十分にビジネスが成立する。実際、北京周辺だけで数千のIT関連スタートアップが存在すると言われており、そのままフェードアウトしていく企業も少なくないものの、その中には軌道に乗ってAlibabaやBaiduのような企業へと成長していくものもあるだろう。
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