VAIOは8月19日、都内で記者会見を開催。6月8日付で同社の代表取締役社長に就任した大田義実氏が、自身の経歴をはじめ、新組織、新規事業へのチャレンジ、PCの海外展開など今後の事業方針について語った。
大田氏は「私は6月に就任したばかり」と前置きしながらも、2014年7月1日に発足したVAIO新会社のこれまでを振り返りながら、無事に1周年を迎えられたことに感謝の意を表明した。
この1年間はゼロからの創業、会社の基盤づくり、そして商品のラインアップを打ち出すことに費やしてきたという。
2年目に関しては、大田新社長がVAIOの強みとして掲げる「設計・製造技術」「経験豊かな人材」「ブランド」の3つを基盤に「“悪いところは直し、いいところは伸ばす”という基本をシンプルかつスピーディーに実行し、稼ぐ力を作っていきたい」と話しながら「自立と発展」というキーワードを掲げた。
まず「自立」の具体的な話として、組織が従来の商品ユニット制からビジネスユニット制に移行したことが挙げられる。特に営業面では、これまでのソニーマーケティングを通じた販売に加えて、社内に自前の営業部門を設立、さらに営業部には安曇野工場の技術者を営業現場に同行させる技術営業部隊も用意する。
技術者が「自分の作った製品がなぜ売れるのか、売れないのか」といった視点で顧客の声を把握することで、次の製品に生かしていく狙いがあるという。大田氏は「社内の技術者から技術営業部隊に携わる人員を募ったところ、多くの手が挙がった。技術者自身も(現場の声を聞く)そういった意識を持っているということで、非常にうれしく思う」とコメントした。
この「自立」に関して大田氏は「当社1社で、当社の意思で、企画、設計、製造、サービス、そして今までなかった営業販売まで一貫した体制をコントロールできるようになった。十分な収益を継続的に上げていくことを目指す」という。また、社内に営業部門を持つことで「収益責任を持つ組織への移行」ならびに「社員1人1人の意識改革」といった狙いがあるという。
続いて会社の「発展」に関して「商品力の強化」と「販売力の強化」が重要であると大田氏は語る。「競争が激しいゾーンで我々は勝負しない。PCビジネスにおいては、むやみに数量を追わず収益ベースで丁寧に仕事をしていく」「PCをPCらしく使っていただける方の生産性を伸ばしていきたい」(大田氏)
PCだけでなく、EMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器の受諾製造サービス)を中心として、新規事業についても積極的に取り組む構えだ。大田氏は「会社の存続、リスク分散のため、PC以外にも第2、第3の柱が必要。とっぴなことをやるのではなく、当社の強みとインフラを生かした新規事業を伸ばしていく」という。
既にVAIOの安曇野工場では、ソニー時代に犬型ロボット「AIBO」を製造することで培った技術も有することから、DMM.make ROBOTSで販売されている富士ソフトの家庭向けロボット「Palmi(パルミー)」を受託製造している。
大田氏によれば、Palmiの受託生産は非常に好評で、富士ソフトとは“次”の話も進んでいるとのこと。ただし、工場の稼働率は現段階で100%に達しており、新規事業に伴い設備の増設も検討していく。
「長年蓄積された設計、製造技術が外部に評価されており、ロボット、FA(ファクトリーオートメーション)、ゲーム、IoTの分野で多数の受託生産依頼が来ている。今後この中から新規事業への芽を見つけていきたい。目標として、2017年度にはPCと新規事業の収益を1:1にする」(大田氏)とし、従来のVAIOとは異なる計画を明らかにした。
なお、日本通信との協業で発売したAndroidスマートフォン「VAIO Phone」については、質疑応答でその振り返りをするにとどまった。「通信事業に進出するきっかけにはなったが、今後は協業でもVAIOの主体性を強める。自社開発製品も検討に入れている」(大田氏)という。
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